4章2話
「とりあえず敷布団にグレードアップ、風呂は監視付きなら入っていいって許可は取れたわね。これなら当分ここで過ごしても耐えられそうだわ」
なにやら趣旨がずれて来ている事は自覚しているが、それは一旦頭の隅に追いやることにしたリリス。待っても助けは来ないのでひとまず生活基盤を良くできるように交渉して行く方にシフトしようとしているだけなのだ。
「暇だし体でも鍛えようかしらねぇ。どうせやる事もないんだし」
それはそれとしてやることも無いので久々に筋肉でも鍛えよう。ある程度の運動はできるがやはり長時間飛べるくらいの体力は欲しい。助けも来なければ周囲に人もいない。ならば一人でできる事をして時間を潰そうじゃないか。ただそれには窮屈な囚人服が邪魔だ、妙に肌に張り付く割に風通しが悪い。それに上下共に縞模様でダサい。魔界でもまだ洒落てるデザインだったのにどうしてこんなのなのだろうか。
「はぁ、胸がすごく蒸れるわ・・・んしょっ。ふう」
抑えられてたバストがブルンとまろび出て窮屈な服から解放される。サラシであと一枚巻いてはいるがそれでも大分楽になった。運動するにはそれ用の服が欲しいが流石に今そんな贅沢は言ってられないだろう。ちょうど腹の周りにも少し肉がついてきたところだ。この際纏めてシェイプアップしようじゃないか。
「ふんっ、ふんっ。もう少しで500・・・!」
スクワットに腕立てに室内ランニングなど色々試していたがそれでも中々体力が尽きないのは流石魔族と言ったところだろうか? 寒い室内なので汗こそ出るがちょうどいい感じに体が温まったところで見張りが来た。
「何をしているのですか?」
「何って・・・筋トレだけど」
腕立てしながらそう答える。何をと言われても食事や服以外差し入れてくれてないならこのくらいしか暇を潰す方法は無いのだ。
「何よ、なにか問題があるってなら言って欲しいのだけれど」
「・・・まあいい、汗を拭いたらこちらに来い。お前に会わせろと上からの命令だ」
「ふぅん。じゃあ向こう向いててくれないかしら? 流石にその気でも無いのにむざむざ異性の前で裸になるほど私のサービス精神は旺盛じゃ無いのよ」
タオルを受け取ってから汗を拭く。なるほど、律儀に向こうを向いている。同性だからなどの理屈を使って来なかった当たり多分彼は男性なのだろう。それならば色仕掛けが効くか・・・と一瞬考えたが流石に魅了の魔眼もろくに機能していないのにそのような事をしても意味はないか。
「ほら、とりあえず魔術封じを改めてかけるならさっさとやりなさい。じゃないと傾国しちゃうわよ?」
ちょっと冗談のつもりで言ったら思ったよりガチガチに魔力を縛られた。かろうじて魔力の流れや相手の体格などを把握できる程度の魔眼くらいの能力が残っているがそれ以上は無理だ。
「あら、王様の前に引き出されると思ってたけどどうやら予想が外れたみたいね。こちらの方はどなたか説明してもらってもよろしいかしら?」
「いいから跪け」
立ったままフレンドリーに話しかけようとしていたが普通に頭を押さえられて膝を床につかされる。魔力と同時に魔族としての膂力も抑えられているのだろうか、ただの人間の男に負けるのはやや不自然だ。
「いいや、顔を上げたままで十分だ。こいつの力は全て無力化してある」
「そうよそうよ、魔眼だってろくに使えないの。顔見て話すくらいいじゃないの」
便乗して抗議すると渋々と言った雰囲気がありありと感じられるオーラを出しながらも解放してくれた。
「よお、先代魔王様。俺は・・・っと悪魔に名乗るのは危険だったな。どんな契約結ばされるかたまったもんじゃない。まあこの研究所の所長とでも思ってくれ。国はセレスティアの教皇が探知できる範囲外、地図に覚えがあるなら察しはつくはずだ」




