レアアイテム! でも使えない。
「まだ残っているとは」
お父さん達と話した日は、そのままお父さんとお風呂に入ってお父さんとお母さんと一緒に寝る日になってしまった。
そして次の日は初日ということもありシンシアの監視の目が突破できなそうだったので断念。
次の日もその次の日も。
結局1週間ぶりにチュートリアルダンジョンに戻ってくると、まだ炎の絨毯は残っていた。
テコテコと近づくと、一気に体が満たされる感覚に襲われる。
「お、おおお? おおう」
JOB経験値がまとめて入ったようだ。
「ダンジョンの外にまでは飛んでこれないけど、ダンジョン内に残留していたってことかな?」
目に見えないものなので確証はもてないが、感覚的にはそういう感じなんだろう。多少消えたのか、それとも全部残っていたのかは不明だけど。
今日は何もしていないので魔力は満タンだ。炎の絨毯を一度解除して敷きなおすことにしよう。
「解除っと、おお?」
炎の絨毯のあった位置に、小さく光り輝くメダルが2つ落ちていた。
「モンスターメダルだ。こいつらも落とすんだね」
魔物にはドロップアイテムが設定されている。チュートリアルダンジョンのスリムスポアは通常ドロップは何もしないと言われていたけど、まさかメダルが設定されていたとは驚きである。
「使い道あるのかな? 分かんないや」
モンスターメダルは武器や防具の強化に使う。
錬金術によるメダリオン化だ。
メダリオン化すると、武具に魔物の力が乗り移って強化してくれるという設定である。
「スリムスポアの力が乗り移るってなんだろーね?」
まあ元々の魔物と関係ない能力付与になる物も多かったから何とも言えないけど。
「小鬼喰らいはゴブリン特効、みたいなのは分かりやすいけどね」
小鬼喰らいという、大きいハエトリクサみたいな食虫植物の魔物がいる。こいつはゴブリンを見かける森のフィールドにいて、時々ゴブリンを口に入れた状態でエンカウントする素敵な魔物だ。
こいつのメダルをメダリオン化して武器に装着すると、ゴブリン系統の魔物に対して20%の攻撃力上昇と30%のクリティカル発生率上昇効果がある。
でも魔法でしか攻撃をしてこないウィザードブレインという、脳みそに手足が生えたような魔物のメダリオンが、物理の威力が5%上昇だったりしたし、因果関係はあったりなかったりだけど。
「水よ」
僕は水の魔法でコインを包んで拾う。さっきまで火の魔法の中にあったから熱いと思ったのだ。
「炎の絨毯」
お代わりのスリムスポアが来たので、僕は再び魔法を発動。
前よりも魔力を込めて、更に長い持続時間になるようにした。
「効果が分かんないけど、まあラッキーってことで」
ゲームだとスリムスポアはチュートリアルダンジョンにしかいない魔物だ。メダリオン化したときの能力は不明である。
もともとデータ厨でもなかったから、よく使うメダリオンの効果しか覚えていない。
「調べてみよっと」
幸いうちの書庫には無数の本があるのだ。メダリオンに関する本があるかもしれない。
属性結晶を吸収できる物は吸収し、吸収できない物は持ち帰る。
「あれ? 吸収できた」
この間来た時は吸収できなかった属性結晶が吸収できた。
「なんだろ? JOBがあがったからとか?」
ゲームでは吸収できなくなるほど属性結晶が入手できなかったので分からない。一番多く入手できた火の属性結晶も最大で3つだったからだ。
「JOBが上がったからだな。きっと」
前回来た時との違いはそれくらいだ。他に原因は考えられない。
前回吸収できず、回収にとどめた属性結晶も使ってみたら吸収できた。分からないものはいくら頭を捻っても分からない。取りあえず吸収できたことを喜ぼう。
「属性矢も回収してっと」
武具の類も一応回収。収納に余裕があるから今のところ問題ないけど、そこまで強い武具という訳でもないから死蔵することになりそうだ。
外に出てゲートを広げて部屋に戻ると、ふかふかの布団が待っていた。
おやすみなさい。




