お母さんとシンシアとお風呂と
「こちらでございます」
「案内ご苦労」
「いえ」
お父さんが案内してくれた騎士にお金を払っている。チップ的なものかな。
街の中を馬車でまっすぐ移動して、お店やら家やらが並んでいる先に進むと、お城にも見える石積みのお屋敷が見えた。
そのお屋敷の近くにある、やはり背の高い建物。
そこには多くの人間が待っていた。
「ようこそいらっしゃいました。ダルウッド伯爵家、オルト子爵家の皆様。当宿でごゆるりとお休みください」
「世話になる」
「よろしく頼むよ」
ここは宿泊施設のようだ。
「ではアーカム、また後で」
「ああ、出かけるときは一緒に行こう」
「ほっほっほっ、では私は一度失礼させていただきますよ」
「クレンディル先生?」
馬車から降りたクレンディル先生が、僕達に挨拶をする。
「この街には孫夫婦がいますでな。爺はそちらで厄介になる予定なのですじゃ」
「そうだったんですか」
クレンディル先生の歳は60くらいに見えるんだけど、お孫さんが結婚されているくらいの歳らしい。
「ええ、後でまたご挨拶をさせていただきますじゃ」
「ああ3日後にまた会おう」
そのまま先生は伯爵やマリアンヌ様達にも挨拶をして別れた。
僕達は宿の部屋に案内され、一つの部屋に入った。
「マンションみたい」
「うん? なんだ?」
「なんでも」
案内された部屋は、僕が考えていた日本のホテルとは様式が異なっていた。
扉をあけると廊下があって、部屋がいくつか分かれている。
僕なら普通にここで生活ができるレベルだ。
日本のワンルームのビジネスホテルでも僕なら生活できるけど。
「さあ、こちらに」
「お手伝いいたします」
荷物を置いて、さっさと脱衣所に連れてかれお母さんに服を剥かれる。
お母さんも服を脱いで、僕の背中を押しながら浴室に連れていかれた。
「ジルちゃん、浴槽に水を出せるかしら?」
「やってみる、お湯のがいい?」
「少しやってみてもらえるかしら?」
お母さんに言われるがまま、僕は浴槽にお湯をためる。旅の途中でお母さんに教わったやりかただ。
水をそのまま出すのと大して変わらない。
お母さんが手を入れて、温度は問題なさそうだから続けてといったので続ける。
「さあ、体を流しますよ」
お母さんはその間に、小さないくつものタライにやはりお湯を作っていた。
タオルもまとわないお母さんが、僕をお風呂場につれていって体をお湯で流した。
「まだお湯入りきってないのに」
「だってすぐ洗いたいじゃない?」
白い肌と均整の取れたプロポーションのお母さん。とても二児の母親に見えない人がスポンジで泡立てて僕の体を手早く洗いだす。
ここのところ体を拭くだけだったからすごくスッキリする。
魔法とかで体を綺麗にできるようなものを考えた方がいいかもしれない。
「失礼いたします」
「ええ、お願い」
シンシアも裸で登場だ。着やせする傾向の彼女はスタイルも良く、可愛らしい。
シンシアも久しぶりのお風呂が嬉しいのかフサフサの尻尾がフリフリしている。
「シンシアも入るの?」
「ミレニア様の髪を洗いますから」
お母さんの髪の毛はとても長いから、お風呂の時にお手伝いをするらしい。お母さんは一人でお風呂に入れる貴族だけど、今日はシンシアにお願いしたようだ。
「ジルちゃんをお願い」
「はい、ジルベール様、頭を洗いますよ」
「はぁい」
端に寄せられて、シンシアに頭をわしゃわしゃされる。
「流します」
頭を洗われて泡だらけの僕は、上からお湯を何度もかぶせられた。
そして泡が落ちきったのか、半端にお湯の入った浴槽に抱き上げられて入れられる。
ちょっと浴槽が深いみたい。
「こちらを」
「準備がいいね」
少し重い椅子を用意していたみたいで、僕はそれに座って、お湯を作る。
足先が沈む程度だったお湯がかさをまし、だんだんとお湯の水位があがっていく。
「はぁー」
「気持ちよさそうね」
「うん」
僕の世話を終えたシンシアは、お母さんの体を磨くように洗っている。家族を家族に近い人が洗っているその姿は、実にエロい光景だ。
子供ボディの僕の体は反応しないけど、見る価値は十分にあるのである。
浴槽にお湯が入ったので、浴槽から手を伸ばして……届かないから空いてるタライにお湯を浮かべて追加していく。
「あの、奥様」
「何かしら?」
「ジルベール様が、お湯をタライに飛ばしてるんですけど」
「できるみたいだし、いいんじゃないかしら? 許可は出したわよ?」
「なるほど」
「勝手に魔法は使わないよ。信用ないなぁ」
「前科が多いですので」
「ちょっとじゃん」
「ふふ、ジルちゃん。気を付けなきゃダメよ?」
「はぁい」
体を洗ったら次は髪の毛のようだ。
そしてそれが終わると、お母さんは浴槽に入ってきた。
シンシアが体を洗い出すころには時間が結構経ったので、僕は先にお風呂から上がる事にする。
僕が出ればお母さんとシンシアもゆっくり浴槽に浸かれるだろうからね。
髪を乾かす魔道具までは設置されてなかったので、タオルで入念に髪を拭く。
シンシアが用意してくれたであろう、寝間着を着て、リビングに行くとファラがミルオックスの牛乳を出してくれた。
それを飲んで、ベッドで転がってると睡魔という敵に襲われてあっさりと敗北してしまう。
ふあ、やっぱりお風呂は気持ちがいいや。




