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困った時には人任せ

「ジルー! おはよう!」

「おはよ」


 翌日、朝食も前の朝。着替えている真っ最中に突撃を受ける僕が現れた。

 相変わらずノックもなしで、千早と千草も目を丸くしてフリーズしている。靴下取って。


「チェ、チェイム様、さすがにお着替えの時はご遠慮していただ」

「チェイム様! 申し訳ございません! ジルベール様!」


 あ、メイドのアンネアさんも突撃してきた。


「あ、うん」

「? どうしたの?」


 きょとんとした表情のチェイムちゃんは、そのままの表情でアンネアさんの肩に担がれて退場。

 アンネアさん、朝から大変ね。

 とりあえず気を取り直してお着替えを済ませる。そして食堂へ移動。


「ジル君、朝からすまないね」

「いえ、大丈夫です」


 見られて困る体はしてないからね! パンツ履いてたし。


「もう、お父様が教えてくれないからだもん!」

「これはわたし達の教育が悪かったのかしら……」


 9歳の子供への情操教育の難しさに、ラーナスさんも頭を悩ませている。

 うちのお父さんとお母さん、それにおじさんとウェッジ伯爵は微笑ましいものを見たと僕らを眺めている。


「ごめんなさい、ジル。お着替えを見てはいけないって知らなかったわ」

「いいよ、次から気を付けられるでしょ?」


 それよりもノックをすることを覚えた方がいいと思う。


「……先に言っておくけど、お風呂とかもダメだよ?」

「ええ!? それはさすがに嘘でしょう!?」

「「 はぁ 」」


 やっぱり。


「今日一緒に入りたかったのに! 噓よね?」

「本当だよ。ジル君とはお風呂に入れないんだ」

「そんなっ! なんで!?」

「なんでってそれは……」


 ちらりとラーナスさんに視線を向けるドルンベル様。ラーナスさんはその視線を回避。ドルンベル様は他に助けられる人員を探す。

 お父さん達は先に食事を始めだした。焦るドルンベル様。


「……異性とお風呂に入るなんて、いけないことだよ」

「じゃああたし、お父様ともお風呂に入っちゃいけないってこと!?」

「私とならいいんだ」

「意味が分からないわ!」

「家族とならいいんだよ」

「? ジルは年下の男の子だから弟のように扱いなさいって言われたわ。弟って家族よね?」


 あ、なるほど。結構距離が近いと思ったけど、家族のように接しろって言われてたのか。チェイムちゃんは素直だから、その通りに行動してたのかもしれない。


「た、確かにそうは言ったが、実際には家族ではなくて、な?」

「え? え?」


 チェイムちゃんが混乱している。こりゃあかん流れやな。昨日みたいにアンネアさんのコンボで……アンネアさんがさりげなく退室していったよ。


「ジル君」

「はぁい?」


 む、無視するわけにもいかない、が……。


「ジル君はチェイムとお風呂に入ったりしないよね?」

「う、うん」

「ほら、ジル君もそう言ってるじゃないか」

「そうなのね! ねえジル、なんで!?」

「僕もお父さんに、そう教わったから」


 バカなっ! という表情のお父さん。ごめんね、お母さんに振る訳にはいかないんだ。


「あ、アーカム伯爵までなんて……本当にダメなのね」

「……ああ、もしチェイムがジル君とお風呂に入ろうものなら」

「ものなら?」


 チェイムの質問に、ドルンベル様が沈黙する。最初は思案顔で、その次は悲しそうな、そして怒りの表情に。


「いかんぞ! まだ結婚は早すぎる!」


 ばんっ! とテーブルに手をついて立ち上がった。


「想像力豊かすぎじゃね?」


 ほら、ラーナスさんがこめかみの辺りを押さえてるよ。でもドルンベル様が急に怒ったからチェイムちゃんが質問を止めたから結果オーライってことで。







 食事を終え紅茶が配られ出したころ、おじさんが口を開いた。


「色々と脱線したが……今日の話をするぞ。ジルベール、私とウェッジ、シンシアと討伐の手伝いに行くぞ。千早と千草もだ」

「討伐って、エレメンタルウッドマン?」

「そうだ」


 おお、久しぶりに経験値が稼げる!


「昨日見た通り属性が厄介な場合もあるが、そこは千草の対処を参考にする」


 僕の後ろで千草が礼をする。


「あたしも戦いたい!」

「……剣で切りかかる訳にはいかない相手だ。連れていくことはできぬ」

「エレメンタルウッドマンは我が領の抱える最大の敵だ。お前の敵う相手ではない」

「ジルが行くのよ! ずるいわ!」

「ジルベールは我らが全力で守るから良いのだ。ジルベール以外を守る余裕はこちらにはない」

「聖獣様に会ったり! エレメンタルウッドマンと戦ったり! ずるいわよ!」


 でた、子供のずるいずるい攻撃。


「ドルン、子供の躾がなっていないな」

「すみません、義兄上」


 おじさんがドルンベル様を一瞥。


「シンシアの弓でエレメンタルウッドマンを発生させ、ウェッジと千早で敵を抑える。オレとジルベール、それとクリスタ嬢で攻撃だ。千草は弱体化と回復がメインとする」


 あ、クリスタさんも連れて行くんだ?


「カードで攻撃ならやったことあるわ!」

「シンシアは属性看破の使えるハンターとペアだ。呼び出したら二人でジルベールの護衛だな。ジルベールは二人から離れるな」

「あたしも一緒!」

「はい」


 おじさんはチェイムちゃんを無視して話を続ける。


「千早、ウェッジ伯爵と連携できるように話をしておきなさい。稀にではあるが、発生した個体以外のエレメンタルウッドマンが森から出てくる時もある」

「うむ」

「はい」

「ねえ!」

「チェイム、静かにしていなさい」

「ぐぬぬー」


 リアルでぐぬぬっていう子いるんだ!?


「ジルベール、魔法は範囲攻撃や範囲に影響を及ぼす魔法は絶対に撃つな。味方を巻き込むぞ。背の高いエレメンタルウッドマンの頭部を狙うようにアロー系かボルト系を打ちなさい」

「うん」


 魔術師は範囲魔法はあんまりないけど、魔法使いは範囲魔法が多い。でもやっぱりゲームと違い範囲魔法は味方にも当たっちゃうんだね。

 アロー系は手元から各属性を矢の形に見立てて放つ魔法だ。それに対しボルト系は対象の近くにその属性の槍のようなものを生み出して当てる魔法だ。

 アロー系の方が貫通力があり、威力が高い。その代わり目視で避けられる可能性がある。

 ボルト系は相手の近くで発生させる分威力は落ちるし貫通力もほとんどない。その代わり相手の死角に発生させる事ができるので命中力が高いのだ。


「チェイム、ダメだ。危険だからな……ジル君を連れていかれるのも、私は反対なんだ」

「お父様?」

「義兄上は頭が少々アレだからこんな子供を最前線に連れていこうとしているが、普通はありえない。戦い慣れているエルフ達ですら毎日怪我人がでるような場所に、お前をいかせられん。理解しなさい」

「……はい」

「おい、アレとはどういう意味だアレとは」

「はっはっはっ」


 どうやら話は無事についたようだ。チェイムちゃんはしっかりと言えば言いつけを守れる子っぽいかな? 素直すぎる気がするけど。

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
― 新着の感想 ―
[一言] チェイムちゃんは、 「伯父は頭が少々アレな危ないことをする人。」 と学習し、納得したに違いない。
[良い点] チェイムちゃんは読んでてほっこりする
感想一覧
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