3章15話
「して、儂は儂ではよう会話を済ませて寝たいのじゃが」
「あら、そちらは夜でしたっけ? 私の記憶ですとそう時差は無かったはずですが」
回線そのままにルナの近況を聞く。数百年は前の記憶だがそう簡単に時間の流れは変わらないはずだが、ルナの声は昼間と言うのにかなり眠そうだ。会話の途中であくびが挟まったり頭をどこかにぶつけてうめき声を出していたりとかなりうとうとしているようだ。
「ちとはしゃぎすぎての、中々眠り時が無かったとだけ言っておくのじゃ」
「へぇ、貴方ってそんなタイプだったんですね」
行くあても無く街をぶらぶらと歩きながらそう聞く。まさにどうでもいい会話といった風に何気ない会話にできているか少々不安だったが会話のキャッチボールは成り立っているようだ。グレースとはそれなりに話は弾んでいた反面子供の見た目で古めかしい言い回しをするルナに少々とっつきづらさを感じていたがこうして話しているとそれも和らいでいるような気がする。
「まあ儂とて騒ぎが嫌いなわけでもないからのう。基本祭りは好いておるし騒ぎ立てるのも好きじゃ、じゃがそれをするほど仲の良い相手がそうおらんと言うだけじゃよ。グレースの奴は仲がいいかと言われると微妙じゃしのう」
「あら、リリスさん曰く仲自体はよろしいそうですが?」
「アヤツの言うことなぞあてにならんという事はお主も知っておるくせに・・・。まあ嫌っておるわけでは無い。ただ互いを友と呼べるほどよく知っておるわけでも無いというだけの間柄じゃよ、お主にもおるじゃろそう言うの」
クリスタ自身それ程仲の良い者がいるわけではないがそのような人物に心当たりはないか少々記憶を巡らせてみる。
「うーん、メイドや騎士の方々・・・それに魔術局の高官などとはそれなりに仲はいいですが確かにそんな感じですね。プライベートを共に過ごしたり語り合ったりするほどの仲でも無いと言いますか。ふむ、確かにいますね。まあ普通に友人はいますけれども」
「ほう、儂にもおるにはおったが色々あって今は行方知らずじゃ。して、そやつはどんなやつなのかのう」
「まずは魔界に数人。まあ今生きてるか定かではありませんけど仲の良い方はいますね。種族は鬼だったりガーゴイルだったり・・・まあ色々と括った方がわかりやすいですね」
「お主仮にも聖職者じゃろうが、天界の奴らと絡んだりはせんかったのか?」
若干呆れと笑みがこぼれており、彼女も興味自体はあるのだろう。このまま話を続けても良いがとりあえず近くに喫茶店が見えたのでそこに入ることにした。
「いらっしゃいまっ!?」
「一名、お忍びですのでお気になさらず」
ウェイトレスがクリスタを見るなり気を動転させかけていたが、そっと唇に指をあててその口を閉ざす。
あくまで忍びで来ているのに騒ぎになってしまってはどうしようもない。現在進行形で道に迷ってしまっているのは確かにそうなのだがクリスタも穏やかな時間を過ごせるのならそれで構わないと思っていた。最悪帰路はそこらにいるものにでも聞けば解決するだろう。激務でこった肩を回してほぐしながら席に座る。いくら不死鳥を食べていようとその血はどんな疲れも自動で回復してくれるような便利な物では無いのだ。
ただし、それを感じるという事はまだ自分が完全に人の理の外に出てはいないとある意味安心させてくれる物でもあるのだ。
「茶店か、神域にもあったのう」
「へぇ、戦ってばかりか男女を侍らせてくんずほぐれつかと思っていましたがそういったお店もあるんですね神域」
「やはりお主は儂等デミゴッドを戦う、殺す、奪うの三拍子しかない野蛮人か何かだと思っておるな?」
あんまりな言われ様に少々イラっと来たのか語気を強めてルナが聞いてくる。こちらからでは表情はお互いに伺えないがムッとした顔をしているのは違いないだろう。
「いえまあ・・・はい」
「うむ、正直は美徳という訳でも無いと儂は思うておるぞ。儂等とて戦闘だけやって生きて行けるほど単純な生態はしておらんわ。まあ創造主が死んだ今どうなっておるかは知らんが少なくとも儂がおった場所は普通に娯楽はあったよ」
「グレースさんは確か侍女を侍らせて色々楽しんだり世話をさせたりしてかなり豪勢に暮らされていたそうですがルナさんはどのように?」
「・・・はぁ、グレースの奴がおった場所が野蛮なだけで儂がおった冥府はお主等の文化とさほど変わらぬよ。間違ってもあやつの言っておる事がデミゴッド全体の生活などと思うでないぞ、絶対じゃからな」
念押しするように言って来る。それはもう絶対に違うと何度も念を押すように言って来る。
「わ、分かりましたよ・・・。ああ、すいませんランチセットを一つ。あとは何か冷たいものを」
「かしこまりました」
あんまり独り言を言い続けるわけにもいかないのでここらで注文しておく。一瞬自分をみてギョッとしていた気もしたが今は些細な事だろう。




