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第二部に入ります。
ボワッ!
「こんな感じですかね?」
手から火を出す少女が一人。
「そうそう、いいですね。火力はもう少し弱めてもいいかもしれません。」
それを見て指示をだす男が一人。
「もうそろそろ休憩しましょう。お茶を用意しました。」
紅茶を持った王女が一人。
……?おかしくない?
「アルビレオ様!火球が出せるようになりましたよ!」
「嫌味ですか!?」
私――アルビレオ アルフェラッツ は 十三歳になった。
今は魔術の授業の時間である。――アクアの。
五年前、私は正式に王女として発表された後、受ける授業が本格的なものになっていった。今までの座学に加え、礼儀作法、刺繍、音楽などの副教科が増え、その中に魔術の授業も加わったのだが、
『アルビレオ、お前は魔術を使ってはいけない。』
というお父様の命令で、魔術の実践はできず、知識だけを学んでいる状況だ。いや、魔力はあるそうなのだが、“ 大人の事情”らしい。まぁ、王女に必要以上の力を付けさせないためだとは思うけど。
教師の魔術師団の団長であるゲナー伯爵は せっかくだから とアクアに実践の授業をしていた。私は観戦。
知識としては前世の記憶があるため、すぐに覚えなければいけない範囲を越えてしまった。やることが無い、となった時、アクアに素質があることが分かり、それならぜひ、才能を開花させて貰いたいと団長にお願いして、私の授業の時間をアクアの練習に当てている。
「魔術を覚えて、アルビレオ様の護衛もできるようになりますね!」
「近衛の仕事を奪わないようにね。」
アクアは思っていた以上に魔術の才能があった。初めてから数ヶ月で中級魔術を使うくらいには。
ゲナー伯爵も頷きながら返す。
「そうですね。この調子なら騎士団にも勝てるのでは?」
「おいおい、誰が誰に勝つって?」
低い声が混ざる。ゲナー伯爵の後ろには大きな影が。
「これはこれは、騎士団長殿。ご機嫌麗しゅう。」
「あぁ?どこが麗しいんだァ?てめぇの目は節穴だな」
「社交辞令ですよ。これだから脳筋は。」
「誰が脳筋だとぉ?」
割り込んできたのは王国騎士団の団長コルニーさんだ。魔術師団と騎士団は仲が悪く、特にこの二人は仲が最悪だ。
「そこまでにして下さい。アルビレオ様が驚いているでしょう。」
ようやく私の存在に気づいたらしい。
「あ……ゴホン。アルビレオ様、ご機嫌麗しく。」
「先程麗しくないと文句を言いやがったのはどこのどいつでしたっけぇ?」
「うるせぇ!」
また喧嘩が始まる。……これ、他の貴族の前でもやってるのかな……
「コルニー団長!……って、アルビレオ様!?」
走って来たのは私の義弟、カイトスだ。男児であるカイトスは騎士団長に剣の稽古をつけて貰っている。
「こんにちは、カイトス。稽古は終わったの?」
「いや、団長が『素振りして待っていろ』と言っていたのに、なかなか帰って来なかったので……」
どうやら、騎士団長はゲナー伯爵に会いに来た(?)らしい。顔を見たら喧嘩するとは本当だったのか。
「お前……とうとう役職を放棄して……」
「ちげーよ!……カイトス殿下、申し訳ありません。稽古の続きをしましょう。」
騎士団長、ゲナー伯爵と話す時との差が激しい……
「アルビー様と同じ、猫かぶりが上手な人ですね。」
「うるさい。ていうか失礼よ。」
サラッと不敬なことを言ってくる侍女は置いておく。
とりあえず今は……
「俺の方が強えーぞ!」
「いや、私の方が優秀です。」
この、底辺レベルの喧嘩をしている団長二人をどうにかしなければ。




