算数のお時間
「もう一回、もう一回だ!」
「えー、飽きてきたよ」
休憩時間なんかを挟んでも、ババ抜きは続いた。
しかしやる事がない馬車の中とはいえ、何度もババ抜きをすると飽きる。
子供な僕が飽きっぽいのではない。お母さん達も若干飽きが見えているのでこれはしょうがないだろう。
「だがまだオレが一番勝ててないっ」
「や、それ終わんないやつだから。他のゲームをしよう?」
「む? 他のゲームだと?」
「うん。25なんてどう?」
「25?」
「うん。にじゅーご」
今度は別のカードの提案だ。
これはブラックジャックを作り変えたもの。単純に数字の合計を25に合わせた人の勝ちで、25ぴったりの人がいなければ25に近い数字の人の勝ち。でも26以上にした人は負けというシンプルなゲームだ。
数字は1から13まで。白星と黒星を抜いて、カードを2枚から全員スタートするゲームである。
もちろんカードの交換や追加もルールに盛り込んでいる。
「すうじの、ごうけい、だと?」
顔を青くするコンラート。
「あらあら、大変ね」
「大変? ああ、なるほど。そういう事ですか」
「何? どういうこと?」
お母さん二人は納得しているけど、僕は首を捻る。
「……ジルベール、おまえ、足し算ができるのか」
「え? あ! そういう事ね!」
相手はまだ6歳、今年7歳の子供だ。日本でも小学校が始まって初めて算数の授業で足し算を教えられるレベルである。
僕は特別気にしなかったが、数字の足し算ができなくても不思議ではない。
「25だと、指が足りないではないか」
「あー、そっか。じゃあ無理かぁ」
カードを広げないで遊べるゲームって他に何かあったかな?
「素敵なゲームね。面白そうだわ」
マリアンヌ様がニコニコしながら、カードを手に持って3枚をテーブルに置いた。
「この数字が7で、こっちが3ね。そしてこっちが11」
「ななとさんとじゅういち」
一気に幼児退行したな。あ、まあまだ幼児でいいのか?
7と3で指がいっぱいになってしまってる。
「ジルベール君、合計はいくつ?」
「21です」
「はい、正解です。ジルベール君が21ならカードを追加で引きますか?」
「難しい質問ですね」
最初2枚で、更に1枚追加して21だ。1から4の数字を引けば25に近くなるけど、5以上のカードを引けば26以上になってしまう。しかし21ではそれ以上に25に近い人がいるかもしれない。
マリアンヌ様がこちらをニコニコ見ている。
僕はコンラートを見て、ここは数字を見せるべきだと思いカードを引いた。
「3です」
「合わせて?」
「24ですね。これはかなり高確率で勝てそうです」
初手で12と13で25なんて人がいなければ勝てる手札になった。
「計算が早いですね、ジルベール君は」
「うちの子、数字は得意みたいなんです」
「数字の強い子は良い領主の補佐になれますね。アーカム様のご子息は優秀ですわ」
お母さんが僕の頭を撫でながら褒めてくれる。
マリアンヌ様も僕をほめちぎってくれた。
「むう」
そんな姿を見て、面白くないという顔のコンラート。
「は、母上! もう一回、もう一回だ」
「はいはい、じゃあカードを変えましょうね」
ブラックジャックもどきをするつもりだったけど、いつの間にか算数の授業の時間になってしまった。
一生懸命カードの数字を見て、指を折るコンラートにほっこりしながら、たまにマリアンヌ様に当てられて一緒に算数をする。
真ん中に一個大きな属性のマークを貼るんじゃなくて、日本で見たように数字とマークをちゃんと数に合わせたものを作った方が良かったかもしれないなぁ。
11から13は10みたいに並べればいけるかな?




