3章14話
「さて・・・次は。治安維持は聖堂騎士達を警吏に少々出向させれば何とか戻りそうだから良しとしましょう。となると飛ばす人員の選考が要りますがそちらは団長に一任。大聖堂などの再建は後に回して市街地の工事を進めさせて・・・」
書類の束を取り出してハンコを押しながら一人ごちる。
「リリスさんは・・・どうしましょうかあの方。放っておいても一人で抜け出しそうな気もするのですよね。いえ通信が完全にシャットアウトされてる以上相当頑強な結界の中かつ相当距離が離れていることは確かなのですが」
空に魔法陣を展開して通信魔術の範囲を限界まで広げても全くそれらしい反応はない。ルナがいるのは結界の性質とジャミングに使われていた魔力の波長から察するに多分エルフの里の中にいるのだろう。
「エルフの結界は昔散々相手取りましたから大体の波長は理解できるんですよね。まあ、普通に高度なのでかなり本気を出さないと突破は困難と言う弱点がある・・・というより攻めたところで対策はされているでしょうしノータッチですかねぇ」
単純にエルフの使うルーン魔術の性質上以前攻め込んだ際に万が一クリスタ自身を解析されていた場合、間違い無く不死殺しやそれに類する道具が用意されているであろうことは想像に易い。そしてその手の物はシンプルであればあるほどよく効くし殺意も高いという事は経験で知っている。それも学習能力の高いエルフだ、大ダメージを食らうのは自分になるのも不思議な話では無いと考える。それならばルナが戻ってくるまで待っておくのが安定する。
「クレア、居ますか?」
「はい、こちらに」
「事務官なども使っていいのでこの書類を各省庁に回しておいてください。私は少々街の様子を見てきますので」
「承知いたしました。連絡があれば伝えます」
山の様に卓上に積まれた書類は使用人や他の人物に任せるとして自分は気晴らしも兼ねて街の様子を見に行くことにした。どうせなら復興の程度を見るついでに民の声も聞いておきたい。
「ふむ・・・。着替えて街に出てみたのは良いですが道に迷いましたね。どうしましょうか」
驚いたことに迷子になっているようだ。自分でも街を歩くのはそういえばかなり久々だったなとしみじみとしながらフラフラと歩いていたらいつの間にやら変な通りに出ていたようだ。まあどうしても時間が押してくる場合は空を飛んで戻ればいいだろう。
「さしあたりどこか食事ができる場所を探しましょうか。ついでに誰か話し相手でもいればいいのですが他の皆は仕事中ですし・・・」
そう考えながらチャンネルを開く。うむ、少々ジャミングは効いているがまあ日常会話に付き合わせる程度なら彼女もさほど文句は言わないだろう。
「して、儂に何の用じゃ?」
「いえ、ただ世間話でもと思いまして。その声の様子だと貴女も大分暇しておられるようですし構わないでしょう? ああ、回線に関してはお気になさらず。エルフが知らない最新の魔術ですので横から聞くにもかなり分析が必要でしょうから」
「ああ、道理で声がはっきり聞こえるわけじゃ。というか最新とかあったんじゃのこの魔術」
「まあ通信魔術は日々更新して行かないと傍受され放題ですからね。だからこうして色々な回線を使い分ける必要があるのですよ」
向こうからは納得したようなしてないような曖昧な返答が返ってくるがまあいいだろう。人間界と神域では色々勝手が違うのはとうの昔に理解している。なんとなくだが、あちらは規模こそとんでもない魔術が使用されている代わりに精密性などはそんなに発展していないと見て良いだろう。
「斯様な面倒な事をせずとも聞かれた相手を消せば問題ないと思うのじゃがな。傍受された情報を基に組み立てられた作戦を真正面から潰すというのも中々悪い物では無いと儂は思うておるぞ」




