3章7話
「と、いう訳でやって来たよ大森林!じゃんじゃん狩っていこう!」
「いやお主テンション乱高下し過ぎじゃろ」
あれから紋の制限を緩めて貰い、そのまま弓矢やトラップを半ば強引に持たされたルナは早速ヒドラを狩猟しに結界の外にフレイと共に出てきていた。
「久々の狩りだし多少はね。あと散々私の事を弱いだとか言ってくれた分ちゃんといいとこ見せないといけないの」
「ふむ・・・。じゃが儂まで弓を持つ必要はあるのか? 普通に要らぬのじゃが」
弓の弦を爪でぴんっと弾きながらルナは不満を垂らしていた。ただでさえ小柄な体にそれなりの大きさの矢筒とかなりの強弓を背負って歩くのは体幹がぐらつくのだ。
「それに儂の衣も返って来とらんではないか。この狩衣悪くは無いが普通に破けるじゃろ、儂の動きじゃと割ともたん気がするのじゃが」
「あれってどう見ても解呪とかそういう魔術仕込んであるし、それ着せちゃったら今かけてある紋の効果とか全部パーになるからダメって族長が言ってたよ」
「なればできるだけ動かない様にするしかないのじゃが・・・。おぬし一人に任せてしまってもよいかの?」
「駄目に決まってるじゃないの。私一人だなんて流石に死んじゃうよ」
むっと眉をひそめながら静かに不満を訴えるフレイにグレースは若干困った顔だ。と言うのも単純な理屈。
「いやある程度全力を出せぬのなら儂も共倒れじゃぞ。いくら何でも儂とて全力は出せぬ状態、千体は魔力も余裕で尽きよう」
「でもこの一回で千体狩れって訳じゃ無いんだからきっと大丈夫だよ。それに魔力はそんなに使わないから!」
「いややるなら一気に全部仕留めてはようリリスの奴を探しに行きたいのじゃが」
「あんな淫魔助ける価値なんて無いと思うけど。しかもデミゴッドの魔力に耐えれるヤツなんて絶対に碌な奴じゃないよ」
「うーむ。まあそれはそうなのじゃが・・・」
早く探しに行きたいと言ったはいいがそこを突かれると中々厳しいとルナは苦笑いだ。頭をポリポリと軽く搔きながら少々前から思っていたことを歩きつつ聞く事にした。
「しかしそのような貧弱な武装でどうやって狩るつもりなのじゃ? ヒドラは一撃で消し飛ばすのがベストじゃのに」
「狙撃ポイントを見つけてタイミングを見て頭を纏めて射抜くのよ。相手に気づかれること無くこっそりと、なおかつ相手が死んだことを認識するより早く正確に殺す。これが一番被害が出ない確実な殺し方だとは思わない?」
「そうじゃとしても連続で上手く行くわけがないしの。やはり一度戻って儂の装備を返して貰う他ないわ」
「ああもう、とりあえず私の腕前を見てから言ってよ!」
そう言ってフレイは矢を番えて狙いを定める。いきなり何を狙っているのかと驚いたが遠くに見えるヒドラが狙いだという事に気づいた。
「いやいや流石に無茶じゃ。やけを起こす出ない」
「はっ!」
ルナが呆れながらだったがフレイは迷いなくその矢を放った。そして風を切りながら一直線に飛翔する矢はあろうことか空中で無数に分裂。普通に軌道を描いて飛んでいたそれは急に制止し、次の瞬間には稲妻のような軌道で天高く昇って行った。
「は?」
「よし、まずは五体」
真紅の雷となって降り注ぐ矢は一つの頭に刺さったかと思うとヒドラの体内から赤い棘が飛び出し自爆の前に木端微塵に吹き飛ばした。それが五連続、魔力の起こりが一瞬見えたが何が起きているのかまでは認識できなかった。
「待て、今お主どんな魔術を使ったのじゃ? お主に魔力の減りは確認できんかったのになんじゃアの矢は、儂はあのような物見た事は無いぞ」
「神域にルーン魔術って無いの? 文字に魔術的な意味を込めて武器とかに刻むだけの簡単な魔術だけど」
「うむ。儂の記憶じゃとそのような物は無かったのう。いや冥界から出ればあったのかもしれんがの」
「それならせっかくだしその弓矢にも刻んであるから使ってみたら? 軽く魔力込めるだけでいいから」
そう言われたので弓を引き魔力を弓矢に流してみる。
「なるほど、弓に刻まれておるのは千里眼の類じゃな? 森の外までよく見える」
「ただの遠視だけどルナが使えば流石に範囲も広がるのね・・・」
感嘆としているフレイを尻目にそのままさらに離れた場所に居るヒドラに向かって矢を放つ。流石に弓の扱いには慣れていないのか、かなり不格好な姿勢だったが問題なく矢は飛んだ。
瞬間、一筋の閃光が空を駆け抜けた。
「ふむ、まあこんなものじゃろうな」
「速すぎて目で追えなかったんだけど。しかも粉砕しちゃってるし」
「周りの木々も多少なぎ倒しておるがそれは些細な事じゃと思ってくれると助かるのう」
「ある程度は想定してたから全然構わないよ。それより次行ってみよっか!」
レッツゴーとノリノリなフレイ。いややっぱり儂の装備回収させろと言いたげなルナの手を引いてそのまま狩りを続けに行くようだ。当然足取りは軽くどこか楽しげだ。
「矢が尽きたら帰って儂の装備を回収しに行くからな! 絶対じゃぞ!」




