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「ぅわぁぁぁぁぁぁっっっ」


泣き叫ぶのは何時ぶりだろう。シェアト スクルプトリース は過去を振り返る。


◆◇◆◇◆




私は昔から一人だった。

お父様は私が生まれる前に死に、お母様は女侯爵として外交の仕事をしていたから一緒にいた記憶はほとんどない。


幼い時はお母様でさえ、“ 母だという人”くらいの認識だった。

使用人たちはよくしてくれて、私が寂しさを感じないようにと常に傍に居てくれたけど、それでも、どこか哀れみの感情が混じっていることには気づいていた。


だからだろう。“ 愛”というものに憧れていた。物語の中のような、窓の外から見る景色のような。


でも、どうすればいいから分からなかった。可愛い服を着れば「可愛いですね」と言われるし、風邪を引いたら「大丈夫ですか?」って心配してくれる。でも、そうじゃなかった。使用人達に何を言われても“ 愛”は分からなかった。


そんなある日、お母様が帰宅した。一年くらい会っていなかったため、最初は誰だか分からなかった。


「ただいま帰りました。元気にしていたかしら?」


そう、顔を覗き込んでくる女の人。使用人に言われて初めてこの人が“ 母”なのだと知った。


“ 母親” 私の中では物語の中の登場人物と同じだった。だから



この人ならば、私が望む“ 愛”をくれるかもしれない


そう思ってしまった。



帰って来てからもお母様は仕事をしていて、私と話すのは食事の時くらい。

だからあの時、お母様の執務室に行ったのだ。庭園で、綺麗な花を摘んでお母様に渡すために。


だけど……結果は想像とは違った。


入ってもお母様は気づかない。先にお母様の使用人の人が気づいて強制的に連れ出されてしまった。


手に握った花が潰れる。


悲しかった。お母様に喜んで貰いたかったのに、お母様は私に気づきさえしなかった。


それでも、何度も執務室に行った。いつか気づいて貰えるのではないか そんな希望を胸にして。


しかし、とうとうお母様が私に気づく日はなかった。いつもお母様に話しかける前に使用人に見つかって連れ出されてしまった。


「侯爵様にご迷惑をかけてはいけませんよ。」


そう、言われ続ける日々。どうして?私はお母様に花を届けたいだけなのに。それが迷惑なの?それなら私は



――いらない子なの?



怖かった。お母様にとって“ いらない子”になるのが。たった一人の家族を失って一人ぼっちになるのが。


だから何とか証明しようとして、めげずに花を摘み続けた。毎日執務室に突撃しては追い返されるけども、いつかはきっと……


そしてそのいつかがやってきた。


お母様が執務室からでるタイミングでちょうど居合わせたのだ。お母様と目が合う。気づいて貰えた!


「お母様っ!私、お母様のためにお花を摘んだんです!このお花、とっても綺麗で……」


「ごめんなさい、後にしてくれないかしら。」



「あ……」


お母様はそう言って足早にどこかへ行ってしまう。


なんで?


手の平の花はまたしても潰れてしまった。



私は……本当に“ いらない子”だったの?


……違う。そうじゃない。だって私はお母様の娘だもの。たった一人の家族なんだもの。

私はお母様に愛されていて……





――愛ってなんだっけ?




その時、私は“ 愛”を知らなかったことに気づいた。


あぁ、そうか。私を見たと思った目は私を捉えてはいなかったんだ。



私はとっくに孤独だったんだ。







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