4章4話
「はい、これで良いでしょ。さっさと魔力込めてくれるかしら」
「確認する。えーとなになに・・・『私は封を解かれた後もあなた方に危害を加えません』、良し。『私はこの場所に対する破壊行為を行いません』、そもそもここ海中だから破壊されたら全員お陀仏なんだよな。まあ良しとしてやるか、次は・・・」
渡された紙とペンで渋々とだが契約の文言を書かされているリリス。自分で書かせてやってるだけだ言う甘い対応なのだが等のリリスはかなり不服のようだ。
「なになに、『この国から出た時点で全ての魔力が解放される』却下、使える魔術は制限させて貰う。『身柄の解放』却下、これに関しては上の許可がいる。当分はここでのお前の扱いを改善してやるのが関の山だな。『ゴーレムの返還』これは保留させて貰おう、こちらで使えない事は分かったが流石にもう一度運搬するのは難しいだろうな」
「要するにこの海中からは出れないけどある程度の身の自由は保障してくれる感じ?」
「まあ概ねそんなところだな。あとは魔術も封印、この施設内の設備は好きに使わせてやるがくれぐれも外に出ようだなんて考えるなよ? 普通に水圧で潰れて死ぬからな」
一体何メートルくらい海の底なのか皆目見当もつかないが自然の力という物はいつだって脅威なのだ。下手な真似は今は考えない方が良いだろう。
「はいはい、じゃあ案内よろしく。というかさっきから気になってたんだけど人類ってこんなに色々できる種族だったかしら・・・?」
リリスの記憶だと人間は悪魔や天使に魔術や固有の能力で劣り、獣人に肉体で劣り、巨人には全てにおいておとり、竜人族なんてそれ以上だ。というのが悪魔、天使などいわゆる人外と位置付けられる者たちから見た人類と言う種族だ。基本的にくそ雑魚扱いなのだ。無論神々から見たらさらにそのように見えるだろう。だというのに彼らは魔族でも住み着かないような場所に拠点を構えるほどの技術を所持しているではないか。
「まあ数千年と生きれるアンタらからしたら俺たちなんてそりゃあ取るに足らん存在なんだろうが・・・」
「確かにそう思ってる奴は凄く多いと思うけれどそんなに自分の種族を下げるものでも無いと思うの」
自信を持ってと優しく肩を叩くとぺしっとその手はあっけなく払われてしまった。
「だからこそお前らのような奴の注目を得ずに虎視眈々と力を高められるのさ。まあ寿命が短い種族な分必死に進歩するしかないと言えばそれまでなんだが」
「まあどうしたって長期スパンで物事が進むのが私達だからねぇ。身内で戦争してたまに平和が訪れたと思ったら天界と戦争を始める・・・って書くと激動に見えるけどこの間で普通に百年二百年経過するし」
一旦そこで会話を切りしばらく沈黙が訪れるといつの間にか施設の客室と思しき部屋にたどり着いていた。
所長が扉に魔力を通すとそのまま開いた。
「まあ実際こんな感じであっけなく魔力も封じられてるって考えると覇権を握るのは人間だったりするのかも・・・。 で、ここが私の新しい部屋なのかしら」
「ああ、少なくともちゃんとした寝床と風呂と酒、その他必要な物はあるはずだ。当分の間はここで暮してもらうが問題はないか?」
「そうね・・・。ちょっと確認するから待っていてちょうだい」
まずはベッドに飛び込む。ふむ、ダブルサイズのベッド。魔王城で暮していたころの最上級のベッドほどではないが十分心地よい睡眠がとれるものだ。毛布の手触りもふわふわしていて素晴らしい。そして次はトイレだ。ふむ、ちゃんと扉はついているしどのような理屈で流しているのかは知らないが水洗式。形も座ってやるタイプだ。
「ほうほう、中々良いけど一番大事なのはやっぱりお風呂。さてどんなものなのか見せて貰おうじゃない」
「ウキウキな所悪いが普通の一人用のシャワー室だぞ。石鹸も研究所の備品、浴槽も一人用のサイズだ」
「十分よ。大浴場は確かに好きだけれどあんまりそれだけってのも飽きを生んじゃう。だからたまには味変というか・・・ってよくして貰ってこの言い方は失礼ね」
「元が王族ならまあそうだろうな。深海で暮し始めて十年近くの俺からしたら中々に贅沢な悩みとは思うが」
あごに生えた無精ひげを軽くなでながら彼はそう語る。




