4章2話
「なら私態々攫わなくて良かったんじゃないの。あの子だけ攫って満足しなさいよ」
「事故で彼女が馬車から転げ落ちてしまいましたからね。それに確実に我らの拘束が通用しないであろう相手でしたからまあそこは構わないでしょう。その点貴方は悪魔である以上いくらでも拘束の手段がある。この牢なんて聖別済みの素材をふんだんに使用し貴方にも魔力封じを念入りに仕込み・・・」
「ああもうその辺でいいわ。なんかあなた達の方が向こうよりしっかり悪魔の対策してそうね・・・。で、それで結局私に何をさせようっていうのかしら」
向こうが長々と話し始めたのでそれを一旦遮る。このままだといつまで経っても本題が見えてこない。
「そうですね、まずはこちらを見て頂けると」
「映写機? ってよくこんなもの盗めたわね、なんかもう感心するわよ」
そこに映されたのは例の搭乗式巨大ゴーレム。一回動かした後に地下に作られた格納庫に他ならぬリリス本人が運んだはずなのだがどうにかして運び出したらしい。
「言っとくけどそれ、動力炉に致命的な欠陥があるから私に操縦法を聞いたところで意味無いわよ」
「致命的な欠陥?」
「黙って置ける立場じゃないから言ってあげるけど、冷却機能が機能してないのよそれ。まあ急造品ってのもあるんでしょうけど動かした時はコアの中に入ったルナが上手い事やってくれてたから正常に動かせたけど私が乗るだけだと動力炉を制御する人員がいないから普通に暴走して大爆発すると思うけど」
そこまで言うと仮面の人物は耳の部分に手を当ててすっかり黙り込んでしまった。今のリリスに魔力は感じ取れないが動きを見るに恐らく上役と連絡しているのだろう。
「悪魔族は魔術に長けていると聞きますし貴方を動力炉に入れて凍結魔術を使用させ・・・」
「いや私の専門は幻惑とか魅惑よ。淫魔ですもの」
流石にそんなレベルの氷属性魔術を行使できるような魔力はリリスには無いのでそう言うしかなかった。
「いやね、数秒くらいなら私でも冷やせると思うの。あの時はデミゴッドの無尽蔵の魔力があったから成り立ってただけで私だと普通に魔力切れで死ぬわ」
「・・・そうですか。では話せるのはここまでという事で」
「へ? ちょっと待ちなさいよまだ何も聞く事聞いてないんだけど。ねぇ!悪魔相手に嘘をつくとはいい度胸じゃないの、ここを出たら痛い目見せてやるわよ!!」
そんなセリフを完全に無視して仮面の人物はその場を去っていった。言うつもりが最初から無かったのか今与えた情報から察しろという事なのかは分からないがリリスとしては普通に業腹であった。だからと言ってなにか行動できるわけでは無いのだが・・・。
「どうやってあのデカブツを運んだのかは知らないけど、これはちょっと困ったわ。いや流石に探しにくるわよね・・・」
デミゴッド二人は良くも悪くも感情が淡白と言うか薄いというかまたはある意味周囲の物事に対する興味や人間味が薄いところがあるのでそこに関しては正直怪しいところであった。二人ともその場の快楽や楽しみにはすぐに乗るがどこまで情という物が存在しているのかという物が見えてこない。悪魔としていろんな人間や悪魔と色んな意味で絡んできたが流石神の作った兵器と言うべきだろうか。
「まあ一応自力でなんとか脱出できる方法を探そうかしら」
とはいえ魔術も夢魔としてのスキルもろくに使えない現状だと彼女にできる事はほとんどない。もう何回か思考した気がするが大事な事なので仕方ない本当に仕方ない。
「やはり先程考えた様に翼で浮遊しながら天井にでも張り付いておこうかしら」
力強く羽根で空を打ち飛び立つ。うむ、空に飛ぶこと自体は問題ないようだ。部屋の天井はかなり高いのでいきなり頭を打つことも無い。ただ、魔力によるサポートが無いので普通に飛ぶだけでもかなり体力を使うのが難点だ。最近は昔ほど積極的に運動しているわけではないので昔ほど動けない。それだけでも心配要素が増える。少なくとも食事を運んでくるだろう時間まで飛び続けないといけない。
「はぁ、はあ、やっぱ無理・・・。昔はこんなんじゃなかったんだけど」
わずか五分で床にべちっと堕ちる。胸がクッションになっても全身をうてばそれなりに痛い。
「昔は私も丸一日飛んだりできてたのになぁ。やっぱり魔王生活で鈍ったのかしら」
「何をしている? 言っておくが脱獄は不可能だぞ」
「うげっ。いつの間にいたのよ・・・。ってあら美味しそうなご飯じゃない、くれるの?」
どうやら墜落した場面をすでに見られてしまっていたようだ。何ともみっともないがそれよりも彼が持ってきている食料に目が行く。プレートにスープとパンが乗せてあるだけだが今の腹が減った状態ならそれだけでもかなりマシだった。
「死なれても困るとのことで。最低でも衣食住は保証するとの事です」
「だったらせめてちゃんとしたベッドと風呂もお願いしたいのだけれど」




