3章6話
「まあその時は俺も里の皆も結界の中なら普通に今までと変わらず過ごしていたから特に気にしていなかったんだよ。どうせ倒しても汚染が進むしな」
「ええ、それにその間も定期的に魔族の侵攻やセレスティア教国の進軍もありそちらの対処に人員を裂いていたので・・・」
「セレスティアが侵攻? 儂は今クリスタの奴の下で働いておるがそのような事は聞いとらんかったのう」
それを言うと二人はかなり驚いた顔をしていた。まるでそんな事は考えてもいなかったのだろう。
「そうか、そう言えば神域から来たとばかり思っていたが儂がこの森に振って来る前の話はしておらんかったのう」
「そういえばそこら辺一切聞いてなかったですね私」
「まあこの際それに関してはどうでもいい。お前の記憶からセレスティアの機密でも引っ張り出してやればいいしな」
心の中でクリスタに謝った。すまぬ、巨大ゴーレムなどの兵器の存在や儂がそれ作れることもバレると。そしてそろそろ体に戻れそうだったので霊体を解除して肉体に入った。
「よし、問題なく動くの。それと・・・ほれ、必要なら好きに見るとよい」
「一応割れ物なんだからもっと丁寧によこせておっも!? フレイ、支えてくれ!」
「はい! いや本当に重いですね、手のひらサイズなのにどれだけの質量になっているんでしょうか」
ルナが頭に刺さっていたそれを無造作に抜き取って放った物は彼女の記憶を転写したもの。本来ならそれほどの重さにならないような物だが数千年分の記憶を転写したそれは中々の重さになっているようだ。
「まあ儂の記憶数千年分じゃからの。見る時は千年ごとくらいに分割せんと頭が弾けると思うぞ」
「そ、そうか。重要な記憶だけ抜き取るとかはできねぇのか?」
「うーむ、お主が全部抜き取りおったせいで細かく切るにも切りどころが見つからんのじゃよ」
肩をすくめながらルナはそう答える。
「お主が何年生きとるのかは知らんがわざわざ何百年前の何月何日だなんて一々覚えておらんじゃろう? つまりそういう事じゃよ」
「そうか・・・。で、肝心のヒドラは何とかできるのか? この際セレスティア云々は一旦流すからそこだけ教えてくれ」
そこまで聞いた後本題に話題を戻した族長。体を魔力で強化しているのか記憶はもう軽々と持てているようで表情もやや明るい。膨大な量の資料が手に入って相当気分もいいのだろう。
「何とかして欲しいなら紋の効果を緩めるのじゃ。さしもの儂も流石にお主以下の魔力じゃと被害が出ぬようにするのは無理じゃ」
「私がお手伝いしても無理なのですか? これでも多少は腕の立つ狩人であるという自負はありますよ」
えへんと小ぶりな胸を張るフレイ。見ている分には眼福だが流石に千体以上の相手をするのには心もとないだろう。まだ自分の魔力を十全に使える方がよほど勝算は高い。
「その腕がどの程度か分からぬ、それに千体程度なら魂を殺してやれば一瞬で片をつけれるからの。結果的に儂が一人でやるのが一番になるのじゃよ」
「そうは言うがそれはこちらの不利益につながるんじゃねぇのか?土壇場で攻撃されてはどうにもならんしな」
「はい、それにこの森の地理は私達エルフにしか理解できない様に幻術が施されていますのでどちらにせよ同行はすることになると思います」
「ふむ・・・。お主より腕の立つものはおらんのか? それならば儂の紋を然程緩める必要はあるまい」
この際付いてくるのは構わないがせめてもっと強いエルフはいないのかと聞く。フレイはどう見てもそれなり以上のラインを超えないし街中で自分を見ていたエルフの中にも恐らく彼女より強いエルフはごまんといるだろう。
「お主の魔力は脆弱。拾うてくれたのは感謝しておるがヒドラを狩れるのか? いや儂がエルフの狩りを知らぬのもあるがアレの防護はそれなりに固かったと思うのじゃが」
「えーっとルナさんの想定されている狩りってどのような物なのか参考に教えていただいてもよろしいですか?」
頬を若干引き攣らせてフレイがそんな事を聞いて来たので素直に答える事にした。
「決まっておろう。魔力で消し飛ばすか纏めて斬撃なり打撃なりで屠るだけの簡単なものじゃ」
「えっと罠とか仕掛けたりは為されないんですか? 武器は? 普通は弓矢とか使うと思うんですけど」
「まあ武器はあることにはあるが儂等の武器は基本一振りでヒドラ程度なら消し炭か細切れにできるからのう。魔力で削り殺すのもできる以上それが狩りじゃな」
そこまで言ってフレイのこめかみがピクついていることに気づいた。
「文化というかスケールが違いますから何とも言えませんけど、狩りってのは断じて! そのような雑な物ではないですからね!」
「お、おう。落ち着くのじゃ」
何やら相応にこだわりがあるようでフレイは激昂までは行かないにしても声を荒らげた。ルナも急な事だったので若干たじろいでいる。
「まっ、フレイの気持ちもわかるが場合によってはそのデミゴッドの方に合わせてやってくれ。同行はお前に命令するつもりで元からここに呼んでいるしな」




