再び来たぞチュートリアルダンジョン
「ロドリゲスは、倉庫か」
僕は探知の魔法を広げて、ロドリゲスの現在位置を確認する。
お昼寝をすると言ったから、しばらく様子を見には来ないはずだ。
「でも時間を考えると、あんまり長くはいられないかな」
部屋から抜け出した僕はリビングによって、ロウソクを一つとる。このロウソクは一度火をつけると1時間くらいで燃え尽きる。シンシアは2時間と言っていたけど、早めに帰ってくるかもしれないから用心だ。
ロドリゲスの現在位置を確認しつつ、素早く授職の祭壇に行き隠し通路に入る。
そして素早く中に入って戸を閉めて、修練場にたどり着いた。
「さっそく火を、着火っと」
ロウソク立てを置く場所がないので、地面にそのまま置く形になる。
さっそくスリムスポアを倒そうと思ったけど、飾ってあったとあるものに気づいた。
「属性結晶が復活してる!」
属性結晶は自分に得意属性を作るアイテムだ。
これは一人でいくつも回収すると、その属性魔法の威力が上がるし消費魔力も軽減される。
迷わず全部を回収だ。
「おお、すごいすごい」
属性結晶を複数取るということは、単純に魔法の使いやすさがあがるのだ。
「よし。今日は魔法を使ってみよう」
再びここに来た時に、ナイフで刺すだけは効率が悪いから魔法を試すつもりだったのだ。
夜の訓練で、どれだけ魔法を使えばどのぐらい疲れるか、頭痛がいつぐらいにくるかも把握している。
「さっそくレバーを降ろしてと」
格子が上がると、やはり現れるスリムスポア。
視界に入るところに無属性魔法の念動でロウソクを動かして、準備だ。
「収納」
しまっておいた魔導書を地面において腰かける。
「コールドボルト」
僕がイメージしながら唱えると、先端の尖った氷の槌が空中に生み出されてスリムスポアを押しつぶす。
「むう、ちょっと大きいな」
ゲームだと威力は半固定だったが、僕のイメージで威力の増減ができるので調整をする。
「コールドボルト」
二匹目をよりスマートな氷の矢のようなもので倒す。
「……アイスアロー」
再び現れたスリムスポアに、今度は手を向けて氷の魔法を放つ。
うん、流石雑魚。すぐ倒せた。
経験値こそ持っていないが、JOBは必ず1くれる素敵な魔物を現れるたびに倒す。
「アローが安定かな」
座ったままの状態で、両手杖を取り出して更に魔力を抑えて魔法を放つ。
「アイスアロー」
魔法を放って、出てくるスリムスポアを倒していく。
「次は、火。ファイアアロー」
熱いのは嫌なので、体から少し離した場所に出現させて撃つ。
赤い炎の矢がスリムスポアを貫いて倒す。火のコントロールも問題ないようだ。
それでも何発か試してみると、少し疲れてきた。
「おっけ、休憩」
お尻の下の魔導書はちゃんと仕事をしてくれているようで、魔力が回復していく実感が湧く。
うねうねとなまめかしく動くスリムスポアを見つめつつ、回復を待つ。
「……遅いや」
JOBが上がれば回復力も上がるのだが、まだ多分JOBレベルは2。
たくさん倒さないとJOBは上がらない。JOBレベルが確か5にならないと回復力向上は覚えないので、今日中の習得は無理だ。
ロウソクの火が半分以下になったところで、ある程度回復を実感したから今度は風を試す。
「エアカッター」
スパンッ! と飛び出した風の刃が、2匹のスリムスポアを一度に倒す。
「うわ、こわっ」
切れ味のいいかまいたちを想像して出した魔法だが、切れ味が良すぎた。
「これは危ないな」
でも今までの魔法も十分危なかったかな?
「それと消費が大きいな」
目に見えない風の魔法は、精製にもコントロールにも集中力と魔力が必要になるらしい。変なところでリアルである。
「一度に倒せるのは楽でいいけど」
でもあまり連発できない。
時間的にも魔力を回復させる時間が厳しい。他の魔法も試したかったけど、今回は消費が少なめなアイスアローで倒して終わりにするべきだ。
「ついでに色々貰いたいしね」
収納を覚えたので、ここにある他の職になる職業の書や装備品をしまうつもりだ。
幸い空間の魔石も入手したので容量も増えたっぽいし。
「こういうのが感覚で分かるのは嬉しいな」
レバーを戻して格子を降ろし、外に残っていたスリムスポアを倒してから他の職のカウンターに向かう。
各種武器に属性矢、癒しの書などを入手したらカウンター内がほぼ空っぽになってしまった。
魔術師の職業の書は復活していなかったが5冊入手。他の職業の書は6冊ずつ入手できた。
次来た時、本以外は復活しているのかな? 楽しみだ。
ロウソクは火を消して放置。ロウソク立てだけ回収だ。
僕は転移陣に乗って外に戻った。
すぐに探知魔法を発動。ロドリゲスは厨房にいるようだ。
「……寝よ」
なんだかんだ言って魔力を消費したし、日中シンシアと遊んだ僕の体は疲れている。
少しだけ頭痛もするし、子供ボディの僕はもう限界だ。
自分の部屋に戻るのも面倒になったので、リビングのソファに転がりこんで瞳を閉じる。
ふあ、おやすみなさい。