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スリムスポアじゃ弱すぎる

「次に試したいのが、複合属性魔法なんだけど」


 魔術師で覚える魔法はすべて単一属性だ。それに対し魔法使いになると、属性を二つ掛け合わせた魔法を使うことができる。

 魔術師の時でも、右手で炎の魔法、左手で雷の魔法みたいなことはできたけど、これはそういったものではなく、炎と雷の渦巻いた魔法が放てるという意味だ。

 氷風の組み合わせのストームブリザードが特に強力で、賢者になるための必須魔法であるといえる。


「でもゲームと違って、味方も巻き込みそうなんだよなー」


 そう。コマンドバトルだったゲーム時代では、味方を巻き込む心配なんて一つもなかった。

 でも現実では、前衛職の人間は敵と相対している。そこに範囲攻撃魔法なんか飛ばした日には、味方ごと魔法の範囲にすっぽり収まりそうである。非常に使いどころが難しい。


「氷塊が敵に当たりつつ、それが渦巻いてるんだもん。普通に考えてそんなところに立ってられないよね」


 強力な魔法な反面、使いどころの難しい魔法であるともいえる。

 単体に魔術師のボルト系魔法なんかや、僕の考えた氷の蛇で足止めをしてから味方が退避したところに範囲魔法を放つとか、そういった攻撃を考えないといけない。

 現状、前衛になるのは千早だ。そして場合によってはお父さんやお兄ちゃん、シンシアだと思う。

 みんなを巻き込んだ攻撃なんてできるわけがない。


「とりあえず、試してみようかな」


 どちらにせよ、賢者になるためには火山ダンジョンにいってストームブリザードを打ちまくるのが一番の近道だと思うので、どれだけのものなのかを調査したい……したいけど。


「さすがにスリムスポアでは……威力が確認できるまえに死んじゃうよ」


 そう、目の前で炎に飛び込んでいくスリムスポアは子供ボディの僕がナイフみたいなので切り付けても倒せる相手なのだ。とてもじゃないが上位職の攻撃魔法の試し打ちに使える相手ではない。


「地下、行くかなぁ。怖いなぁ」


 このチュートリアルダンジョンだが、地下にもう一つ階層がある。ユージン達が上位職になるために来る場所だ。

 そこでもスリムスポアのように試し打ちができる相手がいるのだが……。


「ちょっと、練習が必要だよね……」


 前もって対策は考えていたけど、それを練習したことがない。

 ちょっと気合を入れないと怖いのである。






 上位職になるためのチュートリアルダンジョン、以前も少しだけ触れたけど、ここの下の階層にある。

 ユージンの奇跡で、ストーリーを進めていくと途中で味方キャラクター達がこれ以上進むのは危険だと忠告をしてきて進めない場所がでてくる。

 そこで『領主様に相談しよう』となって最初の町であるここ、現オルト領の領都に戻ってくるのだ。

 ここで領主に上位職の話を正式に聞いて、それぞれの職業の上位職の書を貰うのである。

 ここでなれる職業は一つだけ、戦士だったら剣士か闘士、魔術師だったら魔法使いか錬金術師といった形だ。

 ちなみにこの上位職ではなく複合職は、王都でのNPCとの会話で開放される。

 上位職と比較すると強いけど、最上位職と比較すると心もとないというなんとも言えない性能である。

 そしてそんな上位種になるためのチュートリアルダンジョンなのだが、中に入るにはボスと戦う必要がある。

 そう、ボス戦である。

 ユージン達と違い上位職にすでになれているのでその分有利に戦える可能性は高いけど、ユージン達はこの段階で4人だ。

 それに対して僕は一人、しかも五歳児の子供ボディ持ちだ。とてもじゃないけどまともに戦ったら勝ち目はない。


「と、いうことで、分身っ!」


 対策として用意した魔法その一、分身である。

 熱と光の屈折を利用して、僕の分身を作る魔法だ!


「うわぁ……」


 僕の目の前にいる、僕の分身っぽいナニカ。

 もやもやぼやぼやの僕の身長と同じくらいの別のものである。顔どころか手足もよくわからないレベルである。


「むりだなー」


 熱と光をと考えたけど、どうにも上手くいかない。扱う魔力の問題なのか、それともそれ以外の要因なのか。とにかくよくわからない存在が出るだけなので、魔法を解除させた。


「ダメでした、次!」


 続いての魔法は、ファイヤーウォールという魔法の改良版、氷の壁である。


「氷の壁っ!」


 巨大な氷の壁が僕の目の前にせり立つ。

 立ち上がる速度もなかなかだし、高さも3メートル近くある。


「成功だっ!」


 分厚くて高い、強固な壁だ。


「ファイヤーアローっ!」


 僕が炎の魔法を放つと、着弾と同時に氷の壁から激しい水蒸気が生まれる。

 着弾した部分はエグレてへこんでいるが、貫通してはいない。

 炎が氷の弱点なのにも関わらずである。


「あ、消えちゃった」


 しかし込めた魔力が少なかったからか、氷の壁は消えてしまった。

 むう、持続時間は短い。


「こおりのーかべー!」


 再びせり出す氷の壁。先ほどよりも持続時間を重視したものだ。

 魔力も先ほどより多めに込めたけど、氷の高さや厚みは見た目的には変わらない。


「ファイヤーアロー」


 先ほどと同じように氷の壁にファイヤーアローを放つ。うん、強度も落ちていないようだ。


「ちょっと寒い」


 氷の壁に囲まれている間、寒いのが難点だけど使い勝手のよさそうな魔法ができた。でもこれ、属性複合の魔法じゃないんだよね。

 

「それと、空間魔法、か」


 そう、敵からの攻撃を回避したり、敵の目前から即座に離脱するための魔法。

 いわゆる瞬間移動だ。


「何か別のもので試したいな」


 普段からゲートの魔法でこっちに移動をしているのは、瞬間移動を試すのが怖いからである。

 ゲートはゲーム時代に町から町に移動するのに使った魔法だから、安心して使えるっていうのもある。

 そんなことを考えていると蝋燭が燃え尽きた。

 瞬間移動は次の機会に試すことにしよう。

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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