3章8話
「よしよし、やはり儂はこうで無くてのう。やはり和装が儂にはシックリくるのじゃ」
約束通り一旦帰還したルナは自分の服を取り戻して着替えていた。腹に刻まれていた紋様の効果も格段に薄くなり魔力の融通もかなり効くようになってルナは喜色満面、上機嫌だ。
「魔術の出力も効率も3倍程度には引き上げれるからの。それに洗われたせいか着心地も良くなっておるのう! どんな洗剤を使っておるのじゃ?」
「いや普通の石鹸に普通に乾かしただけだと思うけどそっか。そっちで使ってるやつとはそりゃあ違うよね」
色々終わったら買い物していく?と軽く言葉を交わした後改めてヒドラを狩りに行くことにした。族長は渋い顔をしていたがこの調子だと終わる気配が見えんと粘った結果かなりあっさりと服と装備を返却してくれた。
「その剣はなに? 随分可愛い大きさね」
「脇差・・・では無く普通の小刀じゃ。護身用に常に忍ばせておくには丁度いいじゃろ?」
ルナが帯の間に差し込んだのは小さな鞘がついた刃渡り15cmほどの小刀。怪しげなオーラも神聖そうな魔力も特に纏っていない普通の金属でできたものだ。フレイが見る限りルーンなども特に刻まれていない。
「確かに普通の小刀だけど・・・相手が相手だしそんな装備で大丈夫なの? もっとこう・・・何か凄い機能があるとかそう言うのじゃなくって?」
「ある訳ないじゃろうそんな都合のいい物は。ただ硬くてよく切れる以上のものでしかないよ。まあ魔術の媒介にするにはうってつけの物なのじゃがな」
「ルーン刻めたりするのかしら? ちょっと貸してみて?」
「む、別に構わぬが壊すなよ?」
指先に魔力を込めてルーンを小刀に刻もうとするので壊さない範囲で貸してみる事にした。ルナ個人としてもどのようにルーンを扱うのか気になっていたところだ。
「とりあえず炎でも纏えるようにすればいい? それとも傷口が塞がらないようにする呪いでも込める? それとも・・・」
「うむ、あくまで一文字で足りる奴を頼むぞ。長々刻める大きさじゃないじゃろ」
「じゃあ投げたら必ず当たるし勝手に戻って来る機能でもつけておくわね。毒でも塗ればいい感じに暗器になると思うよ」
「ふむ・・・とりあえず試してみてもよいか? 丁度よい的も目の前におるしのう」
冗談めかしてルナが小刀を投擲するふりをしてみたら急いでフレイは物陰に隠れる。まさに脱兎の如くだ。
「冗談、冗談じゃから斯様に逃げるでない。流石にやるわけなかろう」
「いや・・・まあそれは分かってるんだけど刃物振りかぶられたら流石に警戒はするよ?」
「ふむ、必中じゃしの。いやまさか確実に心臓を突くなどとは言うまいな?」
「まあある程度はコントロールできるけど基本近くにいる奴の弱点に飛んでいくのが仕様になってるわよ?」
物陰から出てくるとそんな風に補足してくれた。なるほど、確かに便利だが流石に投げたら自動で当たりに行くのはオミットした方がいいのではないかと思うが言わないでおくことにした。
「まあとりあえず残りの狩りを終わらせちゃいましょ。あなたの全力も見せて欲しいしね」
「言っとくが大してことはできぬからな?」
「またまた謙遜しちゃって~。なんかこう魂をズバババっとできたりするんでしょ?」




