犬耳メイドといっしょにお風呂
「旦那様方は戻られないので、お食事はお一人になりますがよろしいですか?」
「別に3人一緒でもいいよ? 片付けるの大変でしょ」
「ありがとうございます。次の機会がございましたらそうしますね」
どうやら食事は一人で食べるらしい。
ロドリゲスが準備した食事は、普段と変わらないボリューム。ふわふわの白パンにスープとお肉。それとサラダに果物だ。
お父さん達がいなくても手を抜くつもりはないらしい。
「しかし、ジルベール様は好き嫌いがないのですね」
「うんと、野菜で嫌いなのがあるけど、食べれない事はないよ。せっかくロドリゲスが作ってくれたんだし」
とは言っても量はそれなりに多いからいつも残してしまう。なるべく一通り口をつけるようにしているんだけど、そもそも僕の子供ボディはそんなに食べ物を受け付けない。
給仕のために控えているシンシアは、僕の手が止まったタイミングで僕の好みを聞いてきた。
「好きなのはハンバーグとパスタかな。野菜は、実はトマトが得意じゃないんだよね」
「普段から食べられていますよね?」
「味が嫌いなんじゃないんだけど、口の中でぐちゅってなるのが嫌い」
ゲームの世界。そう認識しているこの世界だけど、食べ物は地球の物と基本的に同じだ。お米だってある。
あまり香辛料が使われていないので、味は塩味が基本。でもスープは出汁をとってるし、おかずなんかには下味がしっかりついているのでぶっちゃけ元の世界とそこまで大きな差は感じない。
新鮮な食材を多く使っているところと、ロドリゲスの腕がいいからこっちのほうが美味しいものが多いくらいだ。
食べ物チートはできないらしい。まあ料理なんて簡単な物しかできないけど。
「そうだったんですか」
「お母さんやマオリーは気づいてると思うよ。僕がトマトを食べようとするとこっち見るもん」
「それは、気づかれていますね。間違いなく」
「うん。あと定番だけどピーマンも苦手」
「苦いですものね。私達犬の獣人もピーマンは得意じゃないです」
そうなんだ?
「でもそれって種族的な好みでしょ? 僕の場合はそうじゃないから、なるべく食べるようにしてるんだ」
「……次からロドリゲスに、もう少し細く切らせるなりいたしましょう」
「それは助かる。すごく助かる」
子供の舌だから、やっぱりピーマンは苦手。
「お野菜でお好きなものはありますか?」
「今日だとキュウリとブロッコリー、スープに入ってる葉物野菜も好きかな。名前わかんないけど」
「ロドリゲスに伝えておきますね。ジルベール様はまんべんなく食べるからお好みが読めないと言っていましたから」
「どうせならロドリゲスの料理は好きって言っておいて。だからこいつも……できれば料理してって」
そう言いながらスライストマトにフォークを刺して、一口、二口と食べる。口元で一瞬止まるのは許して欲しい。
子供ボディの僕は丸のみが得意ではないので、もぐもぐと噛んで飲み込んだ。
「ごちそうさまでした」
「はい、少し休んだらお風呂に入りましょう」
「はぁい」
「一人で脱げるよ?」
「存じております」
お母さんやお父さん、あとマオリーと入る事もあるが、僕は一人でお風呂に入れる子供だ。
知っていますと言いながら、脱衣所まで付いてきて僕の服を脱がせるシンシア。綺麗に素っ裸にさせられると、シンシアもエプロンやらを外しだす。
「……一人で入れるよ?」
「ええ。そうですね」
シンシアがそう言いながら、メイド服を脱いで下着姿になる。
尻尾穴のあるスカートを脱ぐときって、お尻を突き出して脱ぐんだね。
そんな事を感心しつつも、僕の目の前でフリフリ振られる犬の尻尾と可愛いお尻。シンシア結構着やせするタイプらしい。マオリーのような巨乳キャラではないが、くびれがしっかりしていてとても魅力的な体付きをしている。
僕の視線を気づいてか気づかずか、シンシアは僕の服を綺麗に畳んで自分の服も畳み、下着をするりと外す。
「さ、入りましょう」
「一緒に入るんだね」
「今日はそうしてください」
シンシアがバスタオルで体を隠しつつ、僕の手を握って浴場に移動。
貴族の屋敷のお風呂ではあるが、別に大きい銭湯のようになっている訳じゃない。日本の一般家庭と比べると、もちろん広いし大きいけど、あくまでも一般的なレベルの範疇だ。
「お流ししますね」
「お願いします」
子供ボディの僕がシンシアに欲情できるわけでもない。でもいつまでも眺めていると変態キッズの称号をもらってしまうので、大人しく流されて洗われる事にする。
「かゆいところはございませんか?」
「だいじょうぶー」
頭のてっぺんから足の先までなされるがままに、バスタオル一枚の女性に洗われる僕だが、今回が初めてという訳ではもちろんないのだ。
お母さんにもマオリーにも洗われた事がある。もう慣れっこといえば慣れっこだ。
そのままシンシアはバスタオルを取り、自身も洗う。
「尻尾、洗う?」
「ジルベール様、女性にそんな事を言ってはいけませんよ?」
「??」
獣人特有のルールがあるのだろうか?
僕が首を捻っていると、シンシアが苦笑いしながら自分の尻尾をブラシで丁寧に洗っていく。
シンシアは僕を抱き上げたまま浴槽に足をかけて、そのまま僕を抱えて入浴。
安定感がすごい。
「はー」
「良い湯ですね」
「うん」
シンシアのお腹の上にお尻をのせつつ、足を伸ばして後ろに体を預ける。
胸が後ろでムニュムニュしているのが分かったり分からなかったり。こいつはなかなかのものをお持ちの様子。
「やっぱりちょっと恥ずかしい」
「そうですか?」
「うん。シンシアは可愛いから」
「ありがとうございます。でもマオリーとも入りますよね」
「マオリーも綺麗だから恥ずかしい」
ちょっとお腹をつねらないで欲しい。
「……シンシアも、綺麗だから恥ずかしい」
「よくできました」
この後、数を30まで数えてお風呂を出た。