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15

私が選んだのは真っ赤な口紅。赤は女性の魅力を引き出すと共に、高圧的な印象をもたらす。


今、目的のために必要なのは完璧な王女では無い。何をしでかすか分からない“ 悪役”だ。


姫様が言っていた“ 悪役令嬢”とやらを演じてみようと思う。いや、“ 悪役王女”か。

別に嫌がらせとかをする訳では無い。しかし、威圧的な態度をとっていればきっと勝手に噂が回っていくだろう。貴族とはそんなもんだ。


真意の分からない者を人間は恐れる。恐れをなした人間がとるのは離れるか、近づくかだ。国家転覆を目論んでいるような輩や、何かよからぬ事をしようとしている奴は私に対しての何らかのアクションを起こすだろう。


……それに、高位の立場を持つものほど悪意を向けられる。格好の的があれば、お兄様やカイトスにその牙が向かないだろう。


「行きましょう。」


そう言って立ち上がるとアクアがドアを開けてくれる。出てきた私の姿に護衛や侍女達は驚いているようだ。


「あ……アルビレオ……様?」


「何かしら?」


待っていてくれたのだろうか。カイトスも驚いた顔をしている。

うんうん、上出来かな。アクアにそっと目配せをする。彼女はニヤリと笑って親指を立てていた。


彼の入場は私の後だ。今日は私の生誕祭であると同時に彼の養子入りの発表だし、主役の登場は遅れてということだう。まぁ、忘れそうになるけど、まだ私の発表もしてないからそれも含めるんだけどね。

……ていうか盛りすぎじゃない?と思うのは私だけでしょうか。


そんなことを思いながら扉の前に立つ。この大きな扉の向こうは――戦場だ。


「それでは、アルフェラッツ王国第一王女の入場です。」


夜空色の髪が舞い上がり、金色の瞳が開かれる。


真っ赤な唇は妖艶に弧を描き、しかし、キツイ目元はその真意を悟らせない。


「あれが王女……」


「まだ八歳じゃ……」


子供であることも忘れそうになるほど、その姿は印象的だった。



私は王女だ。私は

――この国を守るために存在する。



◆❖◇◇❖◆


「失礼します。……アルビレオ様。」


無事に生誕祭 兼 カイトスの養子入りの発表も終わり、部屋でゆっくりしていた頃、カイトスが部屋に来た。


「いらっしゃい。……どうしたの?」


「えっ?あっ……いや、その……伝えたいことがあって……」


化粧をとったからだろう。カイトスがまた驚いたような顔をしている。演技が上手くできていたようで良かった。


「今日はお疲れ様。立派だったわ。」


私としては義姉と義弟の発表が同時とか少し複雑なんだけどね……。でも、アクアに「アルビー様の印象が強すぎて、カイトス様が地味でした!」と言われてしまった。……ごめん。

それでも彼はしっかりと挨拶できていた。これだけ優秀ならば大丈夫だろう。――色々と。


「ありがとうございます。……アルビレオ様のおかげです。」


「私の?」


何故か感謝された。どういうこと?


「はい。アルビレオ様のおかげで、頑張ろうと思えたんです。……領地管理もいつかこなせるように。」


そういう事か。やる気が出てくれたのなら良かった。……私としては罪悪感が絶えないばかりか、羞恥心で死にそうなものだったのだが。


「あの、公爵家の方から書類が出てきたんです。」


「書類?」


公爵がそんなものをもっていたのか。何の書類だろう?


「僕が成人した時に、領地の管理を一任するというものでした。」


「……っ!」


それは、叔父様が次期公爵家当主をカイトスに決めていたということか。


「それは……良かったわね。叔父様も、あなたのことを認めていたということじゃない。」


そう、喜ばしいことだ。もう、一生聞くことの出来ない父親の“ 本音”。それを、知ることができたのだ。それなのに何故だかカイトスは手放しで喜んでいる様ではない。何か複雑なものを抱えているような……


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