三章1話
一方その頃
「のう、儂等は今どうなとっるんじゃ?」
「さあ・・・魔力封じの鎖で丁寧に拘束されてるとしか言いようがないわね」
「グレースに連絡とかは繋がらないの?」
ルナとリリスは突如屋敷に侵入してきた何者かに不意を突かれてあっさり拘束された末にしっかりと魔力を封じる鎖で縛られて乗り物の後ろに投げ込まれて輸送されていたのだ。
「あやつは寮の部屋で寝とったよ。まあ今どうしとるかは話す前に鎖巻かれたから把握できないのじゃがのう」
「腕力で破壊とかできないの? ちんまいけどデミゴッドでしょ?」
「できたらやっておるよ。どうやら相当剛性が高いようじゃの、儂の力でもヒビ一つ入らぬ」
「そう、それなら私がやっても無理そうね。多分丁寧にオリハルコンとかに魔封じの魔術仕込んであるんでしょ」
目隠しをされたりしているわけでは無いので普通にお互いの顔を見て会話することは可能だが、どこにいるのかも何故誘拐されいるのかもわからない。権能さえ使えれば格納庫に置いてあるゴーレムに魂を移して起動などという事も可能だが、魔力が使えなければそれすら不可能じゃ。と苦い顔のルナ。
「せめて脇差の一本でも忍ばせておくべきだったのう・・・。儂も完全に腑抜けておるようじゃ、情けない」
「ふぁあ・・・。まあ何にせよ打つ手は無いわね、とりあえず寝るくらいしかできる事ないわ」
そう言ってリリスは壁に体重を預けてそのまま目を閉じた。完全に睡眠モードだ。淫魔としては夜が絶好の食事タイムなのだがこうなってはお預け、そしてエネルギーを温存しておきたい意図も少なからずあるのだろう。
「もう寝おったなこやつ。儂はまだ寝ようにも気が立って寝れんのじゃが・・・。まあ体も動かせぬし魔術も権能も無い以上寝るしかないのじゃろうな」
遠くにいるグレースを何とかして呼びつけたいものだが、それもできない。頼れるものと言えば出勤してこない事を不審に思ったクリスタが捜索に乗り出してくれることだが、それも当面は期待できないだろう。何せ急に魔力が感知不能になったのだ、探そうにも場所も分からないし最悪国から勝手に逃げ出したなどと思われてしまうかもしれない。
「うーむ、大事にならぬことを祈るばかりじゃな」
そうボソッと呟いてルナもまた瞳を閉じて眠りに落ちて行った。
何時間経っていただろうか。起きて・・・と声が聞こえる。体をゆすられているがどうも違和感がする。寝る前には二人しかいない空間だった上に鎖で拘束されているのにゆすれるのかと思いながらもルナは目を開けた。
「ようやく起きてくれたのですね! どこか痛むところはございませんか?」
「その前に一つ聞いても良いか?」
視界に映ったのは長い金髪を後ろでまとめた碧眼の少女。絹の様に白く艶やかな肌に長くとんがった耳を見る限りエルフだろう。拘束はいつの間にか解かれており、服も着替えさせられていた。上下が分かれた白い布を辛うじて服の様に加工した簡素な物であるが着心地は悪くない。ただサラシが無いので小ぶりとはいえ乳が落ち着かない・・・という事は一旦置いておいて状況確認が優先だ。
「はい、なんでしょうか!」
明朗快活な輝かんばかりの笑顔に対してどこかやりにくさも感じつつだがルナは質問を投げかけた。
「ここがエルフの里である事は理解できた。じゃが、何故儂はここにおる? 昨晩儂は鎖に繋がれて馬車・・・まあ多分馬車じゃの。なんにせよ運ばれておったのじゃ、その終着点がここならば話は分かるが」
「馬車ですか? 馬の死体が無かったので馬車では無いと思いますが・・・私達があなたを発見した時には鎖で巻かれたあなたしか落ちていませんでしたね、それを近くを偶々狩りで通りかかった私が拾って来たという訳です。軽いクレーターができていたので相当高所から落とされたのでしょうね、崖の上でしょうか?」
ちょうど森から出た先には切り立った崖があり、位置関係的にそこから落とされたのだろうというのは彼女の見立てであった。
「ふむ、では儂と一緒に角の生えた娘は落ち取らんかったか? 山羊の角がこう、巻いたような形状の角なのじゃが。種族は淫魔じゃ」
ルナがそう言うとエルフの娘は少々きょとんとしていたが、すぐに笑顔に戻って
「あのような穢れた種族、よしんば倒れていたとしても助けたりしないです!」
「随分とハッキリ言い切るのう・・・。なんじゃ、あやつの同種に何か迷惑でもかけられたのか?」
「私自身は別にこれと言った事は無いのですが・・・種族的に敵対心が昔からあると言いましょうか? まあ貴方一人しか私は見つけれていないですし、多分その方は落ちずにそのまま運ばれたんじゃないですかね」
実際落ちていたのはルナ一人だったらしい。あの高所から魔力も封じられて落とされてよくぐちゃぐちゃになっていないのだなと感心していたようだが、意識が無い事を悟りすぐに保護したらしい。
「そうか・・・リリスはそのまま攫われたのじゃな。では儂はもう行く、助けてくれたことには礼を言わせて貰おう。して、お主名は何という? 儂はルナじゃ」
「私はフレイ! よろしくね!」
そう名乗るエルフの少女の笑顔は本当に綺麗だった。




