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ディストラプション

「お、驚きました……まさかここまでの威力があるとは」


 自分で放った魔法に驚きの表情をする千草。まあアーカム領で植物系の魔物って主にキノコだもんね。あいつらは初期MAPの敵だから、僕ですら弱点を突かなくても一撃で倒せるもん。

 ダンジョンにはヒュージヒューマスポアもいるけど、あれもスポアよりは強いけどエレメンタルウッドマンと比較すれば雑魚だ。わざわざ弱体化の魔法を掛ける必要もない。


「千草、良い魔法を選んだ。素晴らしい判断力だ」


 お父さんからのお褒めの言葉に、ハッと顔を上げる千草。僕は口元に指をもってきて、しーっとする。


「あ、ありがとうございます」

「あそこまで綺麗に魔法が決まると気持ちいいわね。これも千草ちゃんのおかげだわ」


 お母さんも上機嫌である。うん、お母さんの一撃もすごかった。

 未だに倒れ込んだエレメンタルウッドマンは大勢にボコスカ殴られ切られしている。いいのかな? なんかの材料にするんじゃないの?


「いや、驚きました。闇属性のエレメンタルウッドマンは特に魔法防御が高く、属性魔法に対する耐性が高いので倒すのに苦労をするんです。司祭以上の者は救護所に勤めるか、回復のため巡回をさせているので、彼らを呼び出すときもあるくらいなのですが」

