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お披露目会

「ここが貴族院だ。いい子にしているんだよ?」

「ご案内はわたくしが付きます。大役を得られて嬉しいわ」

「ああ、よろしく頼む。ミドラード、お務めしっかりな」

「はい」


 小学校や中学校ではなく、地方の大学みたいな大きさの敷地と建物の数に目を奪われる僕だ。ここが貴族院。門も立派なものだ。ホグ〇ーツ?

 貴族院は王都にあって王都ではない。王都を囲む外壁の外にある、巨大な施設だ。

 王都から出てこちらに向かうと聞いた時、襲撃なんかが起きるのだろうかと身構えたが、そんな事もなかった。

 多くの馬車が車列を作っていたし、窓のそとにはどのタイミングで見ても護衛と思われる人間が見えていたからだ。セキュリティは完璧に見えた。


「ではこちらに、どうぞ付いてきてください」


 ドレス姿ではなく、パンツルックの騎士服を着たリリーお姉ちゃんの先導の下、案内される僕ら。

 大きな施設の一つに連れていかれ、そこで何か手続きを取っている。そしてそのまま部屋に通された。

 かなり広いけど、個室かな? あ、シンシアとマオリー、それとクレンディル先生もいる。


「お待ちしておりました、ジルベール様。こちらに」

「はぁ、はい、え? 何?」

「さあさ、おめかしの時間ですよ」


 お母さんにも背を押され、僕はそのまま個室にあった鏡面台の前に座らされた。


「では失礼します」


 僕に大きな布がかぶせられると、その布から頭がでる。あれだ、名前わかんないけど、床屋さんとかでかぶせられるあれだ。


「水よ、その力を示せ」


 お母さんが呪文を唱えて僕の髪の毛を濡らす。


「髪の毛切るの?」

「揃えるだけですので」

「はぁい」

「ジルベール坊ちゃま」

「はいっ!」


 いつものように返事をしたら、クレンディル先生に睨まれた。

 リリーお姉ちゃんがクスクス笑っている。


「お兄ちゃんはどこにいったの?」

「ミドラは殿下のところだ。あれで護衛の一人だからな」

「王子様の護衛、お兄ちゃん強いんだ?」


 戦っている姿を知らないから分からない。


「ミドラは騎士を持っているだけの貴族よりも実力がありますよ? 殿下のチームとしてダンジョンに籠ってますし」

「王子さまってダンジョンに行くんだ」


 不思議でならない。


「貴族院を出ると、そのまま職業校に移りますから。殿下は貴族院で縁をもった方とチームを組んでいるんです」

「普通は騎士団から出すんだがな」


 お父さんが呆れた声をだした。うん、安全を考えると、実力の高い人と組むべきだと僕も思う。どっちにしても経験値は稼げるんだし。


「殿下がそれは面白みがないと。その代わり中級までしかダンジョンに行けないですし、行動範囲も縛りがあります」


 フィールドでも難易度の高い所があるからね。そういう場所にも行けないようにしてあるんだろう。

 チョキチョキと髪を揃えられると、今度は顔にパフを当てられた。


「ジル様には必要ないかもしれませんね」

「子供だからか、肌が綺麗ですもの」

「ジルベール様はお風呂も好きですからね」

「綺麗好きで良いではないですか。ほっほっほっ、清潔な男はモテますぞ」


 僕の顔を好き勝手するのはマオリーとお母さんだ。

 シンシアは声だけ聞こえてくる。

 その時、ドアがノックされた。


「オルド子爵、おられますか?」

「ああ、入ってくれて構わない」


 お父さんが言うのと同時にドアが開かれる。シンシアが動いた気配がしたからドアはシンシアが開けたのかな?

 僕に聞こえないレベルで二言三言しゃべると、お父さんは鏡越しに顔をだした。


「少し挨拶にでてくる。ジル、今日はお母さんのお人形になっていなさい」

「仰せのままに」

「あらやだ、どこで覚えてくるのかしら? この子は」


 お父さんからだよ。

 僕からの鏡越しの視線にお父さんが苦笑い。

 お父さんは僕を撫でようとして、マオリーに素早く手を掴まれた。そして更に深くなった苦笑いをしつつ、僕の肩を軽く叩いて出ていった。


「さて、次は何をしようかしら」

「紅を少し赤くしましょう。赤い髪と瞳には大層似合いそうです」

「そうね、そうしましょう」


 そうやっておめかしをされる僕。よくよく考えると、これって七五三のお祝いだよね?写真とか撮りたがる両親のがどっちかといえば気合が入ってる感じの。






「今年もこれだけの貴族の子と、こうして出会うことができた」


 遠くに見える、壇上で話をする人がまた代わった。王冠っぽいのを付けてるから王様かな? なんか挨拶をしみじみ始めた。

 中庭的な場所に椅子が多く並べられて、そこに家族同士で座らされている僕だ。

 本当に色んな人から挨拶を貰って、まるで頭に入ってこないし覚えてられない。退屈である。

 だがこういう偉い人が集まっている状態でこそ、何かしらイベントが起きる可能性が高い。

 僕は油断をしないお子様なのである。

 たまに子供の泣き声にびっくりする時がある程度で、話は続く。あれだな、小学校とかの入学式みたいなもんだ。

 しかし一人一人挨拶するものかと思ったが、偉い人が名前を呼ぶだけで王様と挨拶するわけではない。

 クレンディル先生とあんなにいっぱい練習したのに、と思わなくもない。


「であるからして、歴史と伝統ある我が国の……」


 王様の話が続く。

 王様の話がまだ続く。

 てか外でやってるけど、雨とか降ったらどうなったんだろうか。雨天中止なのかな? 天気をコントロールする魔法でもあるのだろうか。

 めっちゃ天気いいから雨の心配もないけど。


「このような場を例年通り設けることができ……」


 うんぬんかんぬん。

 ぶっちゃけ聞いてて飽きる。

 これなら何かしらのイベントがあってもいいんじゃないか?

 あ、終わった。

 特に何事もないらしい。


「終わった」

「初めて来たけど、長いだけねぇ」

「そう言うものではないぞ? さあ、閣下の所にいこうか」


 会も終わったっぽく、子供を連れた家族が各々動いている。

 僕もお父さんとお母さんに連れられて、中庭から別の建物に移動だ。


「アーカム」

「エル……、ダルウッド伯爵」


 王都まで一緒に移動したダルウッド伯爵家だ。お父さんもなんか変な反応をしながら応えている。

 コンラートもいるな。


「退屈だったね」

「イスも冷たかったしな」


 大人同士で話すなら、こっちは子供同士で会話だ。

 コンラートの言う通り、お尻が冷たくて我慢が必要だったんだ。具体的に何かとは言わない紳士なお子様の僕だが。

 大人たちは話しながら移動するようで、僕達も大人しくついていく。

 最初に案内された個室の近く、少し離れた部屋に移動した。

 扉の感じが個室とは違う。扉の両方に兵士も立っているし、偉い人でもいるのだろうか。

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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