4章12話
『どうだ、少しはこれでマシになってると良いんだが』
「まあ少しはね。あくまで少しは。でもあんまり長持ちはしないと思うわ」
深海の低温環境で冷やすというアイデアは正解。少なくとも動力炉に近いコックピットは当分の間は大丈夫そうだ。ただ、腕部などに供給され続けるエネルギーは変わらない。そしてこのゴーレムをこれだけ長く動かすのも初めての事。どれだけ耐久が持つかは当然誰も把握して等いない。なので
「あれ、右腕がうんとも言わなく・・・」
「ふんっ!」
こうしてできて大きな隙に強力な一撃を容赦なく叩き込まれるのだ。海竜の放った衝撃はまさに海流そのもの、いくら巨体であろうと吹き飛ばすのに難があるはずもない。
「冷却してるはずなのにオーバーヒートするなんてそんなのアリ!?」
『まあ冷やすより加熱の速度が速けりゃそりゃそうなる。で、どうするんだ?奴はもう手加減なんてしてくれそうにないぞ』
ふと計器から目を離すと竜人はいつの間にか本来の竜の姿に戻っていた。どうやら遊びはもう終わりという事らしい。
「その男の言う通り。もう見れる物は大体見てしまったからな」
大顎には既に超高密度の魔力が収縮し始めている。それに対してこちらは防御以外に取れる手段は無し、回避しようにも各部のブースターを吹かせてもとても間に合わないだろう。
「どうやってその状態で喋ってるのか気になるけど、まあ打つ手なしかしら・・・。所長、脱出準備はできてるかしら?」
『やれない事は無いがお前の魔力は既に捕捉されているはずだ。撒く手段が無いなら最悪こちらも纏めて共倒れになるが・・・』
通信の向こうの声は少しの間躊躇う様子を見せる。それもそうだ、今の位置こそ偶然研究所とは逆方向にブレスが発射されるが、気が変わって反対に撃たれたらそれこそ最悪全滅だ。
『お前の正体はともかく、セレスティアの国民と秘密兵器を勝手に拉致しといて死なせたとなると仮にここを生き残れても国が攻撃を受けかねない。準備するから発射される寸前まで何とかその場に留まれ』
「そんな事言われたってねぇ。こっちにできる事なんてもう自爆くらいしかないってのに」
クリスタにする説明は後で考えるとして、炉心から各部に魔力を供給するための弁を順番に閉じ始める。そう、自爆機能自体は搭載されていないが、炉心を稼働させたままエネルギーの行き場を無くしてやれば自ずと大爆発してくれるだろう。まずは機能していない砲門や腕部への供給を遮断。視界はそのままにそれ以外の機能を次々にシャットダウンして行く。
『転送の用意はできた。後はそっちのタイミングで任せたぞ』
「5,4,3,2,1・・・今よ、全部吹き飛ばし・・・」
瞬間、極光が眼前を包む。それがこちらの急激な魔力の高まりに対し速めに放たれたブレスである事を感じ取る前には既に遅く・・・。そして全てが制止した。




