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いい子にしてま……信用ない?

 夏も終わりが近づくころ、お兄ちゃんは殿下達と一緒に王都へ戻っていった。

 ダンジョンに一緒に潜っていた千早と千草は、リリーお義姉ちゃんと仲良くなっていたので少し残念そうだった。

 殿下達がこちらに足を運ぶことで、何かしらゲームイベントが起きるかもしれない。そう身構えていた時期もあった僕だが、結果としては単純に遊びにきているだけだった。いや、何かしら仕事もしていたかもしれないけどね?

 お兄ちゃん達とダンジョンに行って魔物を倒して、こちらに戻ってきたらお父さんと訓練をしたり、お茶会や軍盤をしたりしていただけである。

 僕も軍盤は何回かやったけど、ハンデなしだと勝てなかった。

 さすがに軍盤みたいな遊戯は定石をしっかり把握している人の方が強い。僕はまだそこまで覚えきれてないうえに、将棋やチェスの知識が邪魔をして混乱するときがあるのだ。お兄ちゃんにもあんまり勝てない。

 決して悔しいわけではないぞ? ぐぬぬ。

 殿下達におじさんが同行できる時は、僕も何度かダンジョンに連れて行ってもらえた。おかげでそこそこレベルが上がったっぽいし、シーフのJOBも伸ばすことができた。

 体力的にも上がったし、魔力の最大量も増えた気がする。

 採取の途中だったスパークリングメープルの採取もそのあと何度か行ったらしい。特産物にできるかもしれないけど、外に出すには採取できる量が多くないとかなんとか。

 ひとまず領内で楽しむ物にすることにしたらしい。

 とにかく転生してから今までで、一番イベントのあった夏だがまだ気を引き締めておかないといけない。

 例のコボルドの巣の掃討作戦が近いうちに行われるのだ。

 戦闘に向かうお父さんやお母さん、それにビッシュおじさんが少しばかりピリついている。

 なぜか殿下達と一緒に帰らなかったウェッジ伯爵や、僕の専属メイドのシンシアも掃討作戦に参加するらしい。

 みんな二次職や上位職持ちだし、ゲーム内で一番強いコボルド『コボルドジェネラル』が出たとしても勝てるはずだ。でもゲームのコマンドバトルとは違い、実際に対面して戦うとなるとどうなるのだろう。少し心配だ。


「やはり油断はできないっ」


 大規模な魔物の巣の掃討作戦だ。ただごとではないに決まっている。

 こういう大きなイベントがプロローグで、ゲームのストーリーとは始まるものなのだ。

『ユージンの奇跡』の2だか新だか知らないが、この間にも僕はいくつもの魔法を開発し、錬金術の勉強も続けている。

 いきなりどんな状況にも対応できるかと言われると、そんなわけないが。

 それでも僕は、油断せずに日々を過ごしているのである。




「明日、コボルドの巣の掃討を行う。千早と千草はその間はジルの世話と屋敷全体の警護を任せる」

「はい」

「お任せください」


 ついにこの日が来たっ!


「ジルちゃんはいつも通り、しっかりお勉強をするのよ?」

「はぁい」


 返事をすると、お母さんが優しくハグをしてくれる。僕はいつもよりしっかり抱き着くと、お母さんが優しく頭を撫でてくれた。うん、この日が来たと言ったけど、僕が何かやるこということではないのである。


「しばらく留守にするが心配はないだろう。早ければ週末には戻る」

「うん。お父さんも頑張ってね」

「ああ」


 お父さんも僕の頭を撫でてくれた。


「しばらく一人にするが、千早と千草の言うことをよく聞いて、いい子にしているんだぞ?」

「うん」


 僕はいつもいい子だから大丈夫だ。


「勝手に魔法を使ったり、新しい魔法を思いつきで試したりするんじゃないぞ?」

「う、うん」


 やだなぁ、パパさま、ちょっとダンジョンで失敗しただけじゃない?


「どんな魔法を思いついて、どういった的に撃つか、きちんと千早と千草に報告するんだぞ? 二人が使ってはダメだと言ったら絶対に使ってはいけないんだからな? 試すのもダメなんだからな?」

「も、もちろんでさぁ」


 勝手にはしないさぁ!

 だから頭を撫でる力をもう少々弱くしていただけませんかね?


「……頼むぞ、やんちゃ坊主」

「いえっさー」


 なかなか安心してくれないお父さん。ほんとに大丈夫だからね?

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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