超硬魔人ヴィマナ・ティタン
「着地? まあ何とかしてあげるけど一体どうするって言うのよ。流石にアンタは特性的に大規模破壊とかはできないでしょ? グレースなら多分空間ごと振動させて砕いたり時間を超加速させて相手を塵にしたりと色々あるだろうけど、ルナの場合は相手を殺すのに特化し過ぎてないかしら」
「まあ見ておれ。魂を操る技は何も殺しだけに特化しておるわけでは無いのじゃぞ?」
ふわりと儂らが降り立ったのはエレノア地下最深部。ちょうど全てにアグネアを統括し、制御を行っている魔導式が展開されておる施設。ここじゃ、別にここでなくとも何とでもなったがここが一番いい。
「視よ、先程束ねた魂を集めて凝縮したものがこれじゃ。儂の権能を駆動させておる物とは別に片手間で集めておいた」
「へぇ、何人分?」
多少は驚くを期待しておったのじゃが、リリスは変わらず余裕そうな表情。なるほど、人死に自体には何ら抵抗はないらしい。まあ良い、権能を使えるのは残り8分。十分に時間に余裕はあるが早う終わらせるに損は無い。
「百人分じゃ。無論初期化は済んでおるし純度100パーの純粋なる魂。儂の支配下にあるこれをヴィマナにぶち込む」
「破壊力に変えてぶっ壊すとかそんな感じにしないの?」
リリスは訳が分からないと首を傾げておるが当然そのような勿体ない事はせぬ。破壊力に変えるよりよい方法があるならばそうするのが良いじゃろう。
「なぁに、せっかく利用できそうなものがあるのじゃ。壊さず鹵獲できるならそれに越したことはないじゃろ? お主はそこで見蕩れておればよい」
儂は不敵に微笑むとセーブしておいた権能を本格的に起動する。普通に使えば10分だがこう全開で使えばやはりそう長く持ちはせんか。持って四分が関の山、じゃがそれで釣りがくる程度にはプラスは大きい。
「『魂魄付着術式・九十九人形』!!」
残る余力の半分をつぎ込んで術式を起動。アグネアに魔力を送っている魔力炉心に魂を投入しそのまま固着させる。うむ、事前に漂泊しておいただけあってすぐに馴染む。これならば問題なく次の段階に映れるじゃろう。
「なるほど、アグネアとその炉心を丸ごと再利用してゴーレムを作るのね?」
「うむ。それも都市一つ分の威容。敵の決戦兵器を奪って己の物とする方がクリスタの奴の利にもなるじゃろう? まあ念のためにアグネアの発射権は儂に移行しておくがの」
「ふぅん、あくまで兵器は自分で使うってわけ?」
ニヨニヨといやらしく笑って集中している儂の頬をツンツンと突いてくるリリス。うっとうしくてしようがないがまあ答えてやるくらい構わぬか。
「なぁに、万一儂らを消そうでもされたら厄介じゃろ? グレースが止めるのに相当な代償を支払っとるようなもの、儂の肉体が残るかすら怪しいからのう。そんなものを自由に使わせてやるほど馬鹿にはなれんよ」
「・・・てっきりグレースみたいに『その時になったら全部殺せば良いし、何なら時間戻せば解決さ』みたいな事言うと思ってたわ。だって頭デミゴッドだし」
なにやら種族名を思いっきり蔑称として使われたような気がするがスルー。気に留めたところでどうしようもない事じゃ。
「儂の持っとる権能はそのように便利な物ではないのじゃ。できる事はやっておかねば後で痛い目見る上にやり直しも効かぬ、つくづく不便な能力じゃよ。おっ、胴体部分の変形がそろそろ終わるぞ。後は頭部を作ればひとまず浮上は可能じゃ」
「いや、そんな感じで気軽に魔導生物作れるなら結構便利だと思うわよ? まあ確かに今のところはグレース程バランスブレイカーじゃないけど」
発動してみて初めて分かったが、儂の権能は肉体が無くとも己が存在できるという事こそが本質らしい。そういう意味ではアヤツにも勝るとも劣らないとは思うが、わざわざ肉体を捨てようとも思わぬから試すことは恐らくないじゃろう。
「それならいくつか家事用に拵えてみるか? まあ一個につき一人は殺すことになるのじゃが」
「・・・うん、バレたらクリスタにしょっ引かれるわね。遠慮しておくわ」
うむ、敵を対象にするなら兎も角ご近所をむやみに殺す趣味は無いからのう。その気になれば無垢な魂を創造することもできはするが中々に時間がかかる上に十中八九神域の輩に気取られてしまうじゃろう。せっかく自由に楽しくやれているのじゃからできるだけ平穏は守りたいものじゃ。
「手足はそこらの瓦礫で補填するぞ、それで構わぬな?」
「ええ、別にそれは良いんだけどあんた構造とかちゃんと・・・ふぁぁ!?」
「浮上開始!!」
リリスが何かを言おうとしておる最中に儂は術式を起動させ、形成し直し胴と顔、そして股関節から大腿部まで作り上げてゴーレムの背部にある余剰魔力排出孔を改造したスラスターに魔力信号を送り点火。そのまま周囲の瓦礫を手足として形成しながら地上へと上昇してゆく。
「うむ、こやつの名はヴィマナ・ティタン。今名付けたが割と悪るうないじゃろ?」
「そんな事よりそろそろ地上よ!」
そして金属の巨人は地上へと降り立った。そして瓦礫でできた両腕両脚は着地の衝撃であっけなく崩壊。支えを失ったヴィマナ・ティタンは再び奈落の底へとフリーフォールして行くのじゃった・・・。
「ってわけがわからぬぞぉぉぉぉぉ!? 何故立たぬのじゃぁぁぁぁぁぁ!?」
「そりゃあ内部骨格無しでまともに動くわけないでしょぉぉぉぉぉぉ!?」




