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なんか始まった!?

「クリア時間を測って上位の何人かの名前を貼りだすなりすれば競争心も煽れていいんじゃないかしら?」


 遊具での遊びも終え、屋敷に戻って家族団らんの時間です。お外は寒かったからリビングで家族で暖を取ってます。

 はい、お母さんです。お父さんとコソコソ話をしていたのがバレてました!

 特にお説教などは『僕』には来ませんでした。でもお父さんが引きつった笑みを浮かべています。


「砂時計とか?」

「うーん。タイマー、入手できないかしら?」

「タイマーか」


 タイマー、それはゲーム時代の時にも登場していたストップウォッチである。なんでそんなものがあるかっていうと、ゲーム内でのミニゲームでタイムアタックがあったからだ。

 魔物のドロップ品で、タイムアタックを行うのになぜか自分でそのアイテムを用意しないといけない。クリアすると味方キャラの強化アイテムがゲットできるというゲーム的にいえば横道にそれたイベントだが、その強化アイテムが中々に強い。

 そしてイベント用アイテムなのでそれなりにドロップ率が高い。でも一つしかいらないから二つ目以降は普通にドロップアイテムとして売るだけのものとなり下がる悲しいアイテム。イベントアイテムだから錬成にも使えないのだ。

 まあそんな感じなので、世界背景を考えると完全に遺物だけど、あるものはあるのだ。

 ちなみに辺境の村の羊レースで使用されます、ただのリズムゲームです。そんなもののために……オーバーテクノロジぃ。


「クロッカーのドロップだっけ」

「良く知っているな、その通りだ」


 クロッカーとは柱に掛けるような鳩時計に鶏の足と羽が生えている魔物である。

 ストーリーの中盤あたりで出てくる鳥だか時計だか、意味の分からない魔物。でも鳥に特攻のある武器でダメージ加算が入るので鳥である。


「クロッカーはフィリバランの時計塔の地下水道にいる魔物だな。昔持ってはいたんだがなぁ」

「ちょっと遠いわねぇ」

「ふぃりばらん……王都から見て北西だっけ?」

「ああ」

「ダンジョンに籠るJOB持ちに人気なのよね」

「そうだな、ダンジョン内にどれだけの時間いたか計れる便利なアイテムだ。帰る時間の目安になる」


 あの辺は豪雪地帯だったはず。この季節に魔物を狩るためだけに向かうには不向きな場所である。


「お義父様にお願いしてみましょう」

「父にか?」

「ええ、たまには頼ってあげてくださいな」

「むむ……まあそうか」


 おじいちゃん、お父さんに厳しそうで可愛がってるからね。


「よし、手紙を出しておこう」

「せっかくだし、ジルちゃんもおじいちゃんにお手紙を書くといいわ。私もお義母様にご挨拶をしておきましょう」

「はぁい、でも今日はこっちを書くから明日やりまーす」


 面倒だけどこういうのを拒否はできないんだぜ……羽根ペンと筆の文化だから手紙は間違えると一から書き直しなのが地味に辛いし、書きあがった後でクレンディル先生とお母さんのチェックが入るのだ。

 先生に直された部分を含めて書き直して、その後でお母さんに書き直しを求められるのが確定しているのだ。一度も間違えなかったとしても最低三枚は書かないといけないのだ、面倒である。


「王都でならタイマーが手に入るの?」

「まあ珍しい品ではあるが、手に入らない品ではないかな」

「ジルちゃんの考えたこのあすれちっく? というものが流行すると値段が上がるかもしれないわねぇ」

「それなら今のうちに多めに用意してもらったほうがいいか」

「や、流行るかは分かんないよ? そもそも各コースに一つずつあればいいものだからそんなにいっぱいいらないだろうし」


 書き途中のアスレの設計図に視線を移す。だんだんと距離の開く飛び石、右左右左と跳ねるように移動して進むギミック、そして掴んだら滑り降りだす懸垂棒はいいタイミングでジャンプしないと落ちてしまうのだ。

 そこが終わると短い距離で助走をし、対岸へと飛ぶ幅跳びエリア。そしてあまりにも有名すぎる反り立った壁がご用意されている。時間制限を設けるのは難しいかもしれないので、各ギミックは三回失敗したらその段階で失敗とする。当然コースから外れて落下したら一発で失敗だ。

