神の力をその身に宿し、巡り巡ってロリの道
どうやら私はB~Dに至るまで全員が元の時空に帰って行ったようだ。この事に関してはその内ルナたちに問い詰められそうだが、今は目先の問題に目を向けたいと思う。
「何せ、今からやるのは一本消すだけでもそれなりに消耗する物体を連続で十本消し去らないといけないからねぇ。そりゃあ骨も折れる・・・どころの代償じゃあすまないだろう」
そう、できるだけ私も消耗は抑えて行動していたり小休止もはさんでいたがそれでもなおキツそうなのだ。やはり権能が不完全な事が大きいだろう。
「せめて他の私みたいにリリスの魔力が体内にあったりしたら大分マシだったんだろうけど、流石にそうもいかないしうだうだ言っても仕方ない。やるか!」
そう言って自分に気合を入れて私は上空へと急上昇。無数の魔法陣を展開することも、幻惑を使う事も、シンプルに権能を使う事も、自分の体内にアグネアを格納することもせずにただただ上昇する。
「さて、位置はこの辺りで着弾タイミングは全弾ほぼ同時。これを何とかしないとならない」
そして他のグレースがやった方法をやるのは不可能。できなくもないが多数の殲滅には圧倒的に向いていないし五回持たずに疲労も魔力も限界になってしまう。流石にそれでは駄目だ。
「だから私の時を消費してその年月分の魔力リソースを確保。後はそのリソースで権能を一時的に完全開放すれば・・・」
まあ実際に数年間分の魔力を前借りするのではなく、自分の外見年齢からマイナスした分の年数の魔力を得れると言った感じなのだけれど。例えば今の外見年齢が大体十七歳くらいなのでその年齢を消費して魔力を生み出すと言った感じだ。用は若返って超火力も出せるというお手軽最終手段・・・なのだがばっちりかなりの代償も存在する。
「私が可愛い幼女になって数日間体の痛みでのたうち回るのと引き換えに事態を解決できるって訳だ」
そう、つまりは私の身体にとんでもない負荷がかかるのだ。本来の年齢を考えるとそれはもう奇天烈で鮮烈で炸裂的な物になるだろうが、外見年齢ならまあ自身のスペックをさほど落とさずに利用できる代わりに体の痛み程度で済むが、実年齢消費は最悪一年分の過ごした時間全てを消費するという事になるかもしれないので断念したし、これからもそちらを試すことは無いだろう。
「さて、じゃあまずは私の外見を構成するエーテルを純粋魔力に変換し体内の神核と接続。時の権能を叩き起こすところから始めよう」
一旦時間を停止し、細かい工程を慎重に行ってゆく。そして行うのは肉体を常に巻き戻して回復しつつ、エーテルを魔力に構成しなおしていく。そう、肉体を構成するエーテルを無理やり魔力に変換しているので当然肉体にダメージはかかるので、ダメージが入る前に巻き戻しておかないと到底体がもたないのだ。
「そして使用する肉体年齢を現実時間として置き換え魔力をさらに増幅。それを神核とパスを直結させて権能を無理矢理だけどフルスペックで起動、同時に余剰魔力で私の身体に合うように神核を最適化しつつ回復を継続。そしてそれと同時に空間権能も最大稼働。こちらもまたアジャストする」
外見年齢が十七歳なので権能の起動にそれぞれ四年分ずつ。残った二年分の魔力は権能を許容する魔力外殻を一時的に形成し体の負担を軽減するために利用する。一応完全開放したのは良いがそれでも間違いなく私の身体にはとんでもない負担はかかるだろうから。
「・・・魔術式構築、肉体変化実行、権能完全起動!!『疑似神核・クロノスフィア』!」
父の真似事でしかなかった権能の使用を上手く自分の魔術式として調整し直して一時的にだが私自身の物として利用する。そして術式の完成と共に止まっていた時が再び動き始めると周囲一帯に天を揺るがすほどの爆音と強烈な閃光。そして空間には紫電が迸りその圧倒的な熱量は何重にも重ねられたグレースの外殻をも貫通してその皮膚をチリチリと焦がしてゆく。
「あの魔力は・・・。そうかグレースめ、権能を儂より先にものにするとは思っておらんじゃったぞ」
そして所変わって撤退しながら雑兵を千切っては投げ、魔力放射で周囲を焼き尽くしながらヴィマーナの破壊に勤しんでいたルナもまたグレースの変異を察知していたようだ。同じ初期ロットのデミゴッドと言うのも多少はあるだろうが、ほぼ神と変わらぬと言っても遜色ないレベルの魔力散布量及びエーテルによる大気の神域化現象を感じ取れるものなら簡単に分かる範囲の物事ではあろう。当然隣にいるリリスも気づいているようだが、獰猛な笑みを浮かべているルナとは違い冷や汗を浮かべているようだ。表情からもいつもの余裕が消えて本気で焦っているのが見て取れる。
「いやいやいやいや、あれはマズいわよ! いったい何をリソースにぶち込んだのかは知らないいけど、あんなの間違いなく神域にも魔界にも察知される! アンタ達一応敗戦して神域を脱出した身なのに何でこうも加減を知らないのよ」
とはいえリリスにもグレースがあそこまで強引に神核を使わないといけないほどに危険な事態という事は理解できているため、本気で止めに行くわけでは・・・いや、正確には止めたところで止められないしリリスもまた人にはあまり知られたくない事情を抱えているので迂闊に近寄って多方面に気取られるのは避けたい立場なのだ。
