3章16話
「ふぁぁ・・・。もう寝てよいかのクリスタ。お主は昼飯時かもしれぬが儂はもう・・・」
「あら、族長に隠れて密談中? 相手はまさかの教皇さんなのね」
「・・・っ! すまん、切るぞ!」
隣にいたフレイに聞かれていたらしくとっさに会話を打ち切った。
「いや、別に報告しようとかじゃないわよ。ただ楽しそうだなって見てただけ」
「そうか・・・。というかお主急に口調が砕けたのう」
「こちらの方がお気に召されるならこちらにしますとも!」
口調がリリスの様に砕けたものになっているのを突くとコロッと初対面の時のような明るい感じに戻してきた。
「いや、お主の好きな方でよい。今のは内密に頼むぞ」
「まあそれは良いですけど、原理は気になるわね」
小悪魔の様に蠱惑的な笑みを浮かべたかと思うと、今度は混ぜてきたようだ。呆れていいのか笑えばいいのかという微妙な顔をしているルナだったが、あまり黙っているような事でもないのでここは話してしまっても問題は無いと判断した。元はこんな時に連絡をよこしてくるクリスタに問題があるのだ、多少長話に花が咲いてしまったとしても責任は向こうに押し付けてしまってもいいだろう。
「原理は儂にも分からぬ。そういう話もさっきしておったしの」
「私がざっと見た感じエルフの魔術体系とは違う・・・いえ多分魔族か天使の物を応用して組み立ててあるのんですかね、まあ複雑だから分かりにくいけどって感じ?」
「うむ、やはり口調は砕けたままにして置いてくれ。会話を続ける気力が湧いてこなくなるのじゃ」
「そう? じゃあ戻すわね」
これならやりやすいとルナは満足していたが、意外にも自分がわからなかった仕組みを少し見ただけである程度当たりをつけていたことには驚いた。
「して、天使や悪魔の術式に見覚えはお主あるのか?」
「んー、まあ一応ね。完璧に分かる訳じゃ無いけど術式の構成は見れば一目でわかるくらいにはわかりやすいと思う」
「うむ・・・。こうしてみると神域で同じデミゴッドや怪物ばかり相手取っておった儂の無知や世間知らずっぷりを見せつけられておるようじゃのう」
顎の下に手を添えてもっと勉強しておいた方が良かったのだろうかとフレイに感心しつつも自分を恥じていたルナだが、その流れを断ち切るように
「ああそうそう、忘れてたけど長老があなたにやらせようとしてる仕事の事だけど・・・」
重要そうな事をなんでもない顔で挟み込んできた。
「確か二日後に話すと長老は言っておった奴じゃな。お主も把握しているのか?」
「まあ一応ね。というかこの里の住民なら誰でも知っている事なのよ、ただ異邦人に説明するのが難しいのと秘匿を強制させる契約魔術の構築に忙しいから二日も時間かけてるだけなんじゃないかしら」
「おいおい話しすぎじゃろうが。お主に秘密を守る気と言うのは存在せんのか」
流石に洗いざらい全部話す奴があるかとフレイを咎めるルナだったが平気な顔でフレイは続ける。
「別に口止めされてる訳じゃ無いしそっちには知っておく権利は当然存在するもの。あなただって一応客人なんだしあんまり退路を無くすってのも後ろめたいし、何よりあなたが怒って私たちを殺しに来たりしたら・・・ね?」
「いや別に殺そうなどと思ってはおらんのじゃが・・・。まあよい、聞こうではないか」
「そんな複雑極めたみたいな顔をしなくたっていいじゃないの。それじゃあ簡潔に説明するわね」
心外であると不服そうな顔をするルナに苦笑いしてそのまま話を始めることにした。
「あそこに大樹が見えるでしょう? 実はあそこの地下にある空間がかなり昔に侵攻してきたセレスティアの教皇と当時の長老が盛大に内部で戦闘した場所でね、不死の炎で焼き払おうとする教皇とそれを死ぬ気で止めて里を守ろうとする長老がそれは長い事争ったらしいのよ」
「なんじゃ、お主はその頃生まれとらんかったのか?」
「私が生まれたのってほんの百五十年前だもの。その時の戦争はそれより五十年は前の話なんだからざっと二百年は前の事よ」
・・・長老が教皇との会話を聞いていたり何かと気にしている様子だった上に過去に争った事は知っていたがまさか原因になっているとまでは思っていなかったルナ、これには苦い顔で閉口。
「話を続けるわ。とにかくそれで時の長老は自分の命と魔術と引き換えにクリスタを撃退してたわけなのよ。凄いでしょ?」
「確かに凄いが・・・それは負けなのではないか? あやつ普通にピンピンしておるぞ」
「あれは不死鳥喰った効果で基本無限に再生できるチートがあるから、それに撃退する前に相手が死にかけるまで追い詰めはしたのよ。・・・ただ」
「ただ?」
そこで一つ溜めた後に一言。
「最後にやけを起こした教皇が盛大に不死の炎をぶっ放してさ、その長老様不死の呪いをもろに喰らっちゃたのよ。そしてまあ火で全身が焼かれては甦るの繰り返しで狂っちゃたのよ。それでいて力量は高いからやむなくあそこは禁足地になりましたとさ。あなたが頼まれることはもうわかったでしょ?」
「つまるところは不死殺しという訳じゃな?」
苦い顔でそう聞くとサムズアップで応答してきた。その時の笑顔はルナ曰く実にぶん殴りたくなるようないい笑顔だったという。




