4章10話
「あいたたた・・・。一体なにがおきたのよ」
『ブレスとして打ち出す魔力を滞留させて爆弾にした。そしてゴーレムとお前は吹き飛ばされた後五分ほど気を失っていたってところだな』
「そう、竜は・・・?」
痛む頭を無理矢理動かしながら状況の確認。機体は海中という事もあって然程ダメージは受けていないようだ。ただサーベルを展開した方のスラスターは展開時の熱を冷ます間も無く爆発に巻き込まれたせいかまともに使えなくなっている。機能が一時的に停止していたゴーレムを再起動する。映る視界に敵影は無く、静寂だけが海中に広がっていた。魔力の残量を見ると残り25%といったところ。帰るには十分と言ったところだろうか。
『少なくともお前を襲える場所にはいないな。お前は吹っ飛ばされた後割れ目に落ちて大分深くまで沈んでいる、それを知ってかは分からないがとにかく奴はいないぞ。ところで魔力はもつのか?』
「まあギリギリってところかしら。今上昇してるけど戦闘が起きないなら研究所に戻る事はできると思う」
全ての戦闘機能を切って移動と酸素の生成に割いているが、これなら十分足りるだろう。そうすっかり油断しきっていた時だった。急に圧力を感じた。恐怖でも動揺でもない、まさに圧としか言いようがない感覚。それは久方ぶりに感じたものだった。そう、まさに魔王やってた時に感じたものと同一のそれは・・・。
『そうか。だが待て、随分と小さくなっているが竜の反応がまた現れてる。十分に警戒しろ』
「シルエットだけ見えるけどアレは竜人族ね。あの圧力は尋常じゃない、できるだけこっそり逃げ」
魔力を抑えて潜航を続けるが、突如脳内に声が響く。
「おうおう、よくも我の目を傷つけおって。以前のお前ならあのような真似をせずに堂々と我の首を刎ねるくらいできたろう」
「デミゴッド連中と言い教皇といいいきなり脳内に直接は止めて欲しいわ。いや、この場合は順序が逆ね」
ゴーレムの視界を通さずともその声の主から逃げようとすれば一ひねりにやられるであろうことはわかる。
魔力の貯蔵量が刻一刻と減って行く中でリリスはそれでも焦りを極力抑えて対応する。
「話ができるならブレスなんて撃たずにさっさとこうして話せばよかったのよ。というかあんたみたいな奴と面識なんて無いわ、魔界に竜人なんて見かけないもの」
なんなら眼前に映る長髪に角と尻尾を生やした筋骨隆々の男なんて記憶にある限り一人も出会ったことが無かった。確かに顔も体もいい。だがこのような男は全く知らない。それにこっちの事を知っているように話しかけてくるのもわからない。
『なんだお前、知り合いか?』
と所長は話しかけてくるがそれどころではない。書物でしか読んだことは無いのだが、確か竜になれるタイプの竜人は得てして強大な者だったはずだ。
「知らないわよ。いやまあ先代魔王がどうとか言ってる時点でなんとなく察しはついちゃったけどそれでも変身できるなんて昔は思って無かったもん」
「その間もなく撤退に追い込まれたから当然だ。あの時のお前は強く美しかったが今は・・・弱くなりすぎたな。よもやそのような鉄の塊を纏わなければこの程度の環境ですら活動できないとは」
「いやそりゃそういう種族の能力もあの時は使えたけど今はただのサキュバスよ?というわけでもう帰っていいかしら。貴方と戦うにも魔力切れ、人間たちが盗って行ったあなたの私物はもう手放したでしょ?」
戦う余力はもうこのゴーレムには残されていない。それに生身で戦うにも今の魔力が枯渇しているリリスではとてもじゃないが外の環境に耐える事なんてできないだろう。
「確かにそれはそうだが・・・その鉄塊は見たところ動力を動かしていない様に感じる。ふむ、一つ試してやろう」
「は?」
竜が手をかざすと莫大な量の魔力がゴーレムに注ぎ込まれて行く。一気に機能が回復し、離脱には問題ないくらいの出力は出せるだろう。だが、それでは収まらない。




