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黎明開きしウィッチクラフト  作者: ラキューム
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二章三話

「グレース様、起きてください。そろそろ港に着きますよ」

 しばらく時が過ぎ、船はとうとう東大陸に着こうとしていた。一足先に起きて荷物を纏めたりと準備を行っていたラフィはまだ眠っていたグレースを揺り起こしていた。ちなみにラフィはメイド服では無く動きやすい革のズボンとシャツに着替えている。イメージとしては探検家といった感じなのだ。

「んぁ・・・。おはようラフィ。もう着くのかい?もうそろそろ船旅を楽しんでおきたかったんだけれど」

 寝ぼけ眼のグレースは少しだるそうに返事する。ラフィは起き上がったグレースの顔を温めたタオルで拭き、髪を櫛で梳かしたりと軽く身支度を整えていた。グレースも普通に受け入れているのを見るにそういった世話を受けることには慣れているのだろう。

「おはようございます。お着替えになられたら朝食。その後は陸路で学園に向かう手筈となっております」


「ふぅん。学園までは馬車か何かはあるのかい?」

 伊達に戦士をやっているわけじゃないようでグレースはすぐに目覚める。そしていつもの平坦な声でそう尋ねた。

「はい、確かに馬車はありますが転入日まではあと僅か。中々急ぎで行かねば間に合わないくらいではありますね」

 魔術学園はそれなりに内陸部にあるようで、港からだと馬車で一週間は軽くかかるようだ。ちなみに入学まであと五日しかないため、かなり急ぐ必要があるらしい。

「そうなんだ。じゃあ可能な限り馬車で移動して残りは私が君を担いで移動しよう」


「せめて飛行にしてくださると助かります。いえ、流石にあまり揺らされると人の身としてはきついですから」

 限られた魔力を一気に消費することになるが空路を行くことをかなり必死な顔で訴えられると流石にグレースも頷かざるをえなかった。

「まあ確かに空路なら二日以上は短縮できる・・・というか時止めて進めばゼロ日だからね。わかった。四日くらいは普通に陸路で観光しながら動こう」


「教材以外の買い物も必要ですからね」

 そういう事になった。早速朝食を摂ると下船までの間をゆるりと過ごした。そして、下船した時にはしばらく時間がたち空は既に日が傾いている。

だが、港町だけあってかなりの賑わいを見せていた。

「おおっ、これは良さげな街だ。美味しそうな匂いに酒の香り・・・ちょっと飲んでから出発するのってありかな?」


「その風体で酒が買えるのなら全然アリですが・・・。まあ私が買っておきますので飲むのは後程にされてはいかがでしょうか? 今は腹ごしらえと今夜の宿の確保です」

 残念そうに肩を落とすグレースの手を引きながらラフィはひとまず今晩の寝床を探すべく街を歩き始めることにした。初めて見る景色と初めて来る他国と言うシチュエーションにラフィも仕事という事は頭に置いておきながらも足取りは軽く表情には楽し気な笑みが浮かんでいる。

「・・・こうしてみると君は根っからのメイドと言うよりは年頃の少女なんだね。いい意味で年相応って感じがするよ」

 その表情を見るとグレースも酒を買えない悲しさを忘れて楽しくなって来る。そして年長者として微笑ましくもあった。

「これでも成人してさほど経っておりませんので。職に就いてまだ一年と少しの新人メイドですから」

 彼女は自分の中だと完璧にやれているつもりではあるが、やはりまだまだ未熟だと語った。

「いやいや、私からしたらどこが至らないのかわからないくらいに完璧だよ。新人だなんて言われても信じられないくらいさ」

 実際にラフィは様々な手続きやグレースの身の回りの世話を良くしてくれていたため、どこにも非の打ちどころはなかった。神域にいた時の侍女と違い魔力で解決ができないという点を除けば引けを取らないだろう。

「しかしメイド道としてはまだまだ未熟。更なる精進が必要だとメイド長が言っておられたので」

 噂によるとメイド長は一人であの大聖堂を隅から隅まで掃除してなお他の家事も完璧にこなす超人だそうな。それも時でも止めたかのような速度なのだそうだ。

「メイド長何者なのさ・・・。私以外に時間止めれる奴いるの?」

 ナイフを投げたりするんだろうかと想像を巡らせていたグレースだったが、どうやら物凄く速いだけで実際に時間を止めているわけではないようだ。

「単なる超人的な身体能力に肉体強化魔術を重ね掛けした賜物なのだそうです」

 これにはもう流石のグレースも呆れるしかなかった。

「たまに思うけどなんかデミゴッドにも並ぶレベルで人間離れしてる人間いるよね」

 

「ふふっ、何事にも例外は付き物だと言うじゃないですか。デミゴッドにもピンキリな様に人間もそうだと思いますよ。まあ私はちょっとした兵士くらいにしか戦えないので戦闘はグレース様に任せるしかないのですが」

 薄く微笑んだ彼女はそう言って見つけ出した宿に入って行った。

「まあ戦闘はそりゃあ私が担当するけど・・・。君もなんだかんだ実力詐欺してないかい?」

 

「まさか、私は普通のメイドですよ。戦闘はあくまで護衛や護身用であり本職には歯が立ちません」

 あくまでプロでは無いと言い張るラフィ。まあどうつついてもこういった反応しか期待できないと悟ったグレースはその辺りで諦めてさっさと風呂に入ることにしたようだ。

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