ゲーム時のユージンと現実のユージン
たまにはこんな話を入れてみたり
☆☆☆ ゲームの時 ☆☆☆
「とうとう追い詰めたぞ! 堕ちた王子!」
「ふ、追い詰めただと? 何をもって追い詰めたと言うのか」
ユージン達は冒険の末、因縁あるダークエルフの男の居城まで乗り込んでいった。
そこで待ち受けていたのは、ダークエルフの王子と彼を守ろうと立つ首のない騎士。
「さあ、魔王城の結界を解いてもらおうか!」
「ついでに世界樹の秘密もゲロっちまいな」
ユージンと共に王子に杖を向けるのは賢者ガトムズ。
彼の出身の街にはエルフも多くいて、そのエルフ達の悲願を聞いて育った彼としては、世界樹の解放もこの旅の目的の一つである。
「お前達程度の力で、魔王軍四天王たる我を倒せると? 勘違いを誰も正してくれないとは、英雄とは悲しい存在だな」
「私達の実力を侮るとはいい度胸ね」
「この連中の勘違いを毎回正す僕の苦労を知らないのも考え物だな」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ……」
ユージンの幼馴染、高司祭まで上り詰めたミルファの気の強い言葉と、どこか疲れた感じの言葉を放つ騎士のバルムンク。
王都から離れたド田舎出身の2人と、スラム出身というガトムズ。彼らの常識のない活動にストップをかけるのも彼の仕事の一つだ。
「ふん、つまらん問答は必要ない。これを見るがいい」
ダークエルフの王子は自らの上着をはぎ取って、上半身をむき出しにした。
心臓のある位置に、黒いオーブのようなものが埋め込まれていて、怪しく脈動している。
「これこそが魔王城を守る結界の礎の一つよ。これを壊さねば魔王様の下へはたどり着かん。つまりお前達は我を殺さなければならないということだ。貴様たち程度の実力では我に勝つことはできん。つまり貴様たちは一生魔王様の下へは行けないということだ!」
ダークエルフの王子の言葉に首のない騎士の2人が前にでる。
「だが安心するといい。お前達を殺したら、次はお前達を嗾けた人間共の国を滅ぼしてやろう! そして最後は世界樹だ! 我の思い通りにならぬ失敗作のカースド=ユグドラシルも馬鹿なエルフ共々滅ぼしてくれるわ!」
「やれるものなら!」
「やってみろ!」
こうして戦いの火蓋が切られたのだ。
激しい戦いの末、ユージン達は辛くも勝利を収める。
そして倒れ伏したダークエルフの王子に、ユージン達は言葉を投げかけた。
「もうおしまいだな。王子よ、お前の妹より伝言を預かっている」
「……我に、妹、など……肉親などおらぬ」
絞り出すような言葉を、吐血と共に言う王子。
「世界樹は我等を騙したりはしません。何も言葉を発しないアレが何を言って騙すのでしょうか……と」
「くだらんことをっ」
「どのような形であれ、また兄上と、両親と、エルフの民と暮らしたかった。そう伝えるように言われました」
その言葉にダークエルフの王子の黒と赤に濁った瞳に、白い本来の色が戻る。
「だが、我は確かに……聞いたのだ、いや、あれは? 世界樹? まさか魔王様……くっ! 魔王かっ!」
「おい! 魔王と言ったか!」
「……聞け、賢者。今の世界樹は、あらゆる攻撃に対し……反撃を行う。自身の身を守るために、そうせざるを得ないのだ」
「どういうことだ」
「世界樹は地中から魔力を、吸いあげ世界に、拡散する役目を持つ、それをしなければ魔力が循環せず、世界が滅びる、からだ。私は世界樹に縛られる運命を……世界を、滅ぼしたかった……」
「なんの話だ? それより世界樹を……」
「闇に堕ちても、世界樹は、世界樹であるという、だけだ。エルフの代わりに、魔物を、生み出しているに、すぎない。世界樹の本質は、変わらないのだ」
「どうすればいいんだ」
「聖なる、力を用いて、成長させよ」
「成長? 世界樹を育てろというのか?」
「ああ、そうだ。ぐはっ、時間だな……」
ダークエルフの王子は、自らの心臓に埋め込まれたオーブに手をかけた。
「くだらん、術に、何百年も、かかって、いたわけ、だ。だが、これでは……終わらん」
肉を裂き、血を噴き出しながらそのオーブを取り出して王子は大きく血を吐き出した。
「我に、残る、聖なる力よ……このオーブに、世界樹と同じ呪いを……」
「な、なにを……」
「世界樹、には、属性反転の呪いが、かかっている。本来の世界樹は聖、その力を、呼び覚ませ、これを使って、な」
王子が胸から取り出したオーブは、先ほどと違い神々しい光を放つ聖なるオーブへと変わっていた。
「世界樹の、少し、でも、聖なる力を、育てれ、ば、世界樹は、自ら、呪いに……打ち克つ……お前達に、託す」
「おい! 何を言っている! マーニャさんはあんたを待ってるんだぞ!」
「は、今更、戻れるか、よ……」
王子はその言葉を最後に、瞳の色を失い、掲げていた手の力が抜けた。
彼の横にはオーブが転がり、どこか満足した彼の顔をそのオーブの放つ光が照らしていた。
ててーん! 光のオーブを手に入れた!
