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黎明開きしウィッチクラフト  作者: ラキューム
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二章五話

「うーん・・・。なんというかいつもあっさり行っている事を長々と説明された気がするよ。それも一日五コマをそれに費やすとは私の目をもってしても見抜けなかった・・・」

 ベッドの上にダイブして仰向けになったグレースはげんなりとした様子でそう吐き捨てる。初めて受ける学校での授業という事に内心わくわくしていたのだが、期待とはだいぶ違ったようだ。

「授業の方はどうだったのですか?」

 ラフィも気に召さなかったという事は察していたがいかにも話したいとばかりに視線をおくられていたので少し嘆息しているが聞くことにした。

「実技も授業も無双できるかなって思ってたけどそんな事は無かったよ。一貫して発表も実技の組手もさせて貰えなかったんだ」

 ぶつくさと不満を垂れ流しにするグレース。学長曰くお主が真面目に活躍すると有望な生徒ほど心を折られてしまうなどと言われたので遠巻きに見ている事しかできなかったのだ。

「あんなに簡略化できるガバガバ魔術式を見せられて修正も駄目とは残酷すぎる・・・。それになんなんだあの魔術の撃ち方は! 杖の先から拳サイズの火球を出すだけで満点なんて論外にも程がある!」

 かなりの勢いで怒り心頭と言った様子でまくしたてるグレース。誰が見てもわかるほどキレている。

「そんなに酷かったのですか? いたって普通の魔術学園の授業だと思いますが・・・」

 少々困惑しつつも会話を続けるラフィ。一応寮の一室なので隣に響いていないのかをかなり気にしているようだ。グレースと比べるとかなり声を抑えている。

「はぁ・・・普通は魔術に杖なんて使わないし魔術に長ったらしい呪文もいらないんだよ。魔術なんて要は魔力を集めて属性変化させるだけの作業なんだ。だから練習すれば誰だって手のひらからも目からでも撃てるんだ」


「そういえば教皇様もそうされていますね。手に炎を纏わせて侵入者の腹に貫き手。そのまま上に持ち上げた後侵入者は爆散していたと記憶しています」

 ラフィは確かに思い当たる節があったのでその時の情景も含めて話す。ちなみに大聖堂の中で放ったためかなりの人間が見ていたようだ。

「何だか爆熱なフィンガーのようだけどそれは魔術というより不死鳥パワーと格闘術の合わせ技のようだね。私が言ってるのはこう・・・こんな感じで手の上に光球を出せるくらい普通だってこと」

 グレースは無造作に掌を上に向けると魔力を収集して光の玉を作り出した。ラフィにはそれがどれだけ凄いのかは分からないが含まれる魔力の密度はすさまじい事だけは分かる。

「ふむ。では普通なのか否かは周りの方々に聞いてみれば良いかと。私はあくまで素人なのでそれ以上の答えは出しかねます」


「それはそうなんだけどさぁ・・・」

 それ自体は脳内で理解できているがだからと言って周りには見た目のせいかかなり子供扱いをされており、まともに取り合ってくれる人がいなかったのだ。甘やかされたりちやほやされるのは好きなので、好意的に接されているからこそキレる事もそうそうできないのだ。

「私もそう人付き合いが多いという訳ではありませんが、学生ならば周囲の学友に聞くことは普通の事。そして任務で来ているとはいえあなたも今は学生なのですから」

 だから冷静になれとグレースを諭すラフィ。

「うーん、まあ私も言いたいこと言ってすっきりしたからいいか」

 冷静になったグレースはそう言ってその日は就寝した。くぅくぅと寝息をあげて眠っているグレースは見るだけなら可憐な子供であるとラフィは毛布を掛けてあげながら表情を柔らかくする。

「しかし・・・こう寝ている姿だけは年相応にしか見えませんね。これは確かに可愛がりたくもなる気持ちもわかります」

 毛布をかけながらそっと髪を口元からどかす。あどけない寝顔は見ているだけで癒されると言っても過言ではない。ラフィ視点だとグレースの精神年齢は肉体年齢に反してかなり幼げに見えるが実際人に換算するとそれくらいの年齢なのかもしれない。または肉体年齢に精神も引っ張られているのかだろうか。

「さて・・・明日のお洋服などを用意したら私も休みましょう」

 本音を言うと少々デミゴッド関連のブツとやらを下調べに行きたいラフィだったが明らかに危険な代物なので控えておくことにした。流石に見えている危険地帯に一人で行くほど身の程知らずでも死にたがりでは無いのだ。


「・・・トイレ」

 四時間ほど経っただろうか、就寝した時間が22時頃。ちょうど異世界だと丑三つ時と言われる時間だ。寝ぼけまなこで布団から起き上がるグレース。もぞもぞとした動きでベッドから降りて部屋の外に出る。隣のベッドで寝ているラフィを起こさない様にそろりそろりと部屋から出ていく。本当なら同じ学生が同室になるのがルールだが、グレースは急な編入だったので同室にできる生徒がいなかったが故の処置である。

「ふぅ、スッキリした。・・・ちょっと調べ物をしてから寝るか」

 トイレから出たはいいがそれはそれとして一つ気がかりな事があったグレース。魔力を使っては勘づかれる可能性があるので一旦時間を止めてから行動することにした。そして時を止めたグレースは一旦自室に戻った後運動着に着替えて窓から外に出た。流石に靴は無かったので二センチほど地面から浮遊している。

「確か反応的にはこのあたりのはずなんだけどな。件のデミゴッド関連のブツとやらの魔力は感じ取れるし」

ふよふよと地面から浮きながら横にスライドしながら移動しているグレース。魔力を辿りながら件のデミゴッド関連の何かに向かっている。

「これは・・・少なくとも武器じゃないな。私には一体全体見当がつかないし、生物かどうかもはっきりしないなぁ。ちょっと時を動かしてみるか」

 指をパチンと鳴らして止めていた時を再び動かすグレース。件の落下物はかなり地下深くに埋まっているようで、調査するために学生が堀った良い感じの洞窟があるようだ。時を動かすとその途端に瘴気のようによどんだ魔力が入り口から少しではあるが噴出し始める。

「うおっ!? びっくりした・・・。これは絶対ろくなもんじゃないな」

 グレースが近づいた途端に勢いを増した瘴気に対してとっさに障壁を展開してそれを防いだ。速く展開したとはいえ若干手についてしまったそれは一瞬で突き出した左手を黒く染めて朽ち果てさせるほどの物。それも痛みすら感じる間もなくだ。

「しまった、これは私じゃなくてルナが来てた方が良かったかも」

 とりあえず左の手首をスパッと手刀で切り落とし、時を巻き戻すことで瞬時に再生。かなりごっそり魔力を食われてしまったがいつまでも片手を使えない事はかなり危険な状況だ。そしてデミゴッドの身体を瞬時に侵す瘴気なんて危険な物に触れられないと全身に魔力で壁を張り巡らせる。

「ルナなら多分まだ耐性合ったはずなんだよな。曲がりなりにも私と違って大した弱体化をしてないデミゴッドだからこんな体たらくじゃなかったかも」

 コツコツと洞窟を下りながらつぶやく。かるく火球を浮かべて光源にしながら深い闇の穴へと足を進めてゆくのであった。


 

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