「なるほど・・・。これは凄い、父上はこれをずっと使いこなしていたのか? いや、使いこなすも何もない、これがデフォルト、普通だったんだ。いやぁ、ほんとに神ってどこまでもスケールが大きいんだな・・・っと、何時までも浸ってはいられないや。とっとと排除しないとこの状態も長くは持たない」
構築中は少なくとも三十分は持つだろうなとかなり甘く見積もっていたが、現実はそう甘いわけがなく、持って五分~三分程度という有様だ。華やかな美少女モードを捨ててかわいい美幼女モードになったのにも関わらずこの燃費の悪さ。
やはり私の体で無理やり権能をフル出力で使うとなると、いくら負担を限界まで減らしてもこれが限度のようだ。
「かと言って権能がなぜ普段は一部しか禄に使えないのかもわからない。まあ、そうこうしてる間にも体がきしむ音がするよ」
軋むどころではない、細胞が壊死していくのを強引に時間逆行を発動させて常に巻き戻しながら行っている荒業なので激痛が常に走っているのとさほど変わらない。
「同時に両方使うのは流石に少しきついけど・・・。やれるだけやってみよう、ある程度の無茶はしないといつまでたってもこの体に権能が馴染んでくれ無さそうだ」
しかし、どうやって対処しようか。今の状態だと他の時系列の私達がやった事を全て同時に行えるのだが、それだとあまりにもワンパターンだ。できればこの時空私だから出来ることを思いっきりぶちかましてやりたいのだけど。
「いっそ過去改変とかやって・・・もまた分岐世界ができるだけ。というか時間操作をこれ以上別枠でやるとなると多分普通に体が自壊を始めかねない。ただでさえガンガン巻き戻しまくってるのに、それ以外に使うとなると回復がいよいよ持って間に合わなくなるからなぁ」
そうして私は数秒間うんうんと頭を唸らせ、簡単すぎる回答にたどり着いた。そういえば時間時間と言っていたがよくよく考えると空間も制御できるんだった。それならやれることの幅も大幅に広がる。ただでさえ完全開放で枷は外れているんだ。なんだってできる。
「アグネアもいくら強力とはいえ所詮は魔力を束ねた集合体。ならばそれをほぐして霧散させればいいって訳だ」
いくら光だろうと質量を持って落ちてきているのならばそれは物質に変わりない。それならば最小単位まで広げてやれば無害化もできるしそれを吸収して自分のリソースとして再利用だってできる。
「じゃあ早速行ってみよう。技名は・・・とりあえず『空拡・ビッグリップ』!!」
そう私が唱えた瞬間、イメージは具象化され発現する。それは音を超えて迫りくるすべてのアグネアの内部で同時多発的に起動する。まずは、私の一番近くに飛翔してきていたアグネアが私に直撃したかと思いきや私を透過しつつそのまま魔力の粒子に姿を変えて私の身体に吸収されていった。
そう、何もアレを破壊する必要も無ければ時間を操作して消し去る必要も無かった。アグネアを形作ている魔力の隙間を空間を操り無限に引き離してゆく。本来ならかなりの時間が必要なのだが、時の加速を一瞬で済ませることによりその間をスキップする。先程時間操作との併用は厳しいと言ったばかりだが、あくまで同時使用をした場合でありAを行った後にBを行うならば問題は無いのだ。その代わり爆速で回路を空間操作から時間操作に切り替えなければならないのだが。
「そろそろ外殻も限界かな? 魔力に返したアグネアを吸収して長持ちはできたけど、割と焼け石に水だったみたいだし」
そしてすべてのアグネアを解体吸収し終わったところでちょうど外殻がひび割れ始め、身体全体が光り始めた。その間に形成した疑似神核との接続を切り、神核もまた消滅させる。ただでさえ時限式の必殺技、使い終わったら消しておかないと、ただただ魔力を食いつぶすだけの物体になってしまうのだ。
「おお・・・。これは中々新鮮な感覚かも。体が粒子になってどんどん消えていくってのは中々体験できるものじゃないよね」
体が光の粒になって空中に消えていく、そしてそれに伴って輪郭もどんどん幼子のそれに戻って行っている。いいや、正確には変わっていると言った方が正しいのかもしれない。体も溶けて行っているが服も同時にスケールダウンして行っている。
「なるほど、年齢分時間を消費して術式を行うと多分私の外見はこの時点で七歳ボディってことに世界が書き換わっちゃうのか」
今気づいたが、声も低かったものが若干高くなっており口の大きさも変わったのか少々喋りにくい。魔力量は減っていないが体格が元は170近くあったのが今となっては130くらいのミニサイズ。身体能力も変わってはいないだろうが、フィジカルの大きさが失われているのはかなりの痛手だろう。取り押さえようとかかられたらあっさり取り押さえられる未来が時を見なくてもわかる。
「うん。映し絵にうつってる私もしっかりこの年齢に書き換わってる。・・・ってことは私は20過ぎてロリ体系ってことになってるのか・・・。うへぇ」
これは酷い事になっていそうだ。いや、というか私を半ば強引に襲ったリリスがロリコンのそしりを受ける・・のはまあいいとしよう。そう思った私は上空にせまる危機も知らずにあわただしく消火活動などに励む市民を横目に、何とか火を免れていた我が家に帰りルナたちの帰宅を待つことにするのであった。だってエレノアに飛ぶだけの魔力も残ってないし、今にも倒れそうなくらいには消耗してるからね。




