水の魔法でクルクルクルー
「あなたばかりずるいわ」
「ああ、すまない」
僕を胸から離したお父さんから、お母さんが手を伸ばして僕を抱き上げてお膝の上に乗せる。
「シンシア」
「は、はい、ジルベール様」
「これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
僕が言うとシンシアが頭を下げる。
「それと、この間はごめんなさい」
「はい?」
「シンシアに『命令』をしてしまいました。お父さんが言わないって言った事を、聞き出すために」
「そうなのか?」
「シンシア?」
僕の謝罪に、お父さんとお母さんが顔をシンシアに向ける。
「ジルベール様……はい、そうです」
「シンシア、聞かれたからついと言ったな」
「私達はジルちゃんだけでなく、シンシアにまで気を使われていたのね」
「申し訳ございません」
「シンシアは僕を庇ってくれたの?」
「ああ、そうだ」
「そうね」
シンシアは僕に命令されて無理矢理言わせたことを隠していたらしい。
「私が勝手に判断したことです。ジルベール様はお気になさらず」
「う……」
「ふむ。今回の件ではないから、叱ってもいいかな? これは」
「ちょっ!?」
「そうねぇ、確かに甘やかしすぎたかもしれないわ」
「お母さんまで!?」
しかもがっちりホールドされて逃げられないっ!
「ところでジルベール、お前はどこまで魔法が使える?」
「どこまで?」
「色々試したのであろう?」
「それは、うん。でもあんまり強いのはやってないよ? 火とか危ないし」
チュートリアルダンジョンでもあまり強い威力の魔力は試していない。属性結晶の吸収によって魔法の使える回数は増えているけど、あまり強い威力の魔法を撃つと頭痛に襲われるような気がして怖くて使う気になれないのだ。
昨晩開発した炎の絨毯が、過去一で魔力を消費する魔法だったのではないだろうか。
「水の魔法は使えるかしら? 清らかな水よ、いでよ『ウォーター』」
お母さんが僕の前で小さな水の球を生み出して指の周りをクルクル回す。
「うん、できるよ。水よ、いでよ『ウォーター』」
お母さんと同じように水の球を出して、指を中心に同じようにクルクル回す。手が小さいから指の周りで回すのは難しいのだ。
「動いてますね」
「息子は天才だったか」
「ほえ?」
僕が天才?
「水の属性に適性があるのね。属性の適性がないと生み出すことができても自在に操ることは中々難しいのよ?」
「そんなこと、本には書いてなかったよ?」
「魔法関連の本はあまりないからな。お前が読んだものの中にはなかったのかもしれんな」
「ジルベール様は歴史書や神話の本を好まれますから」
そういえばゲームの知識で魔法を扱ってたから、しみじみと勉強したことはなかった。
「魔術師の書を良く選んだ。だが先ほど言ったが」
「うん。勝手に人前で魔法を使わない。一人で魔法を使わない、魔法を使う時は誰かと一緒にいるときに許可を貰った時だけ」
「そうだな。だがいきなりミレニアの真似をして勝手に魔法を使ったな?」
「あ!」
「今度こそお仕置きが必要かしら?」
「ジルベール様、観念してください」
「ちょっとずるくない!?」
「問答無用だ」
「ちょ、やめっ! あはははははははは!」
お父さんとお母さんにめっちゃくすぐられた! この攻撃に耐えられる子供なんて存在しないっ!




