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会ったことがあった人で良かった

「お久しぶりです。ファラッド様」

「お久しぶりにございます、ジルベール様」


 お客さんとしてきたのは、サフィーネ姫様付きの執事をされていたファラッド=モーリス男爵令息だ。

 モーリアント公爵家と血縁関係にもあるらしく、苗字が似ている。

 彼は男爵家の跡取りであり、僕は伯爵家の次男坊でしかも5歳。彼に様付けされる立場ではないのだが、なぜか様付けだ。


「遠いところいらしていただきありがとうございます。ですが現在、父も母も家を空けており、代わりに私がご挨拶をさせていただきます」


 クレンディル先生仕込みの挨拶をしつつ、丁寧に頭を下げる。

 その様子に彼は驚いた顔を見せた。


「……いえ。急な来訪にもかかわらず、ご丁寧にありがとうございます。そうなりますと、お渡ししたお手紙は」

「はい、家長でも家督を継ぐでもない私ではこちらを読むわけには参りません。このままお預かりし、父にお渡しすることも可能ですがいかがいたしますか?」

「そうですね……閣下からは本人にと言われましたので、差支えなければ直接お渡ししたいと思います」

「分かりました。では一度こちらは返却をさせていただきます」

「ありがとうございます。決してジルベール様を信用していないわけではないのですが」

「閣下からのご指示では仕方ないでしょう。私も預かっていてくれと言われても正直困りました」


 僕がそう言うと、彼も苦笑いだ。

 閣下からの手紙を返すと、今度は新しい手紙を出した。


「こちらはジルベール様へ、姫様からの手紙になります」


 なんと、姫様からのお手紙とな! 同年代の女の子からお手紙がもらえるなんて、前世を超えた自信があるぜ。


「ありがとうございます、お預かりいたします……申し訳ございません、姫様からのお手紙に関しても、父達が戻り次第ご返事を用意いたします」

「ええ、それがいいでしょう」


 お互いに頷きあうと、用意された紅茶に口をつける。


「ところで、伯爵夫妻はどちらに? あ、お聞きして拙いようなら」

「いえ、大丈夫です。魔物の巣が発見されたのです。父達は騎士達を率いて、魔物の討伐に出ました」

「それは……心配ですね」

「辺境では珍しいことではないですので、父達は強いですから」


 お父さんは過去に何度も家を留守して討伐を行っているからね。

 今回のようにお母さんも一緒についていくのは珍しいけど、おじさんもいるし伯爵も一緒だ。青い鬣のメンバーもいるから問題はないはずだ……ストーリーが絡んでいる心配はあるけど、現状うちの領地の最大戦力で対応ができなければ正直どうしようもない。


「確かに、『赤剣の死神』の異名を持つアーカム伯爵であれば問題はなさそうですね」

「赤剣の死神? 守護者って聞きましたけど」

「私の好きなアーカム伯爵の逸話ですと、死神と呼ばれてましたね。魔物に対する死神という意味ですけど」

「父の逸話ですか。あまり詳しくはないんですよね。父は自分で吹聴するタイプの人じゃないし母も教えてくれないです」

「はは、確かに自分で語るのは恥ずかしいでしょうし、何より語り疲れているでしょうね。オルト伯爵のような武勇をお持ちの方は、社交界でそういった話ばかり振られますから」

「あー、確かにそうかもしれないですね」


 お父さんは自慢しいじゃないから。


「それにどうしても戦いの話となると血なまぐさい話になります。自分の子供に伝えたくないと思っているのかもしれないです」

「そうかもしれません」


 コンコン。


「若様、お客様、よろしいでしょうか」

「ああ、構わないよ」

「千草、入って」


 ノック音と共に声をかけてきた千草が丁寧になかに入る。


「こちらを」

「うん」


 千草が渡してくれた紙と鍵を受け取る。千草が紙とペンも用意してくれたので、その紙にサインを書く。


「ファラッド様、こちらを」

「ああ、すまないな」


 閣下の使いの立場であるファラッドさんだけど、お父さんがいないお屋敷に勝手に泊めてはいけないのである。

 代わりに町の宿を使ってください、お支払いはしてありますよって書いた紙だ。

 談笑をしつつ軍盤をし、両親が戻ったら連絡をする約束をし、急なお客さんは帰っていった。

 相手が閣下の使者だったし、一度でも顔を合わせた相手だったのでそこまで緊張はしなかったけど、全く知らない高圧的な貴族だったら危なかったかもしれない。

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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