「そうだったな。助けになったのなら何よりだ」


 お父さんは言いながらも剣をしまう。


「おいおい、すげーな。めちゃくちゃ柔らかくなってるぞ」

「柔らかいって表現もどうかな? もろくなってるってのが正解じゃねえか?」

「こりゃ乾燥させなくてもそのまま出荷できるんじゃねえか? 見ろよ、ずいぶん軽くなっていやがる」

「魔法の影響ならそのうち抜けるし、案外いい状態なんじゃねえかな」

「便利な魔法があるもんだ。ドルンベル様! ご紹介をお願いしたい!」


 エレメンタルウッドマンをボコってた人達が口々に感想を言う。どうやら無事に倒せたようだ。


「千草さんでしたね? 今の魔法について聞いてもよろしいですか?」

「あ、えっと、今のはプラントディストラプションっていう魔法でして、その、植物を枯らせたりするのに使う魔法なんですが……」

「各属性にある弱体化魔法の一つだな。私も使えるが魔法防御力の高いエレメンタルウッドマンにあれだけの効力が出せるとは驚きだ」


 千草は植物属性の素養が元々あったし、その上で属性結晶も何度か使ったもんね。そりゃ植物属性に素養の無いおじさんと比較したらあかんよ。


「千草だけずるいわ」

「まあまあ」


 僕のお守りに回った千早は残念そうだ。


「闇でさえあそこまで弱体化させられるのであれば、他ではもっと効くだろうな」

「試してみるべきね」

「面白い、オレもやろう」

「弱体化したらぶった切れるかな?」

「刀があれば、あたしも……」


 口々に感想を言う大人達に、千草はタジタジだ。


「気になるのであれば試してみましょう。また頼めるか?」

「かしこまりました! 皆さんは我が隊の後方に控えてください! そちらから魔法をお願いします!」

「弱体化する前の状態を見てみたい。まずは普通に切ってみることにせんか?」

「そうですね。久しぶりですし、私もお付き合いします」


 ウェッジ伯爵がやる気満々だ。お父さんも乗り気らしい。

 千早は羨ましそうにその光景を眺めるだけだ。一応剣は持ってるけど、やっぱ使えない技が多くて歯がゆいらしい。


「えっと、いかがすれば」

「私とウェッジ伯爵で攻撃してみる。前を開けてくれ」

「一応属性看破を頼むわ。ビッシュ、俺らが倒せなさそうなら」

「ああ、魔法戦に切り替える。その時はうまいこと足止めをしてくれ」

「「 了解 」」


 この人たちはコボルド殲滅作戦の時もこんな感じだったのかな? こんな感じだったんだろうな。


「千早、ジルを頼む」

「お任せを」

「俺も外すからな。ついでにこのキラキラも頼むわ」

「キラキラ言うでない。千早、オレのことはいい。オレに何かあってもこいつの責任になるだけだ。ミレニアとジルを見ていなさい」

「分かりました」


 苦笑いをしながらも了承をする千早。

 準備が整ったようなので、お父さんがエルフの代表者っぽい人に合図を送っていた。






「ぬうん!」

「はあっ!」


 現れたエレメンタルウッドマンがこちらに駆け寄って来る中、逆にお父さんとウェッジ伯爵が襲い掛かった。

 二人の攻撃でエレメンタルウッドマンは後方に吹き飛ばされた。


「相変わらず強撃が効く相手だな」

「というか剣技ですと、これ以外に効く技があまりないんですよね」


 お父さんの言う通り、こいつは剣で切りにいく類の魔物ではない。ただでさえ物理攻撃に強い上に、斬撃系の攻撃にめっぽう強いのだ。

 だから植物系の魔物にダメージボーナスの入る斧や、叩きダメージ判定のハンマーやメイスといった武器で攻撃しないとまともにダメージが入らないのである。お父さんの言う強撃というのは、剣でありながら打撃系のダメージも入る剣士のスキルだ。


「なんか普通に物理で押してるんだけど」


 僕の記憶違いだっただろうか。エレメンタルウッドマンって生命力もかなり高いから物理で倒すには時間がかなりかかる魔物だと思ってたのに。


「いやはや、両伯爵はすごいですな」

「楽しそうでいいわね」

「羨ましい」

「えっと、また弱体、させましょうか?」

「まだいいんじゃない?」


 戦うという意味では圧倒している。お父さん達の攻撃は面白い様に命中し、逆に相手からの攻撃は一つも当たっていない。二人とも回避力が高いね。

 エレメンタルウッドマンも腕を振り、足で蹴り、時には棘のようなものを飛ばして攻撃をしているが、それらはすべて空を切る。

 あ、なんかモヤモヤが体を覆い始めた。何かするのかな?


「弱点は?」

「あ、えっと、はい! 属性看破! 地属性っ! 弱点は風です!」

「そうか」


 おじさんは手を前にだして、呪文を唱える。


「アースディストラプション」


 薄緑色の丸い球がおじさんの持つ杖から発射される。先ほど千草が撃ったプラントディストラプションの土バージョンだ。土属性の相手を弱体化させられるね。

 それがお父さんとウェッジ伯爵の背中越しに放たれる。


「せいっ!」

「はあ!」

「躱す素振りくらい見せたらよいものを」


 おじさんは杖で軽く地面を叩くと、おじさんの放ったアースディストラプションが軌道を変えて、高い位置にあるエレメンタルウッドマンの顔を捉える。

 体を覆っていたモヤモヤが消えて、先ほどと同じように細っていく。ただ先ほどと違いまだツヤが残っている。


「ふむ。何かしら魔法の準備をしていたからそっちを相殺してしまったか」

「魔法を相殺?」


 そんな現象があるの?


「ディストラプション系は指定した属性を弱体化ないし消失させる特性がある。魔物や人に放つ際に、相手が魔法を準備していたり何かしらの魔法の武器を所持していた場合、属性が合致していれば表層にでている魔法や魔法の武器を優先的に弱体化させるのだ」

「ひょうそうに……」

「ようは近い場所にあるものから弱らせるということだ」

「ああ、うん。納得」


 つまり相手が何か魔法の準備をしていたら、その属性に合わせて撃てば魔法のみを相殺させることができるってことか。


「魔法の武器を普通の武器にできちゃうんだ? すごいね」

「質の悪いものであれば可能だが完全には無理だがな。ディストラプションの魔法効果が切れた段階で再び魔力が復活する。魔力やその属性を生み出す大元の核を完全に消去させるほどの出力はなかなか出せぬからな」


 逆に粗悪品の魔法の品なら完全に効果を消去できるってことか。


「すごいねー。素早く発動できる人は対魔法師戦で大活躍じゃん」

「……ジル君はなかなか賢いですな。はぁ、ウチの娘にも見習ってもらいたい」


 それは僕の賢さというより、彼女の性格が関わってくるんじゃないかな?

 あ、結局お父さんとウェッジ伯爵の二人で倒しちゃった。

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
― 新着の感想 ―
[気になる点] ファンタジーにこう言うのも無粋だと自分でも思いますが、「ディストラプション」って、ディスラプション(disruption)からちょっと変えて作った造語なんでしょうか?
[一言] >おじさんは手を前にだして、呪文を唱える。 >「アースディストラプション」 >おじさんの放ったウィンドディストラプションが軌道を変えて、 途中で属性変わっちゃってますよ
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