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連載開始一年目ということで記念更新になります!
一年目ですよー! もうすぐ書籍も発売ですのでめでたいですよー!
こういうタイミングは外伝とか特別編とか閑話とかそういうのを入れるでしょって?
本編だよ!
「戻りました。奥様、ジルベール様」
「「 戻りました 」」
「ほっほっほっ」
森の周辺調査をしに行っていたシンシア達が、三日目にして帰ってきた。
ジェニファーさんの家を中心に周辺の警戒を行い、森の中で何泊かしてきたのだそうだ。
「ご苦労様でした。クレンディル先生もお手数をおかけしましたわ」
「いや、構いませんぞ。たまには体を動かさんといけませんからな」
先生、この間腰痛めたのに無茶しないでね。
「後ほど文書にて報告をいたしますが、探索範囲に特異的な魔物は発見されず、痕跡も見つけられませんでした」
「そう、それはいい報告だわ」
「また森の中には狼型の魔物の姿をほとんど見ることがなく、小動物や小型の魔物が中心の生態となっておりました」
「例の狼が連れだした個体が戻っていないってことかしら?」
「追跡が困難でしたので原因は不明ですが、私達も同意見です」
「それは、僥倖と言えばいいのかしら。それとも厄介なことになったと嘆けばいいのかしら」
「どうでしょうなぁ。この爺が判断するに、森の巡回はしばらく増やすべきかと思いますがの」
「そうですね……消えた狼型の魔物の追跡は、今からじゃ厳しいかもしれないわね」
「今ならギリギリできるかと思いますが、雨の一つも降られたら追跡不可能になると思います」
「うーん、とりあえずそっちはアーカムが戻り次第の対処ね。向かった方角だけでも確認はできるかしら?」
「できないとは言いませんが、目的の狼の群れではない可能性もありますし、群れが分かれる可能性もあります」
「だいたいでいいわ。皆さんお疲れ様、今日はゆっくり休んでちょうだい。シンシア以外」
「やっぱりそうですよね!」
さっきまでキリっとした表情で報告をしていたシンシアが肩を落とす。
尻尾も下に力なく垂れて頭の上の耳もぺったんこだ。
「シンシア」
「ジルベール様、ただいま戻りました」
「うん。またいってらっしゃい、頑張ってね」
「くうううーーーー、はい、頑張ってまいります」
シンシアは軽く僕をハグする。
「あ! 待ってて!」
僕は部屋に急いで戻り、目的のものを取る。
「シンシア! これ!」
「これは……ですが旦那様に送られるご予定では?」
「3つあるから、1個あげる。怪我しないでほしいけど、もししちゃったら飲んでね」
「ジルベール様……」
感極まったらしく涙ぐんで口元を隠すシンシア。口元隠して尻尾隠せずだよ? ブンブン言ってる。
「ありがたく頂戴いたします」
「いってらっしゃい、気を付けてね」
「かしこまりました」
シンシアは書いていた報告書を千草にまとめるように指示、すぐさま出ていった。
弾丸のような女性である。
「は、早い……」
「さすがシンシア先輩ね」
「少しくらい休憩しても良かったのに」
「ジル様のせいかと」
「ほっほっほっ」
まあもう行ってしまったものはしょうがない。
「あたしの任務も今日までですね」
「ええ。クリスタちゃんもありがとう」
「いえ、ミレニア様は当然ですけど、ジル様の護衛になれるほど、あたしの実力は高くないと改めて教えられました」
クリスタさんが僕達の護衛として屋敷に滞在した理由はただ一つ、きちんと力を持った人間が護衛していますよというポーズだ。ちなみに今回の目的地が森でなければ、クリスタさんは調査チームに加わっていただろう。
通常とは違う強力な魔物がいるかもしれない場所だが、森は視界が悪く暗い。
他の環境よりも魔物の発見がしにくいので、現在の領内における最高戦力で調査に向かったのだ。
実際問題、お母さんも僕も安心安全に生活をしていたので、護衛である彼女の出番はなかった。いたことが仕事なのである。
「ジルちゃんと遊んでもらって、助かったわ」
「いえ、いろいろと遊びを教えてもらいました。それに魔法の訓練も」
「うん! もっと難しいの作るからクリアしに来てね」
「ええ、あたしも腕を上げて挑戦したいわ。今度は遊びにきますね」
「ふふ、そうして頂戴。今日は夕食を一緒に食べましょう?」
「ありがとうございます。頂戴いたします」
千早と千草が戻ったので、僕の護衛はもう必要ないのである。
そしてお母さんだけど、お母さんも千早か千草のどちらかを借りれれば問題ないとのことで、クリスタさんはお役御免となった。
今度はお客様としてご招待するそうだ。それまでにもっと難しい迷路を作れるようになっておかなければならない。
頑張ろう。




