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「茶会の用意、半刻までに済ませておいて。それが終わったら、ちょうど茶葉が届くと思うから。

それと、最近、紅茶の入れ方が悪いって苦情が出てるから丁寧に入れるように。」


「え……でも……」

「ちゃんとやってるし……」


「返事は?」


「「はいっ!」」


慌ただしく動き始める使用人達。指示を出している少女は彼女らよりも幼かった。


「先輩、皆怖がってますよ〜?」


「うるさい。ちゃんと仕事をしないあの人達が悪いもの。」


少女を 先輩 と呼んだ彼女もまた、少女より大きい。


「私の方が年下で癪に触るのでしょう。それでも、半端な真似をされるのはこちらとしても困るから。」


仏頂面のまま少女が話す。



「先輩は優しいですね。」



「優しい?」


歩き始めた少女が動きを止めた。


「はい。だって、あの使用人達のために、注意しているのでしょう?」


彼女の返答に少女が眉をよせる。


「能天気ね。私を怖がったり、仕事の質を落とさないのは良いけれど。」



「何を言ってるんですか?私だって先輩が怖いですよ。」


「えっ?」


今まで仏頂面だった少女の顔が僅かに変化する。少女の驚くような表情に満足そうにした。


「だってー、先輩の方が立場が上じゃないですか。私の首なんて飛ばされかねませんし。」


「……そういう事ね。」


「でも、先輩は仕事さえしていれば怒らないじゃないですか。ほら、こうやってテキトーな言葉遣いでも注意しませんし。」


「お客様の前では直すでしょ。」


「はい。それがわかっているから特に怖くありません。」


微笑む彼女に少女がため息をつく。


「それでも、優しくはないわ。あの人達のことなんてどうでもいいもの。」

――姫様が困らなければ


「そうですね。だけど、私はそう思いたいんです。」


「はっ?」


再び、少女の顔が崩れる。


「怒られるうちが華なんて言いますけど、実際は怒られるのなんて怖いじゃないですか。」


「まぁ、それはそうね。」


「だけど、そう思い込んだ方が人生生きやすいですよ。」



風が吹き、スカートが舞う。暖かな日差しが少女達に降り注いだ。



「人生 なんて、貴方はまだそんな年齢ではないでしょうに。」


「いえいえ、私ももう歳ですので。重労働はさせないでくださいね。」


「言い訳をしない。」


二人は歩き始める。少女は着々と進んでいく茶会の準備に目を細めた。


「あぁ、そうだ。もうひとつの先輩が優しい理由。」


「まだこの話題続けるの?」


仕事しなさい と少女が注意する。



「誰かのため という行為は優しいですよね。」


「……」



――最初からわかっていたのね。


少女の呟きは風の音に流れて消えた。


「フィルーっ!」


「姫様ッ!?」


叫び声と共に遠くからかけてくる少女がもう一人。


美しいドレスをその身に纏う少女は使用人の服を着ている少女に抱きつく。



「ほら。」



クスクスと彼女が笑った。





――こんな日々が続けば良かったのに。


後に彼女はそう思った。

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