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とりあえず、記憶を持ったまま転生できたのは嬉しい。私は、前世で何もできなかったから。

姫様は常に国と民のことを考えていた。時々変なことを言ったりはしていたけど、自分よりも他人に尽くす人で、孤児であった私の事も大切にしてくれた。ならばこの恩を返すべきだろう。私は前世で姫様に何も出来なかったから……


姫様が転生して同じ時代にいるかは分からないが、きっと王国の発展と存続を願っているだろう。それならば私は、王女という立場を活かしてそれを確実にしたい。それが私に出来る唯一の……罪滅ぼしだから。



そんなことを考えていたが、まぁなんだかんだで私は……上手くやっていると思う。……たぶん。侍女から王女への転生だが、姫様の一番近くにいただけあってマナーなども困らなかった。

優しいけどどこか抜けているお父様と、身体は弱いが強かなお母様、私より五つ年上でちょうど今年に隣国へ留学した優秀なお兄様。みんなあまり会えないけど、前世の私には居なかった家族がいて、いつも世話をしてくれる優しい侍女や騎士がいて、幸せに生活できている。



ただ一つ、問題があるとするならばこの身体だ。

別に憑依した訳では無いので違和感はあまり無い。五年間、慣れ親しんだ容姿だから。夜空の髪に黄金の瞳。王家の色である夜空を姫様と同じ髪に宿した私の容姿は、可愛らしいと言うよりもミステリアスに感じるらしい。私は気にしていない。断じて気になるのはそこではないけどね。


違和感は身体の見た目ではなく中身だ。幼児と言うのはこんなにも精神が安定しないのか、と思い知らされている。すぐに眠くなるし、飽きるし、散々だ。せめてもう少し自分の身体を制御したい。


だいぶ身体の事がわかるようになってきて、こうして早起きも出来るようになっている。……早起きは仕事中毒だった事が影響しているかもしれないけど。




窓の外を見るとさっきよりだいぶ明るくなっている。でもまだ侍女も迎えに来ないし、もう一回寝ようかな。一度決めると眠くなってくる。おやすみな……

「アルビー様っ!起きてください!」

わっ!何!?

バンッ!という大きな音と共に一人の少女が入ってくる。

「へ……へいっ……陛下がお呼びでふ!」

「わ……分かったから!陛下ね?お父様!」

入ってきたのは私の専属侍女。前世の私の立場と一緒だ。アクアと言い私より二つ年上で、友人のような、姉妹のような、そんな存在である。

仕事はこなしてくれるけど慌てると周りが見えなくなっちゃうんだよね。ちょっと落ち着いて!

「ふぅ……」

アクアは深呼吸をしている。少し落ち着いたみたい。

「陛下より、大事な話があるそうで、至急執務室に来て欲しいと。」

私は王女であり、もちろん陛下とは私の父だ。でも、忙しいためなかなか会えない。向こうから呼び出すなんて滅多にないのに。

「お昼には視察が入っているそうなので早めに来て欲しいと仰っておりました。」

ようやく落ち着いたのか、普段の侍女らしい言葉遣いに戻っている。

……ていうか昼から視察?窓の外を見るとだいぶ明るい。侍女だった頃ならいざ知らず、王女となった今世ではコルセットやらなんやら色々つけて、子供でも化粧をするのが普通だ。王家の侍女たちの手を借りても結構な時間がかかる。

「昼から?急がないとじゃない!今すぐ準備して!」

ぅおっ!びっくりした!後ろからゾロゾロと侍女達が出てくる。

そして、優秀な侍女達によって何とかはしたなく見えない程度に支度ができたが、やっぱり時間がかかっちゃったな。私は早歩きで執務室に向かった。



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