三章12話
「あー、クリスタ?今大丈夫か?」
「お久しぶりです。もっと早く連絡してくるとばかり思っていましたが・・・一体どこにいるのですか? 貴女に頼みたい仕事があったというのに・・・」
「まあ野暮用じゃとだけ言っておこうかのう。まあお主が以前攻めた場所の何処かに儂はおるよ。まあ屋敷から攫われ、そのあと場所から脱出した際に拾われたのじゃよ。しかしあまり連絡を入れんのも問題じゃと思っての、こうして許可を得て連絡しとるわけじゃ」
声にかなり圧を感じる。あたかも察してますよと言う感じに加えて言外に何故さっさと報告しなかったなどと言う怒りが含まれているようにも感じとれる。後は処理させるはずの仕事がキャンセルかクリスタ本人が引き受ける事になっているのだろう。
「はぁ・・・。で、リリスさんはどちらに? 貴女と一緒におられるのでしょう? ああ、魔力探知にかなり妨害が入っていますね。あなたの居場所もろくに特定できません」
『この結界は教皇とかそういった魔物からの魔力干渉を攪乱したりするためにあるようなもんだからな。何重にも重ね掛けしてジャミングしたりしてるからな。太古の魔術も禁術も使いまくってるのに効果が無かったらエルフの恥さらしもいいところさ』
どんな芸当を使っているのかはわからないが突然そんな事を送り付けてくる族長。同時に通信回線を並列させるのは初めてなのか、ルナは軽くうめき声を漏らす。
「すまぬ、ちと躓いた。そろそろ切っても良いか?」
「そうですね。あなたの要件が済み次第こちらに戻って来て頂ければ私としては文句はありませんが・・・。ちょっと厄介な事になりまして」
「む? グレースの奴はまだ戻って来ておらんのか? いやあやつがやらかした線も十二分にあるから何とも言えぬが」
外部からの依頼か外交かで魔術学園に留学しているはずだが流石に用事が済めば帰って来ると思っていたルナ。だが現実はどうもそれとは違うようだ。
「あの人なら学園でお友達と遊び惚けていますが? ええ、多少は予測しておりましたが流石にここまで戻ってこないだなんて思ってもませんでしたよ。監視役につけたラフィが何て送って来るか知っていますか? 『今日は学友とパーティをしました、楽しかったです』ですよ!? いや確かに私が管轄している学習院で育った子なのでその手のイベントに飢えているのはわかりますが・・・」
「落ち着け落ち着け。それは夢枕でも何でも使って本人に聞けばええじゃろう? ひとまず本題から話すのじゃ。そろそろ頭が痛い」
余りにもまくし立てて来るので一旦落ち着けと宥める。所々ノイズが走り通信が不安定になって来たので出来るだけ早く終わらせてくれとルナはしれっと思考盗聴している族長のかけて来る負担で脳の魔力回路が軋みを上げ始めていた。さっき派手に暴れてかなり魔力を消費したのも相まってかなりきつい。
「いえ、大したことでは無いのですが実は例のゴーレムが何者かに盗まれてしまったのです」
「流石に冗談じゃと思いたいが・・・アレの運び方を理解しとるのは内部の者だけじゃ。お主も工事に参加した者は知っておるじゃろうし徹底的に口を割らせればええじゃろ」
どうやら格納庫をぶち破ってゴーレムが何処かに運び出されてしまったらしい。それがどうも場所や動かし方を知っているものの犯行らしく今犯人捜しの最中のようだ。少し調べればわかるだろうと雑な口調で吐き捨てるルナだったがことはそう簡単ではないらしい。だが、ルナとしてはそろそろ頭痛が酷くなって来たのでいったん会話を打ち切りたくなって来た。こちらから連絡しといて申し訳ないのは確かにそうなのだが、それはそれというやつである。
「まあそういう事じゃ。すまぬが一旦切るぞ」
「大したことではないと言いましたが普通に由々しき事態とそこは捉える場面では・・・。はぁ、ひとまずこちらの方で捜索しますので進展があったら連絡しますね」
かなり渋々と言った様子だが、平和に会話を終われたようだ。
「ですので、それまでにはセレスティアに帰還するように」
「まあできるだけ善処するよ。ああ、リリスは儂とは別行動と言うかアヤツはアヤツで攫われとるからそっちもできれば探しといてくれ。ではの」
何か言いたげにしているのは感じ取れたが、そろそろ怒られそうだったので一旦通信をシャットダウン。無理矢理因果関係を結び付けるならどこかから儂とリリスがアレを動かしたのを聞きつけた何者かがまずはリリスと自分、そしてゴーレムを個別で運んだのだろうと推測できたがまあ証拠不足じゃと思考の隅に閉まっておくことにした。
「どうだ、バレなかったか? 中々エルフの魔術も・・・」
「次やったらお主の寿命の半分削ってやるから覚悟しておけよ。せめて事前に言わぬかたわけ」
次は無いぞと族長に釘を刺し、ルナはその場に崩れ落ちた。どうやら脳の情報処理がキャパシティオーバーしてしまったようだ。
「それでは失礼します族長。私は彼女を連れ帰って休ませておきますので」
「ああ、その様子だと逃げ出すのは不可能だろうがちゃんと見張っておけよ」
小柄な体をひょいと背負ってそのまま一礼してフレイは執務室を去った。




