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帰ってきた二人、二人?

 日中はファラッド様と遊びに訓練したりしなかったりだったが、ある程度やることが済んだらしく、お母さんと僕からお手紙を預かって閣下のいるイーリャッハへと帰っていった。

 お母さんの執務と一緒にお勉強をしたり、お母さん達が出かけている隙にチュートリアルダンジョンに潜ったりと忙しい日々を送る僕。

 そんなある日、とうとう千早が帰ってきた。


「ただいま戻りました」

「おかえりなさい、千早ちゃん。クリスタちゃんもいらっしゃい。お久しぶりね」

「はい! お久しぶりです! ミレニア様」

「おかえり千早、怪我はなあい?」

「大丈夫です若様。長らく留守にしてしまい申し訳ありませんでした」

「…………」


 10日どころじゃない、2週間ぶりに千早が帰ってきた。

 一緒にいるのは外壁で一緒に魔法を撃った人だよね? クリスタさんだっけ。ちょっと冷たい感じの目で千早を見てます。どうしたんだろ?


「南側の村をいくつか回ってきました。被害自体はどこも出ておりませんでしたが、代わりに別の問題が発生しておりましたので、ご報告に参りました」

「あらあら、お急ぎの感じかしら?」

「……どう?」


 千早がちらりとクリスタさんを見る。


「そう、ですね。一日二日でどうこうなる話ではないかと思いますが」

「じゃあお風呂に入って汚れをおとしてらっしゃい? クリスタちゃんとはお紅茶でも飲んで、ゆっくりとお話をしたいなと思っていたんです」

「分かりました」

「ありがとうございます」

「ジルちゃん、シンシア。ご案内を」

「はぁい」

「はい。お二人ともこちらに」


 僕はお湯張り係ですね。


「千早ちゃん、ウォーゲン家は分かりますか?」

「はい、奥様」

「これから手紙をしたためますので届けてきてちょうだい」

「かしこまりました」


 とりあえずお風呂にお湯を入れて僕の仕事はおしまいだ。

 あ、今日は使用人用の浴室も? 珍しいね。

 クリスタさんは僕達が普段使う浴室を使い、千早は手紙を届ける前に使用人棟の浴室を使うとのこと。お世話にシンシアが残った。

 使用人用の浴室は普段使ってないけど、掃除はしてあるらしい。


「クリスタさんだっけ。魔法兵の」

「はい、報告をお願いしようと思いまして」

「報告を?」

「クリスタからの報告が必要でした。あたしは、そういうの苦手ですし」

「苦手ですしって……千早? 今までどうしてたのですか?」

「千草がいましたので」


 ……この娘、どうやって父親の不正の証拠を手に入れて提出したのだろうか。






 クリスタさんから報告を聞いたお母さんは、そのあとで千早からも報告を聞いたようだ。

 え? 僕? 聞いてないよ?

 というかあの後夕食までクリスタさんと会わなかったし。

 気になることは千早に聞くのである。


「ちーはや」

「はい、若様」


 夜になり、寝巻に着替えて髪を梳かしている千早のお部屋に突撃である。

 千草はロドリゲスさんのお手伝いだ。

 僕は千早から櫛を借りて、千早の後ろから髪を梳かしてあげる。これが結構好評なのだ。


「お母さんにクリスタさんから、どんなお話だったの?」

「ええとですね、最初と二番目の村は特に何も問題がなかったのですが」

「うん」

「三番目以降の村で、魔物の目撃が増えているとの報告があがっておりまして、調査のために何人かの兵士が見回りを行いました」

「そうだったんだ」


 魔物自体が増えたのかな?


「クリスタ……クリスタ嬢が言うには、森の中で狼の魔物が我が物顔してたなら、それ以外の魔物が追いやられて森から出てきたのではないかと考えました。村の人間も、森で見る魔物が多いと。それで見回りも兼ねて駆除を行ったのですが」


 千早が呼び名を言い直したということは、あの娘は貴族の家の娘なのか。


「実は、例の狼の魔物がまた出まして」

「え? ボス狼?」

「はい」


 こともなげに頷いてるけど、それって結構大ごとだよね?


「大丈夫だったんだ?」

「はい、あたしが倒したのが一体、クリスタ嬢が二体トドメを刺しました」

「おお、すごいね! ん? 一体に二体?」


 外壁の上から魔法をばらまいていた僕と違って、街の外での遭遇戦だ。

 あんな大きな狼が目の前に来たら、僕なんかちびっちゃう。


「遭遇が、三度ほど」

「三度!?」


 あんな狼を引き連れられる魔物との遭遇戦が三回もあったの!?


「千早、怪我はなかったの?」

「連れていた兵に何人か。あたしも怪我をしましたけど、こちらに戻った時に治療兵に治してもらいました」


 つまり怪我をしたっていうことだ。


「若様?」


 あ、手が止まっちゃって。


「千早、怪我しちゃったんだ」

「大丈夫です。もう治りましたから。若様はお優しいですね」

「ん、兵士の人達も大丈夫だった? 誰も死んでない?」

「ええ。村での被害もなかったです。村には魔物除けの薬と結界の両方がありますから」


 あんな化け物レベルの狼が3匹も? 兄弟とかかな?


「一番の功績を上げたのがクリスタ嬢ですし。彼女の口から報告があるべきだと判断しました」

「ああ、なるほど」


 報告が苦手って言ってたけど、それだけが理由じゃないのね。


「……女神様と崇められて、困ってました」

「え? 女神様!?」


 どういうことですか!?

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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