 ここで第一コースはクリアだ。


「重量上げやぶら下がる鎖渡りはどうした?」

「そっちは第二コースに作る予定」

「第二コース?」

「第一コースをクリアできた猛者だけが挑戦できる難易度を上げたコース」


 本家も三部構成だった。最初のコースの放送が長くって二部コースはうろ覚えだけど、とにかく手とか指を酷使させて落下させる鬼畜コースだったはずだ。重量上げ、鎖渡り、地面がなく、手足だけで体を支えながら対面する壁を渡るやつ、指先だけの力で横に移動するやつなんかがあったはず。


「面白そうだな……」

「でもJOB持ちの運動能力を考えると、どうなんだろう?」


 ここで出てくる問題がJOB持ちの高レベルの人間だ。JOBを持っていない人間もレベルがあり、レベルが高ければ能力が高いというのはなんとなく感じ取れるが、JOB持ちは圧倒的である。

 JOB持ちと普通の人たちとの能力格差がありすぎるのだ。


「JOB持ちを誘引するのが目的だ。むしろJOBのない人間に合わせて作る必要はないのではないかな」

「おぅ……」


 そういう考えでしたか。じゃあ難易度はお父さんベースでJOB持ち人が苦戦するレベルにした方がいいかもしれない。


「第二ってことは、第三も考えているのかしら? まったくこの子は……」


 そういいながらもお母さんが僕の頭を撫でる。呆れてる?

 第三コースなんか綱を手の力で登るだけの奴だよね。結構高い位置まで登るやつ、確か十五メートルだか二十メートルだか。安全帯とか作らないと再現不可能じゃね? 落ちたら死ぬじゃん。


「タイマーでクリア時間を計って、それぞれのクリアタイム上位者の名前を貼りだす。それと合計タイムも……これは盛り上がりそうだな。第三コースはどんなのだ?」

「うーん。これはどうしよう……危なそうだし、二つでいいかも?」

「ちなみに、どんなのを考えているんだ?」

「二十メートルの綱登り、制限時間あり。時間が来たら綱が外れて真っ逆さま」


 僕の言葉にお父さんが頬を引きつらせる。さすがにきつそう?


「もうちょっと煮詰めましょうか」


 お母さんも真剣な顔になった。






「ふう、この壁のところが中々に難しいな」

「お父さんでも成功率が三割じゃあねぇ」


 反り立った壁。というか崖?

 JOB持ちベースで作ってあるので、指を引っ掛けて体を持ち上げる部分がテレビで見ていたものと比べると二倍も高い物になっている。傾斜も酷い。

 でもこのくらい高くしないと飛び上がっただけで手が届いちゃう職の人がいるのだ。だから高くしないといけない。その他の仕掛けも僕が想像していたものよりもでかいし広いし長いし規模がいちいちでかい。

 レベルやJOBの概念があるこの世界の人間の運動能力を考えるとこのくらいの難易度になるようだが……その分アトラクションとしての迫力がすごい。


「最初から連続して進むとなると、ここまで到達するのがそもそも難しいのもな」

「あんまり最初の方で脱落が多いと参加者減っちゃうよ?」

「そうなんだがなぁ」


 あの滑り降りる懸垂棒の難易度が無茶苦茶高い気がするんだけど。こちらもテレビと比較して斜度が高いし距離も長い。

 先端部分に叩きつけられるように当たるので、早すぎると向こう岸まで届かず、遅すぎると衝撃で落下してしまう高難易度だ。

 あれ単独でやる分には面白いらしいけど、お父さんもレドリックも千早も何度も地面に落下して水を浴びている。


「初見ではできないくらいが丁度いいんだが、今のところシンシアと千早くらいしか満足にクリアできないのもな」

「二人とも女の子だから体が軽いからね」

「その分背が足りなくて壁がなかなかクリアできませんけど……」


 もうそこは女性用コースとかを作った方がいいんじゃないかという意見がでるほどだ。

 あと女の子と言う単語にやや嬉しそうな反応をするシンシアはいったい何歳なんだろうか。


「……くだらん」


 こちらは水も滴るいい男ことビッシュおじさんです。みんなが一通り、多少失敗しようともできて、お父さんやレドリック、千早が通しでクリアできるような難易度に調整ができたからと聞いておじさんも後衛JOB持ちとして挑戦。見事な落水を決めました。

 製作期間約半月、調整にさらに一カ月かけて作られたこのアスレチック。

 コース全体は木造で、一部金属が使われています。木造だけどエレメンタルウッドマンのボディが使われておりますので下手な金属より硬い。今のところ折れたり割れたりしているところはないのだけど、どのくらいもつんだろうね?