☆☆☆ 現実のユージン達 ☆☆☆
「とうとう追い詰めたぞ! 堕ちた王子!」
「ふ、追い詰めただと? 何をもって追い詰めたと言うのか」
ユージン達は冒険の末、因縁あるダークエルフの男の居城まで乗り込んでいった。
そこで待ち受けていたのは、ダークエルフの王子と彼を守ろうと立つ首のない騎士。
「さあ、魔王城の結界を解いてもらおうか!」
「ついでに世界樹の秘密もゲロっちまいな」
ユージンと共に王子に杖を向けるのは賢者ガトムズ。
彼の出身の街にはエルフも多くいて、そのエルフ達の悲願を聞いて育った彼としては、世界樹の開放もこの旅の目的の一つである。
「お前達程度の力で、魔王軍四天王たる我を倒せると? 勘違いを誰も正してくれないとは、英雄とは悲しい存在だな」
「私達の実力を侮るとはいい度胸ね」
「この連中の勘違いを毎回正す僕の苦労を知らないのも考え物だな」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ……」
ユージンの幼馴染、高司祭まで上り詰めたミルファの気の強い言葉と、どこか疲れた感じの言葉を放つ騎士のバルムンク。
王都から離れたド田舎出身の2人と、スラム出身というガトムズ。彼らの常識のない活動にストップをかけるのも彼の仕事の一つだ。
「ふん、つまらん問答は必要ない。これを見るがいい」
ダークエルフの王子は自らの上着をはぎ取って、上半身をむき出しにした。
心臓のある位置に、黒いオーブのようなものが埋め込まれていて、怪しく脈動している。
「これこそが魔王城を守る結界の礎の一つよ。これを壊さねば魔王様の下へはたどり着かん。つまりお前達は我を殺さなければならないということだ。貴様たち程度の実力では我に勝つことはできん。つまり貴様たちは一生魔王様の下へは行けないということだ!」
ダークエルフの王子の言葉に首のない騎士の2人が前にでる。
「だが安心するといい。お前達を殺したら、次はお前達を嗾けた人間共の国を滅ぼしてやろう! そして最後は世界樹だ! 我の思い通りにならぬ失敗作のカースド=ユグドラシルも馬鹿なエルフ共々滅ぼしてくれるわ!」
「やれるものなら!」
「やってみろ!」
こうして戦いの火蓋が切られたのだ。
「強敵、だった!」
「くそ、加減できる相手じゃなかったとはいえ……」
「仕方ないでしょう。仲間の命には代えられない」
ユージンの最後の一突は、王子の心臓をオーブごと貫いていた。
即死だった。
「世界樹の秘密は、聞き出せなかったか」
「そうね、でもエルフのみんなが頑張っているもの。きっと大丈夫よ」
「ああ、マーニャ様達を信じるべきだな」
ユージンは王子の体から剣を引き抜いて血を拭った。
「これで結界が解けたのか?」
「あと3人の四天王を倒せば解けるって話だろ。まだだ、まだ」
魔王城を囲うように用意されている四天王の居城。
そこにいるすべての四天王を倒さなければ、結界は解かれないのだ。
「次の戦いに備えて、休むべきね。武器もだいぶ傷んできたし」
「すぐに他の四天王も倒そうと言いたいところだが」
ユージンの言葉に、3人は心から嫌そうな顔をする。
「分かってるよ、一度街に戻ろう」
「それがいいだろう。イノシシみたいに突っ込むだけが戦いじゃない。分かってきたじゃないか」
「バルムンクのおかげでね」
お互いの顔を見合わせて、声を出して笑い合った。
こうしてユージン達は一つの戦いを終わらせた。そして次の戦いの準備をするのであった。




