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ただいまチュートリアルダンジョン

「はふー」


 ようやく屋敷に帰り、一晩たった。

 一息ついたよ。やはり自分の部屋が一番だ。

 トッドの用意してくれたスポアは王都の時より3倍以上数がいた。水の魔法で倒すのは時間がかかったよ……。

 準備の期間が長かったのと、こっちの方が辺境だからスポアが多かったからだと思うけど、随分と体力と魔力の最大値が増えた気がする。

 結構レベル上がったんだろうね。ステータスが見たいな!


「見れないんだけど」


 それと悲しいお知らせがある。

 なんと僕、まだお屋敷から出ちゃいけないらしいです。

 お父さんとお母さんに言われました。

 悲しい。


「まあ言わんとすることは分かるけどさー」


 シンシアがコボルドの対策にかかりきりになるから、僕の護衛がいないのだ。

 お父さんは留守していた間にたまった仕事にしばらくかかりきりになるとのこと、コボルドの対策もしっかりと練らないといけないらしい。

 お母さんはお父さんの補佐的な立ち位置なので、お母さんも自動的に忙しくなる。

 マオリーがしばらく僕についてくれるとのことだけど、彼女はJOBを持っていないから護衛にはならない。

 それならお母さんのフォローをしてあげてとお願いした。

 僕の言葉にお母さんが感動で泣き崩れたけど、気にしないでいこう。

 レドリック達は元々お父さんの補佐の仕事だから現状維持だけど、僕達がいない間結構苦労をしていたそうなので、適度に休みを入れてあげるとのことになった。

 クレンディル先生は王都で別れたきりで、一緒には帰ってきていない。

 あとで戻ってくるそうだけど、それまでは僕の勉強も一旦ストップだ。宿題はあるけど。


「出かけられぬ」


 せっかくお披露目が終わっても、お出かけできない身分は変わらないらしい。

 ビッシュおじさんが来たら余裕ができるそうだから、それまでは我慢をしないといけないそうだ。

 いい子で我慢するとは言ったけど、おじさん来たらコボルド駆除を本格的に始めるんだよね? もっと動けなくなるんじゃないのかなーとか思うのは僕だけだろうか。


「ぬーん」


 暇だ。屋敷の中は自由に動けるけど、あまり動き回る気にもならない。

 なんだかんだで久しぶりに帰ってきた自分の部屋を満喫しているのだ。

 あれ? でかけなくていいんじゃない?


「部屋から出てもいいけど、お屋敷から出るのはダメだしなぁ」


 屋敷からマジで出なかったし、僕が動き回る時間は屋敷の門が閉まっていたから知らなかったけど、屋敷の門の外や周りには警備の兵士が立っているので、屋敷から出るのはなしだ。

 たまにマオリーやファラがお世話をしにくるから、どこかしらにいないと問題が起きてしまう。

 勝手に僕が姿を消して、それが元で大騒ぎになってはいけない。


「夜まで待つか」


 夜にならないとチュートリアルダンジョンに行くのは危険っぽいし。今日は大人しくゴロゴロしてよう。レッツお昼寝。

 おやすみなさい。






「よし、とーちゃくっ!」


 夜になると、屋敷から人の気配がほとんど消えた。

 探知を使って調べたけど、屋敷の周りを警護する兵士達とロドリゲスがいるだけだ。

 お父さん達はご飯の時間には戻って、そのあとリビングで少しお話をしたけど、僕が部屋に戻ったらまた出かけたらしい。

 たぶんお役所だろう。

 そんなこんなでチュートリアルダンジョンに到着した僕を、元気にウネウネするスリムスポアがお出迎えしてくれた。

 まあこっちに歩み寄ってくるわけじゃないけど。


「流石に炎の絨毯は消えてるか」


 メダルもないや。


「うお、今回はすごいな」


 JOB経験値が体に流れ込んでくる。

 王都までの往復時間を考えると、約1カ月ぶりだ。こういうのっていつまでも消えないんだね。


「とりあえず敷き直そうかな」


 炎の絨毯。レベルアップをかなりしたはずだから慎重にやる。

 イメージをしっかり持って、持続時間をできるだけ延ばせるように自分の持っている魔力の半分くらいをまとめてつぎ込む。


「炎の絨毯」


 スリムスポアが歩いて止まる出現ポイントに再び炎の絨毯を設置。

 これでまた自動でスリムスポアを倒してくれるようになるのである。


「属性結晶、どうしようかなぁ」


 自分の力の危険性を確認した僕だ。こいつを吸収すれば更に魔法に磨きがかかる。それは分かっているだけに悩ましい。

 屋敷の外に初めて出て、ビッシュおじさんや他の人達から話を色々聞いたからこそ、自分の力が異常なのは理解できている。

 そもそもユージンの仲間のガトムズでさえ、火と空間の才能レベルが高かったが、それでも恐らく属性結晶で言えば1,2個程度だ。

 僕は全種類30個ずつくらい入れてる。

 そりゃあ途方もない魔法の才能になっているのだ。

 指パッチンで衝撃波も生み出せるレベルなのだ。指パッチンできないけど。


「悩ましい」


 いままで吸収できなかった分の属性結晶もすべて収納空間に残っている。

 今日ここに顔を出したことでJOBが上がっている気がするから、吸収はできるだろう。


「慎重に使えばイメージ通り完璧に使えるんだよね……魔力の消費もほとんどないし」


 属性結晶の恩恵は、その属性に適した魔法の威力やコントロール力の上昇と、魔力消費量の減少が主な恩恵だ。

 ゲームだとそれに加えてレベルの上昇に応じて魔法を覚えるんだけど、僕にはそれがない。

 すでに使える魔法だからか、それ以外が原因かは分からないけど、利点は先ほどの3つだ。

 魔法のカードのようなものさえ使わなければ、イメージ通りに魔法は撃てる。

 イメージの簡略化や、明確なイメージの固定化、そういったものがしっかりできれば、魔法を暴発させるようなことはない、と思っている。


「吸収しとくか……」


 属性結晶を吸収すれば、その属性の魔法は単純に上手くなる。そう考えれば吸収しない理由はない。

 ゲームのようにうまく扱えないのは、ガトムズやユージン達がすごかったのと、僕の魔法に対するイメージの違いだろう。

 なんでもできそうな分、明確にイメージができるようにしないとうまく扱えない。そういうものなのだと思っている。


「いつゲームの世界が始まるか分からないんだ。僕がしり込みしていい理由なんてないはずだ」


 温かく両親や家族達に見守られての冒険スタートなんてRPGはほとんどない。

 冒険のスタートは突発的なものが多い。

 そういった状況に対応できる力は、多いに越したことはない。子供ボディの僕は力が弱いのだ。魔法だけでもできるだけ強化しておかないと、どうしても不安になる。


「僕は油断なんてできないんだから」


 僕は両親が、お兄ちゃんが、使用人たちが大好きだ。彼らは僕のことを好きでいてくれているから。愛してくれているのが良く分かるから。

 ゲーム開始の時に、僕を愛してくれる彼らを守れる力があるのであれば、守りたい。

 僕は今日回収した属性結晶を含めて、手持ちの属性結晶を吸収できるだけ吸収した。


「よし。戻ろう」


 ロドリゲスしかいないけど、あまり屋敷を空けていると誰かに気づかれるかもしれない。

 僕は魔法陣で屋敷の裏に戻り、即座にゲートを開いて部屋に帰還する。

 明日からは、魔法の勉強を重点的に行うことにしよう。

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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