2章18話
「よし、これで六割くらいはパワーは戻ったかな? 権能も常時起動状態からオンオフの切り替えは可能にできたし。まあ、魔術をある程度使えるようにした代わりに権能で時間操る時は時間、空間操る時は空間って一々切り替えないといけなくなったけどね」
制服を亜空間から取り出し、テキパキと着替えながら地脈から魔力を絞り終わったグレースはそんな感じで自分の現在のスペックを整理していた。背もすっかり伸び、やれることもかなり増えたためとても満足げな表情である。
「まあ権能はできるだけ起動して体に慣らさないとやれること全く増えないまんまなんだけど・・・まあ別に今後神と戦う事なんてないからいっか。っと、一応元から約束してたことくらいは最低限守るとするかな」
モルジアナの元に戻ると言った時間まであと数分は猶予がある。なのでその間に神の遺骸を回収しよう。神核を時間から空間に切り替え、瘴気が漏れ出ていた場所。そう、あの空間障壁で封じていた場所の中に手を突っ込みちょっと骸骨をパクるだけの簡単な作業である。
「よっと。どれどれ・・・確かこのへんに転がってたはず。あったあった、瘴気もまだここで十分抑えられてるしひとまずは安心かな?」
空間にあけた穴から上半身だけ乗り出すとそのまま件の遺骸をサッと回収して瘴気の状態を確認する。探知魔術を並行して発動し、地下の様子がどうなっているのかを確認。理屈は音波探知と同じように弱めの魔力の波動を放ち、それの反射によって地形や物体の様子を測るという物だ。
「まあ、音波と違って魔力だから詳しくスキャンできたりするんだけどねっと。よしよし、神殺しそのものは遺骸拾った場所からそう離れてない場所にあるね。瘴気が濃すぎて近づいて取り出すのはむりそうだ」
おそらくは神殺しに付与された呪いと殺された神の怨念が混ざりあった結果このような強力な瘴気が生まれているのだろうと思われるが、如何せんグレースの神由来の魔力だと瘴気に打ち消されるのでそれ以上はわからなかった。
「さてさて、じゃあ後はモルジアナ拾って帰るだけか。神殺しはまあ当面放置するしかないとして、後はクリスタから連絡が来るまでは学園生活を楽しませてもらうとするかな」
よっこらせっと骸を背中に担ぎなおしてその場を離れる。一応念のために空間を閉じて外部からの侵入を不可能にし、壁面や地面にぎっしりと接触発動がたの爆破魔術を敷き詰めておいたので、グレースが通ったルートで神殺しを確保する事だけは防げるだろう。
「おーい! 帰るよモルジアナー!」
「用事は終わったの・・・ってひゃあ! なんなのその骸骨!」
「なにって学長に依頼されてた神の遺骸だけど。何に利用するかは知らないけどね」
「それなのに渡しちゃって大丈夫なの? まあクロノスフィアちゃんがいいって言うなら止めないけど」
後はとりとめのないやり取りをしながら地上に繋がるゲートを開き、地上に帰還した。時間にして二時間程度しか経っていないはずなのだがモルジアナにはその三倍くらいに感じていた。まあ軽く死にかけもしたらそうなってもおかしくは無いのだろう。
「んじゃ、私は学長の所言ってくるから君は部屋に戻りなよ。何か言われたらまあ・・・そうだね、セレスティアからの留学生に強制的にサボりに付き合わされたとでも言っといて」
「う、うん。わかった、じゃあそっちも上手くやってねクロノスフィアちゃん」
「勿論。まあ少なくとも私の害にならないようにはしてもらうように話すさ。人の手で神を作るだなんてことやったらどんな恐ろしい事になるのか想像したくも無い」
そういってグレースは手をひらひらと振って去っていった。
「そんなに恐ろしい事には・・・」
ならないし国も魔導機械技術も大きく発展させれるから別にいいんじゃないかな?と言おうとしたが、少し疲れた頭を回して考えるだけでも結論はすぐに出た。
「いや、絶対に戦争に使うだろうしろくな事にはならなさそう。私の国でも多分そうする」
神の炉心の模造品とは言えほぼ無尽蔵に魔力を生成する装置なんてあればいくらでもゴーレムなどの魔導人形や魔砲のエネルギーを供給できるようになるため、国の発展以外の用途、それこそ戦争をひっくり返せるレベルの道具なのだ。それに骨格だけとはいえ神の遺骸がある。その二つが合わされば炉心の小型化さえ完成にこぎつけて勢いそのままに人造デミゴッド完成という寸法になるだろう。
そしてそれが完成したら何に使うかなんてことは火を見るよりも明らか。子供のモルジアナにすら簡単に思いつく事であった。
「おーい! そんなところで立ち止まってどうしたんだ? 次の授業もサボる気?」
「ううんなんでもない! ところでさっきちょっと授業サボっちゃってたんだけどノート見せてくれないかな・・・?」
廊下のど真ん中で長考していては流石に妙に映ったのかは知らないが、友人が話しかけてきたので思考を一時ストップしてそちらに意識をむけることにした。