 地面のならしや水を流し込む穴、それとコースを固定する台はおじさんと僕の魔法でさっくり作成だ。


「結局はアサ……シーフの上位職の独占か」

「ほっほっほっほっ」

「こういう運動もいいですね。森の中とは違う訓練になります」


 俊敏な動きができる二人には水を得た魚状態である。クレンディル先生、腰痛めて休んでたんだから無理しないでね。


「これは、金がとれますなぁ!」

「競争心を煽るとは。恐ろしい仕組みを考えおるっ!」


 未だにうちに残ってるウェッジ伯爵と冒険者代表のトッドさんもお試しくださいとのことでこの場にいる。とても賑やかである。

 一位はシンシア、二位に先生、三位はウェッジ伯爵だ。トッドさんは残念ながら反り立った壁が三回の挑戦でクリアできなかった。何度か挑戦させてもらってクリアこそしたが、筋肉が重すぎるらしい。


「んで、坊主はどうだったんだ?」

「最初の跳ね島の段階で危ないからやってはいけませんだって」

「あー、そりゃそうだわな……」


 考えたというか、案を出した僕が触れないというのは非常に。ひっじょーに不服である。僕もやりたいと不満を言うも、お母さんから命令されたお父さんバリアとシンシアガードという二枚の結界を突破しなければならず断念。

 最初の簡単なところだけシンシアが抱っこしてクリアしてくれたくらいだ。

 むう、やりたい。反り立った壁は絶対に無理だけど。


「これ、ここに作ったけどどっかに持っていくの?」


 作った時みたいに僕とおじさんが土木工事をして移動させるのかな?


「いや、ここに置いたままだぞ。ここに宿場町をつくるからな」

「はい?」


 おじさん、町を作るっていいました?


「ここはジルベールの見つけたダンジョンと領都との通り道にある場所だ。騎士団で作った道を通ってきただろう?」

「そうなの?」


 道なんて知らんがな。


「アーカムはダンジョンをある程度解放するつもりらしいからな。そうなれば冒険者も集まるだろう。そういった連中が休める場所をここに作るつもりらしい」

「なるほど、下級の冒険者対策か。オルト伯爵も考えられますな」

「「 下級の冒険者対策? 」」


 おじさんとウェッジ伯爵の会話に首を傾げる僕とトッドさん。


「ダンジョンの近くには、どうしても冒険者が居座るだろう? だが森の中の村の広さを考えると、作れても中規模の村だ。こちらに顔を出そうとする冒険者のすべてを受け入れることは多分無理だ。トッド、お前なら分かるな?」

「あー、なるほどな。確かに、ウチは確定としてウチと同規模以上のクランが二つか三つきたら村が冒険者だらけになっちまうわな。そんでもってそれ以上の冒険者が顔を出し始めたら、村の中に収まらなくなる、と」

「そうなると森を切り開くかしなければならなくなるが魔物もいる森だ。中々安全にとはいくまいし、仮に安全に拡張できたとしても広くなれば守る箇所も増えて面倒だ。ゆえにダンジョンのある村にある程度近い場所にこういった逃げ道を用意しておくのだ」

「なるほど」

「冒険者達がダンジョン内で稼いだ金を少しばかり回収する役目も持っておるしな」

「はあ? あ、いや、確かに参加費が掛かるとなるとそうだな。こいつに参加したがらねえ冒険者ってのはあんまいなさそうだ」

「だろう?」

「や、いつか飽きられると思うけど」

「定期的にこの障害物を変えれば良いだろう」


 アスレチックの内容は随時変更を掛けていく方向らしい。


「でも勝手に真似されるかもしれないよ?」

「安心しなさい。既に商業ギルドと話はついている。あとでお前もサインをしなさい」

「ああ、そうっすか」


 根回しもバッチリらしい。

 そんなこんなで色々と準備が進んでいく。春が来たら大々的に動き出すらしい。

 ……まだ大々的に動いてないレベルなんだね、これ。

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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