子供に接待を期待するんじゃない
「と、こういったゲームになります」
「うむ。では早速やっていこう」
そう言って、公爵が仕切り出したが、ここで僕は否を言い出す。
「今回僕はゲームから外れさせていただきますね」
「む? そうか?」
「ええ。僕がいない状態でのゲームの進行を確認したいです。問題があったらゲーム内容の変更をかけないといけませんから」
「ふうむ、そういうものかの?」
「ええ。サフィーネゲームと、姫様のお名前をいただいた以上、完璧なものに仕上げなければなりませんから」
公爵閣下と一緒に遊ぶなんて勘弁してくれ。
「それもそうだな。ではダルウッド伯爵、入られよ」
「かしこまりました」
コンラートのお父さんが巻き込まれていった。
さすがに大人達が混ざると、床のキッズスペースで遊ぶという訳にはいかない。テーブルに移動だ。
僕は執事のファラッドさんの横に移り、ゲームの内容を紙にまとめることにする。
「ジルベール様、私が書きますので」
「そう? じゃあシンシアもお願い」
シンシアの字は綺麗だから、僕が書いたルールを書き写してもらう事にしよう。
「ではファラッドさん、カードを全員に5枚配ってください」
「はい」
ファラッドさんはルールをもう把握しているみたいだけど僕の言葉に従って始めてくれた。
「ふむ、これでその役にあったカードを揃えればいいのか」
「ペアの数字が大きい方がいいか」
「この手札だと……」
「むう、一度全部交換してはダメなのだろうか」
「それも問題ないよ?」
コンラートが唸っているので答えてあげる。でも全部交換するって、そんなに初期の手札が悪かったのだろうか?
「では……一人ずつ確認していった方が良さそうですね。閣下、何枚交換なさいますか? 既に役が完成しているのであれば、交換しなくても結構です」
「うむ、2枚換えよう」
「では手持ちのカードを裏側にして2枚自分の前に。ファラッドさんは裏側のまま自分のところまで引き寄せて、閣下に新しいカードを2枚渡してください」
「畏まりました。旦那様、こちらを」
「うむ」
無駄に時間を食っている気がするけど、最初だからこのくらいが丁度いいはずだ。
「では次は私の番ね。1枚出すわ」
「では姫様、こちらを」
すぐに流れが理解できたファラッドさんは、姫様にカードを渡した。
「次は私の番だね、3枚交換で頼む」
「こちらをどうぞ」
伯爵も交換した。
「僕は4枚だ」
「一度にまとめて換えるんだね?」
「うむ」
コンラートのカードも交換した。
「次は2周目です。また閣下のカードを換えます。これが最後の交換になります。カードを交換しなくても結構ですけど」
「2枚交換だ」
「お任せください」
そうして2周目もサクサクと消化していく。
「では全員交換を終えました。閣下からカードを公開、役の提示をお願いいたします」
「ふふふ、ツーペアだ」
閣下は満足気に手札を公開した。
「姫様、お願いします」
「ええ、私もツーペア。でも10のツーペアがあるからお父様より私の方が高いわね」
「くっ」
「ふふ」
親子同士で競い合っていらっしゃいます。
「伯爵の番です」
「ああ、私はワンペアで終わってしまったよ」
伯爵が手を公開する。
「最後はオレだな!」
「はい、コンラート君どうぞ」
「スリーカードだ!」
「なにっ!?」
「なんですって!?」
コンラート君が公開したのはスリーカード。
「コンラート君の勝ちですね」
「最初に4枚換えた内の2枚が揃っていて1枚が星だったのだ」
「そういう時もありますね。カードはあくまでもランダムで配られますから」
「うむ、見事であるな。次は負けぬ」
「そうね。次は負けないわ」
そう言って次を催促するお偉いご家族。
まあまあ落ち着きなさいな。
「ファラッドさん、裏側のカードを公開してください」
「え? はい」
ファラッドさんがカードを公開する。
「閣下、同じ数字で2つ揃えることを狙っていたようですけど、火のカードを揃えるフラッシュも狙える手札でしたね」
「ああ。迷ったのだがな。すでに1ペア揃っていたからそれを崩すのもどうかと思ったのだ」
閣下の捨てたカードと手札のカードを合わせる。
「もしフラッシュを狙っていたら、揃わず役がなくなっていましたね。いい判断だと思います」
「うむ。そうであろう?」
続いては姫様の手札だ。
「姫様はこちらのカードを残していればフルハウスになっていましたね」
「そうなのよね。残念だわ」
「ええ。わざとカードを残していくのも手だと思います」
「……ちょっと考えてみるわ」
「まあ結局運次第ですけど、閣下がカードを1枚しか交換してなかったら揃わなかったですしね」
そうして僕は伯爵の手も見る。
「伯爵は、運がなかったですね。ワンペア以外狙えなかった状態です」
「まったくだ。星のカードがくればと願ったものだよ」
彼は溜息交じりに、自分の手元のカードを弄る。
「逆にコンラート君は運が良かったね」
「ああ、星がこなければワンペアだった。4枚換えてよかったな」
「ちなみに1枚残したのはなんで?」
「ぬ? 火だからだ!」
「?」
「火だからだ!」
よく分からないが、火は残したかったらしい。
「ま、まあ今の流れも考慮したうえで、次いってみましょうか」
全員からカードを受け取ったファラッドさんが、再びカードの配布を始める。
役を紙に写し終わったので、僕のカードも解禁だ。
ご婦人メンバーは僕のカードを使ってポーカー、サフィーネゲームを開始した。
僕はディーラーとしてこの公爵テーブルにファラッドと残り、流れを眺める。
うん、コンラートよ、公爵と姫様相手にそんなに勝っちゃいけないぞ? 伯爵が頬を引きつらせているからな?