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黎明開きしウィッチクラフト  作者: ラキューム
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二章八話

 ズドンズドンと鈍い銃声が何度も何度も響く。たかが一発でグレースの魔力障壁を割れるだなんてとてもじゃないが思ってはいない。だからありったけの中和弾を腹部に叩き込む。

「このっ、離してほしいなぁ!」

 いくら銃弾が通らないとは言え障壁にも限度はある。それに間違ってもラフィに大怪我をさせてはいけないという縛りがグレースの行動を制限していた。先程から撃っている弾幕や収束砲も見かけは派手だが威力は軽く小突かれた程度にとどめてある。

「いいえ、このまま一発だけでもぶち当てて差し上げますのでそのまま動かないで頂けると幸いです」

 そして手を無理矢理引きはがそうとしてもこれだけ強く掴まれていては間違いなく腕ごと引きちぎってしまう。だからグレースは動けない。まさしく絶好にして最後の好機であった。

「やあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 残りの魔力全てを銃とグレースを拘束する手の強化に回し続ける。本当に障壁を割れるかは定かでは無いが一発でもと執念と、絶対に自分が満足したから切り上げようとしているだろうという勝手さへの若干の怒りを込めて最後の中和弾を撃ち放った。

「へぇ、人間の技術も中々どうして・・・」

 ついに障壁を打ち消すことに成功。貴重な中和弾を織り交ぜながら魔力弾と実弾を撃っていたが、実に百発以上は撃ち尽くしただろうか。

「やっと届きました・・・『なんの変哲もないただの銃弾』」

 それは字の如く本当に一切の変哲もない銃弾。しかしそれは確かにグレースの腹に風穴を・・・開けるとは行かなかったが確かに届かせることができた。

「いっ゛!? いったぁ・・・これあくまで演習的な奴なのに腹に突き刺す必要あるかなぁ?」

 流石に腹の中に銃弾が入ったら痛いのか、グレースも苦悶の表情を一瞬浮かべ表情を苦くしている。

「いえ、私もてっきり本当に肉体に通るとは思っていませんでしたので・・・。効くんですね銃弾」


「一応言っておくが私の肌は鋼鉄って訳じゃないからね? そりゃあゼロ距離で臓物にぶっ放されたらそれなりに痛いよ」

 そうは言いつつも無造作に手刀に魔力を纏わせたかと思うとそのまま腹を軽く切り裂き、銃弾を探し当てて引き抜いてしまった。

「何をやっておられるのですか!?」

 当然ラフィはいきなり始まった麻酔も消毒も無しの外科手術モドキに驚愕の声を上げて止めようとするがグレースは何も気にすることも無くかっぴろげた傷口の時間をあっという間に戻して塞いでしまった。

「治癒魔術は満足に使えないけどコレがあるからそう驚くことも無いよ。ほら、どんなに怪我をしようと時を戻せるだけの魔力さえあれば・・・この通り元通りってわけさ。まあ弾丸を魔力に分解して自動修復なんてことも『体が万全なら』できなくはないけど」

 要は残っている体を構成するエーテルを修復に回せばどうとでもなるのだが今の状態だとさらに幼児化が進むから無理という事だそうだ。実際減るのは数日分だそうだが、それでも今のグレースにはそれだけでも復元が遅れるだけ痛手だ。だからこそこうやって時を戻しているのだが・・・

「いや、それなら私が治癒魔術を施せばいいのでは?」  

 当然の意見だった。勝負としてはラフィが一本取った上にグレース負傷で勝った形になるのだが、今はそのような事も気にせずに話している。

「あー、いや人も集まって来てるしちょっと場所変えよう」

 

「それは構いませんが・・・ひゃっ!」

 下方に浮遊感。そしてそのままグレースが手を引いてその穴にラフィを引きずり込んだ。

「よしっ、ここなら大丈夫だろ」


「ここは・・・保健室?」

 唐突に地面に穴が開いたかと思うと、気づけば保健室のベッドの上に落ちていた。何故か服まで戦闘でボロボロになった軽鎧では無く至って普通の制服になっている。空間転移したのは分かるがこっちは理解が及ばないと不思議そうな顔をしているラフィにグレースは得意げに説明を始めた。

「着替えかい? ふふん、それは空間を転移する間に君と私の服と間の空間を開けた後にそのままそれぞれの服を入れ替え・・・」

 左手の人差し指をピンと立ててそう話していたがそれを遮るようにパンパンと手を鳴らす音が聞こえてきた。グレースは話を中断されたことに不満げな顔をしていたがその方向に顔を向けた。

「はいはい、不満げにするのは結構だけどその前に質問。見ない顔だけどアンタ達一体どこから入って来たの?」

 白衣を纏ってモノクルをかけたスレンダー体系に長身のポニーテール。女医のような風貌の女性がカーテンをしゃっと開いたままの体制で質問してきている。そういえば説明をろくに受けていなかったことに気付いたがそれでも恐らく校医か養護教諭であることくらいは理解できている二人。人は集まっていないがそれでも学園の息が思いっきりかかっていそうな存在に事細かく説明することもまたできなくなってしまったようだ。

