知らない内にサプライズ
5回ほどやって、結果僕が一番弱かった。
くそうっ、なんでや!
「ジルちゃんは顔に出るわねぇ」
「そうだな。もっと表情を抑える訓練をするべきだ」
「お二人とも、容赦なさすぎです」
「「「 そういうシンシアは一度も負けていない(わ)っ! 」」」
オルト一族三人からの追及も涼しい顔だ。
「これをずっと作っていたのね? 何かやっているとシンシアから聞いてはいたけど」
「ああ、中々に面白かったな」
「力や技以外で競う遊びなんて久しぶりにやりました」
シンシアは結構殺伐としてるなぁ。
「じゃあ次のやる? 別の遊びもできるよ」
「何? このおもちゃは他の遊びもできるのか」
「うん。今のが黒星で、七並べとか、数合わせとか25とか」
ババが通じないので、まんま黒星だ。
七並べはそのままでも大丈夫だろうと思い七並べ。
神経衰弱は意味が伝わらないし、4歳児の命名ゲーム名としては殺伐としすぎてるかなと思って数合わせにした。25は変則のブラックジャックだ。10~13を10として扱うの意味がよく分からないからである。ついでにAがないので1は数字の1として扱うことにする。
「すごいな、うちの子は天才だったか」
「素晴らしいわ、面白いし! もっとやりましょう」
「ええ、ジルベール様は天才です。これらの物を魔法で、しかもほぼ無詠唱で作成なされました」
「「 はい? 」」
シンシアの言葉に二人の声が重なる。
「武器や魔道具であるカードをおもちゃにする、そしてその遊び方を考える。これは子供ならではの発想だと私は思いました。しかしこれらを作るのに、少なくとも水と土の魔法を詠唱なしで、子供という魔力の少ない状態でお作りになられました。私は魔法以外の部分をお手伝いいたしましたが、何度か聞いても『慣れたから』とおっしゃっていました」
「それは……」
「なんという……」
「少なくとも2つの属性の適性を持ち、その適性もかなり高いと思われます。旦那様、奥様、おめでとうございます」
シンシアの続けた言葉に、二人は笑みをこぼす。
「素晴らしい! これは未来の賢者かもしれぬな」
「私の水の適性を受け継いでくれたのね? ママ嬉しいわ」
その言葉に僕は冷や汗がマックスになる、2属性の適性で喜ばれていらっしゃいますけど……多分全部の属性の適性があります。
「それと、もう一つ喜ばしいご報告がございます」
「まだあるのかしら! もう私驚きすぎてどうにかなりそうよ?」
「シンシア、なんだというのだ?」
シンシアはバスケットに入れた、二人の為に作ったトランプもどきを取り出した。
「ジルベール様が御用意いたしました。お二人の結婚記念日のお祝いです。ジルベール様、こちらをお二人に」
「はえ? 結婚記念日!?」
「まあ!」
「おおっ」
お母さんが口元を押さえて、立ち上がる。
お父さんも目を輝かせた。
「あの、シンシアさん?」
「ふふ、サプライズ成功ですね」
「僕、知らないんですけど……」
小声でシンシアに指摘するも、シンシアは嬉しそうに僕にトランプもどきを渡すだけだ。
「えっと、お父さん、お母さん、結婚記念日、おめでとう?」
「嬉しいわ、こんなに素敵な記念日がいままであったかしら」
「息子からの手作りの品か、これは家宝にせねばならんな」
「えっと、遊んでね?」
とはいえ、一家に一個あればいいものだけど。
「ご安心ください、保存用も作成していただきました。保存用には希少品を保管する時空魔法が付与された宝石箱の注文を検討中です」
「素晴らしい!」
「さすがシンシアね」
「ねえ、それ絶対高い奴だよね!? 知らないけど聞いただけで分かるよ!?」
シンシアさん、そんなキャラだったんですかね!?




