抱っこされているジルベール様もかわいい
「戦闘に関しては流石ですね」
遠目でジルベール一行を監視していたシンシアは、頭の上の耳をピクピクさせながら戦闘の様子を窺っていた。
普段はメイド服に身を包んでいた彼女だが、今は紺色のパンツルックの冒険者スタイルである。
「しかしミドラ様が私の気配を感じ取れるのは誤算でした。王都で遊んでいただけではないようですね」
レッドウルフを一撃で倒したことよりも、自分の気配を感じ取る事ができたミドラードに感心をするシンシア。
「残りのメンバーの実力ではジルベール様の警護に不安が残りますが」
王の護衛もこなすウェッジや、王子の護衛であるミドラードが優先するのは王子であるレオンリードだ。
森という視界の狭く障害物の多い場所ではビッシュも十全に実力を発揮できない。
千早と千草の二人は、シンシアから見るとどうしても実力が足りていないので、ジルベールのことが気がかりでならない。
「ジルベール様がどれだけ実力をお隠しになられているか、気になります」
先ほどの戦闘。かなり遠方にいたのにも拘らずシンシアは完璧に把握していた。
レッドウルフが飛び出してきたとき、千早に抱えられたジルベールはまったく動揺していなかったことにも気づいている。
「レッドウルフ程度では驚くこともない、ということでしょうか。自分よりも弱い相手だと本能が働きませんからね」
本人も気づいていないことだが、ジルベールのレベルは30を超えている。レベルアップの際に魔術師であったため体力や力はそこまで極端に高くないが、この世界では中堅と呼ばれる冒険者のレベルに足を踏み入れている。
スリムスポアを常に葬り続けていたジルベールが、王都やその帰りでスポアを大量に倒した際に同種討伐ボーナスが恐ろしい働きをしたからである。
単独であの数を倒しても普通ならレベルは5から6程度だが、ジルベールはチュートリアルダンジョンでスリムスポアを倒し続けたので、経験値の上昇倍率がおかしな働きをしたのである。
「ジルベール様が戦っている姿を目に焼き付けたい……」
シンシアはジルベールが好きだ。単純に大好きだ。
自分の庇護下の中ですくすく成長をする可愛い子供。まるで自分の息子や弟のような、家族の愛情を持っている。
「抱っこされているジルベール様もかわいい」
そういえば抱っこは何度かしたけど、それは屋敷内の短い距離しか自分は抱っこをしていないことに気づく。そう考えるシンシアは、それをしている千早に軽い殺意を覚えるのであった。
短めなので今日は2話投稿~