「ちょっと大きめの落とし穴に引っかかったっていったら信じてくれる?」

 思いっきりすっとぼける事にしたグレース。目を逸らしたりなどと言った情けない真似はせずに表情はあくまでも笑顔を貼り付けたままとぼけている。ラフィはとりあえずグレースにその場は任せる事にして従者らしく沈黙することにしたようだ。

「さっき思いっきり空間がどうとか得意げに話していたのはどこのデミゴッドさんなのかしら? ああ、来た経緯も何を目的にしてるのかも一応把握してるからその辺の説明はいらないわ」

 その後にまるでおまけかのようにサラとだけ名のった彼女はブロンドの髪をかき分けたかと思うとそのまま椅子を持ってきてグレースとラフィが座っているベッドの前に置いて座った。

「デミゴッドとか何とか言われても全く身に覚えがーとか言って通用する雰囲気じゃなさそうですがどうしますかグレース様」


「引き続きすっとぼけるか消し飛ばすかになるけど」

 キュイーンと甲高い音を出しながらグレースは手の上に激しく回転する魔力の球体を生み出す。片手間で生み出された割にはかなり高密度の魔力塊だがまあそれが彼女にとっての普通なのだろう。最低でもこの部屋は粉々にするくらいの威力が込められている事はご愛敬だろう。

「だからあんたの正体も受けた依頼も、そしてそれに素直に従う気もなさげって事も把握してるって言ってるでしょうが。表向きはやたら強いセレスティアの秘密兵器って事になってるけど見る筋が見たら一発で分かるわよ」

 だからとりあえずそれを消しなさいとサラはグレースを諫める。サラとしては普通に養護教諭としてふるまっているのだが、完全に間者か何かと誤解されているようだ。そしてそういえば名乗りもせずに名のったって怪しまれるだけだと気づいたのか、ぽんと手を叩いて自己紹介から始める事にした。

「私はサラ。まあ苗字はわけあって言えないんだけど、とりあえず情報通の養護教諭という事にしといてちょうだい。それに敵対の意志もなければ干渉するつもりも無いし、だからといって学園に味方するつもりも無い。ここまでは分かった?」

 

「それは分かったけど信頼できる材料にはいまいちならないかな。もっと他に何か無いのかい?」

 渦巻いている魔力は消して戦闘態勢は解いたがそれでも信頼はできない様だ。

「そうね・・・じゃあ何が埋まってるのかも、それを掘り出して魔術学園が何がしたいのかも大体把握してるって言えばどうする?」

 なので己の持っている情報のかなり核の部分も話して反応をうかがう事にした。

「当然君の正体を疑うけど」

 

「私も同意です」

 即座に切り返されて肩を落とすサラ。まあ流石にそこまで知っている相手を疑わない理由が無かった。敵意が無い以上攻撃は仕掛けないが警戒はした方が良いとは引き続き考えているのだろう。

「やっぱりそう来るわよねー」

 とほほと実に軽いノリで振舞っているサラ。

「別に、ここには私たち三人しかいないんだし話してくれたっていいと思うんだけど?」

 怪訝そうな顔で見つめるグレース。

(授業サボりになりそうですねコレは・・・)

 入れる余地が無いラフィは時計を眺めていると言うように三者三様だ。このままでは膠着したままだとサラは一石を投じる事にした。

「だって学園全域にありとあらゆる監視術式が張ってあるのだもの、何か話したって即バレて終了よ? ちなみに今話したことは全部既に気取られてることだから」


「そう、怪しい素振り見せてないのに疑われてるのか・・・。なんで?」

 首を傾げるグレースに

「いや、普通想定するでしょ。首輪すら付けれない上位存在なんてまず警戒してかかるのが常識。まあ対空魔術で撃墜できてたって事でかなりあなたの事甘く見てるみたいだけどね。会議で滅茶苦茶嬉しそうに大笑いしてたわよ、これが我らの力!デミゴッド恐れるに足りずだ! なーんてね」

 

「ラフィ、やっぱり君が言ってた通り全部吹っ飛ばした方が速いって思って来たよ」

 弱体化したからと言い訳はしていたが、よもやそこまで舐められているとは。これは身をもってわからせねばとグレースが決意しかけてたが、サラは慌てて制止に入った。

「ああもう何でデミゴッドってこうも好戦的なのかしら・・・。 そんな事しなくてもこの学園は地脈のエネルギー枯渇するだけでほぼ機能失うから適当にエネルギー吸い取るだけで十分でしょうに」

 つまり変な事をせずともグレースが復活に必要な魔力をかき集めるだけでもあらゆる防衛設備が機能停止に追い込めるという訳らしい。

「それに、地脈の収束地点への突入ルートも教えてあげるからとりあえず私に対する詮索はこれ以上なしって事で問題ないわよね?」


「まあ、それが正確だったらこれ以上探るとかそういうのはしない様にするさ。正確ならね?」


 流石にあんまり不義理を通しすぎるのもどうかと思ったのかグレースもひとまず妥協の姿勢を見せる事にしたようだ。

「ええ、ちゃんと比較的安全なルートよ。まあ、それはまた後で教えるとしてとりあえず次の授業にはちゃんと出なさいな。この時間はさっきの演習の怪我の治療とかで誤魔化すから」

 はっとして時計を見ると既に十五分ほど経過している。遅刻はどうしたって免れなさそうだ。

 




 

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