3章19話
「どうにかする、と一言で言われても困るのう。最善手は先程も言うた通り儂の幽体離脱をサポートする事じゃぞ、正直それ以上の方法を儂は思いつかん。儂の身体さえ最低限守護してくれればそれだけでよいのじゃが」
「だからそれ以前にアレを止めないとどうしようもないってば。今はこっちも相手の攻撃を何とか同系統の魔術で相殺できてるけど貴女が抜けたら普通に押し負けるわよ!」
そう言いながら相手の出している炎や水流に同じ属性をぶつけて対応するも着々とフレイの魔力は消費されておりルナもまた結界の維持で徐々に魔力をすり減らしていた。
「ではどうする? 儂が移動する時間を稼げればそれでよいのじゃがワンチャンに賭けて突貫でもするか? 単純な出力ならばこちらが勝っておるし見る限りじゃと複雑な魔術は使えておらんし何とかなるかもしれぬぞ」
「・・・そういえばデミゴッドって一応神造兵器なんだし自爆とかできたりしないの? いや、別にやれってわけじゃないけどね、距離的に私死ぬだろうし」
「できないとは言わぬが・・・。少なくとも里は消し飛ぶし儂の核に融合しておる神核がどうなるかわからぬ。まあ少なくともお主等にとって喜ばしい結果にならんことだけは儂が保証してやろう」
「そう・・・じゃあ遠慮しておくわね。じゃあこの場にあるものでゴーレムを作ったりはできないの?確か教皇様との会話でそんな事言ってたでしょ?」
そういえばあの会話の時にフレイもいたなと思い返していたがいっちょ試してみる事にした。素材に使えそうなものは少ないが、手持ちの武器などを使えば簡易的なものは作れるだろう。
「ならその弓をよこせ、人型のは作れるじゃろうしついでに火に耐性をつけてやればよいじゃろ」
「嫌よ、これ無くしたらそれなり以上の火力すら出せなくなるもの」
「そうか、ではこの大樹を作り変えるのはどうじゃ?」
「駄目に決まってるでしょ? 最深部がこんな感じなだけで普通にこの里を守る結界の一部なんだもの」
「仕方ない、ではこうしよう」
そういいながら頭から抜いた簪とフレイの矢筒から抜き取った矢を組み合わせてゴーレムを生成する。サイズがサイズなので多少動く刀の刃程度にしかできないがまあこんな物でも多少は役立つだろう。柄は作らずに抜身の刀身だけを作り、できるだけ太刀に形を近づける。取り敢えずリーチと切断できる手段が欲しい。
という訳で出来上がったのがルナの身長の1.5倍はある長さの太刀。
「あなた刀なんて使えるの? どう見ても体のちっこさと刀の大きさが釣り合って無いと思うのだけれど」
「なぁに、神域じゃとこれくらいは普通じゃよ。それに、小さい女子に大きな武器の組み合わせと言うのも中々に映えるじゃろう?」
そう言って太刀を水平に構える。
「さて、では儂はアレを寸断し再生が完了するまでの間に入ろう。それまでの援護は主に任せるぞ」
「あくまでできる範囲だからね!」
そう言って敵に斬りかかるルナの援護にとルーンによる相手の拘束を試みる。何とか茨をルーンで出現させ
て縛り付けるがそれも一瞬で焼き切れるが彼が動くよりもルナが一歩速く手足を切り落とす。
「では儂の身体は任せたぞ!」
その場に顔面から倒れたルナの身体から霊体が抜け出て相手の身体に侵入する。
「わっ! あんた本当に軽いわねぇ」
「じゃろ? そしてほいっ、これで解決じゃ」
そのままいつの間にか再生した指をパチンと鳴らし火を消す。どうやら全て首尾よく行ったようだ。
「あれ、随分あっさりと終わっちゃったけどこれで本当に大丈夫なの?」
拍子抜けだと表情に思いきり出ているフレイに対してサムズアップで答える。
「まあ儂の本領を発揮できる部分じゃからな。いや権能を抱えておらんかったら高度な魔術を行使するなりで何とでもなったのじゃが・・・ひとまずはこれで一件落着。体は残っておるし埋葬してやるとよい」
「そうね、じゃあひとまず帰りましょう」
屈んで地面に転移のルーンを刻み始めるフレイの指先を見ているうちにゴーレムがボロボロと音を立てて崩れている。どうやら時間切れのようで外殻にまとわりついていた鉄などはドロリと溶け、それ以外の部分は単なる土くれになったようだ。
「そうじゃな。被害はゼロ、これで儂の役目も終わりじゃな」
「まあそこは正直長老次第だろうけど、これで多分里から出れると思うわよ。良かったじゃないの」
そう言って魔術が起動しそのまま長老の部屋へと飛んだ。そして目に映ったのは・・・
「なあ、あやつは阿呆なのか聞いても良いか? 数千年分の記憶を頭にいきなりぶち込むなど正気じゃないじゃろ」
「さあ? というか生きてるのかしら」
そこにいたのはルナの記憶を映し出した結晶を頭に刺したまま床に倒れている長老だった。ピクリとも動かないのでぱっと見だと死んでいると取られてもおかしくないだろう。




