王都に到着っ!
王都に到着した僕達は、公爵家と伯爵家の方々と別れて、改めて移動をする。
これから向かうのはお父さんの実家らしい。
窓の外の風景が、にぎわった街並みから落ち着いた街並みに変わったあたりで馬車の速度が緩む。
城下町というべき王都は通りも大きく、馬車が往来していても問題がない幅の道が確保されていた。
とは言うもののお城は見えない。
どうにもお城は王都の近くにあるとのことだが、王都の中にはないらしい。
おかげでお城の姿は他の建物で隠れており、たまに遠くに塔のようなものが見える程度だ。行きたいと思う訳じゃないけど、見たかったのに残念である。
お城に思いを馳せているうちに目的地に到着して、馬車からおりようとするとお出迎えの人たちがいっぱい視界に入った。
「父さん! 母さん! ジル!」
「ミドラード、息災であったか」
「お出迎えかしら? ご苦労様」
「お兄ちゃんだ。久しぶり」
お兄ちゃん、しばらく見ない内にまたでかくなった。
お兄ちゃんはお父さん譲りの金髪碧眼のイケメンさんだ。背も高い。
そんなお兄ちゃんが、馬車の扉で止まっていた僕の脇に手をいれて、持ち上げて抱き上げてくれた。
「久しぶりだなぁ! お前、全然大きくなってないんじゃないか?」
「お兄ちゃんが更に大きくなったからだよ! 僕だって伸びてるんだよ?」
去年着てた服が入らなくなったんだぞ!
「そっかぁ! 相変わらず可愛いなぁ!」
「にぎゃー!」
イケメンさんとはいえ男の頬ずりなんか嬉しくない。
「ミドラ、邪魔だ」
「あ、ごめん父さん」
「あなた、邪魔はないでしょう? ミドラちゃんだってジルちゃんに会いたかったんだもの」
馬車の中から顔を出した両親に道を空けつつ、お兄ちゃんは僕を地面に降ろしてくれた。
そしてお父さんが降りてから、お父さんに目配せをするとお母さんに手を差し出した。
「あらあら、すっかり紳士になっちゃって」
「もう騎士になりましたので」
エスコートされてまんざらでもない母は、馬車から降りるとそのままお兄ちゃんに軽くハグをした。
「久しぶりね、ミドラちゃん。元気だった?」
「はい、再会を嬉しく思います」
「ミドラ、久しぶりだ」
お兄ちゃんはお母さんに解放されると、すぐにお父さんに向き合う。
「父さんも久しぶり。また逞しくなったんじゃないか?」
「息子には負けられんからな」
「頼むからあまり鍛えないで欲しいな。いい加減に一本取りたい」
「そうか」
不敵に笑うお父さん。これはまだまだ譲らないぞとの意思表明のようだ。
「父上、母上。お久しぶりです」
そんなお父さんは、お兄ちゃんとの挨拶もそこそこに出迎えにでていた老夫婦に顔を向ける。
「久しぶり、じゃないわっ! このバカ息子が」
「いだだだだだ!」
いきなりアイアンクローくらってますけど!?
「アーカム、あなたにはお説教をせねばなりません」
「父上、母上。子供の前なので……」
「知るか」
「まあまあ、あなたがジルベールね? ミレニアに似て可愛らしいわ」
矛先がこっちにきたっ!
「ジルちゃん、おばあ様にご挨拶を」
あ、そうですね!
「おばあ様、ジルベール=オルトともうし……」
悲しそうな表情をされた。自分の挨拶がこれじゃないと察した僕は偉いと思う。
「ジルベールだよ! おばあちゃん!」
「まあジルベール! 可愛らしいご挨拶をありがとう。ウェンディおばあちゃんですよ」
「はい! ウェンディおばあちゃん!」
「ジルベール、可愛いわ」
ぎゅっと抱きしめられる僕。うん、正解だったらしい。
「あの、父上、そろそろ放してください。力を込めながらジルの顔をデレデレと眺められるのは気持ち悪いです」
「誰が気持ち悪いって?」
「あーだだだだだだ!」
お父さんがやられっぱなしだ! これはここでしか見られない姿だ!
「ま、続きは中で話すか。ジルベールや、お主の祖父のローランドだ」
「はい、えっと……ジルベール、ですけど」
なんと呼べばいいの? おじいちゃん? おじいさま? おじいさん?
「……ウェンディのように、おじいちゃんで良い」
「はい! 初めまして! おじいちゃん!」
お父さんの実家、エルベリン伯爵家に到着した僕は温かく迎えられた。
よかったよかった。




