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黎明開きしウィッチクラフト  作者: ラキューム
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防衛作戦part2

 ところ変わってグレースC。呼び出されたのはいいが今の彼女は魔力をリリスに吸われた上に致した直後なので腰は痛いわ体はだるいわで中々の不調気味。表情もかなり眠たげにしている。おまけに服装もバスローブを身に着けている程度であり、ほぼ裸一貫と言っても過言ではない状態だ。

「ごめんこの世界の私、ちょっと下着と服貸してくれない?」

 とりあえず彼女は時間を止めてグレースAの所に向かう事にした。特段恥じらうようなことは無いし自分の肢体は美しいものであると自信と誇りすら持っている彼女だが、むやみやたらに裸を晒す趣味は無かった。頬を染めたりなどしている様子はないが若干不機嫌そうな顔はしている。 

「時を止めてまで話すことなの?」

 魔力の無駄遣いはやりたくないなぁとぼやいたグレースAは眉をひそめつつも空間に穴を開けてしばらく手をまさぐり、そこから衣服を一式を手渡した。

「ありがとう、でも時を止めておくのは大事な事だよ私。だって止めとかないとアグネアも落ちてくるし公開生着替えをする羽目になるだろう?」

 グレースCはいそいそとパンティを履き、ブラをはめながらそう答える。

「いや、別にそこは良いでしょ・・・。ここかなり上空だしとても地上から見えたりはしないって」

 グレースAは呆れた調子でそう言うと、私は後に備えて休んでおくからと言い残して地上に降りて行った。少しでも魔力を蓄えるべく睡眠か食事でもして来るのだろう。

「まあ、確かにそれもそうってうわぁ! ・・・良かった、時止めてるから落下はしないんだった」

いまだに時間は止まったままなので服は落下しなかったが、空中着替えは中々ハードルが高かったようだ。ふぅ、と息を吐きながら服を着てしまったのでグレースCは時を動かして所定のポイントへと飛び立って行った。ちなみに来ているのはごくごく普通の町娘が着ているようなカジュアルかつ凡庸な服装。前もって魔力で膜を作って保護しておかなければ少々全力で移動するだけで焦げたり燃えたりしてしまうのだ。

「燃えたところで返すつもりも無いし、そもそも私のものは私のものだからモーマンタイ。っとそろそろ来るかな?」

やれどうかなと上を見上げるとジャストタイミング。煌々と燃え盛りながらアグネアが迫ってきていた。今の私のできることは恐らくグレースAとさほど変わらない。いや、リリスの魔力も若干ながら混ざっているためできることは微妙に多そうだ。例えば

「幻惑で自分の権能の解放具合を一時的に引き上げてやることだってできるのさ」

 そう、今しがた気づいたばかりで自分でもかなり驚いているのだけれど、彼女が魔力を取り込んだ者の力を使うように、上手い事利用してやれば自分も同じことができるのでは?と踏んだが案の定問題なく使えたようだ。

「なるほど・・・。これは凄い、今ならなんだって掴めそうな気がするよ」

 一時的とは言えほんの少し解放されただけでこの万能感。父上は一体どのような世界を見ていたのだろうか。いいや、そんなことは今考えることじゃない。私Aにバトンパスしないといけないことに違いはないのだ。ここでちゃちゃっと二本程度片付けてしまおうじゃないか。

「ステータス配分は全部空間支配に振った。さあ、どうなるかな?」

 流石に完全開放という訳には行かず、かといって時空どっちもバランスよくとすると何とも曖昧な解放具合になってしまう。そしていま必要なのは範囲殲滅能力なので空間支配が必要なんだ。

「うん。ここからでも十二分に把握できる。二本どころかこの後に上空に接近してくる残りのアグネアも捕捉できた・・・けど流石に自分が持たないや。今は目の前の二本に集中しよう」

 上空に接近する二本のアグネア。それを消し去ろうと手を握りしめ、父が生前にどのように空間を操っていたのかを思い出す。確か・・・目標を認識した上でどうにかするはずなんだけど・・・。

「とりあえず目の前の空間から排除することだけを考えよう。ええっと、まずは常識にとらわれずに『この程度できて当然』と思い込むことが大事だ。なんてたってこれは権能。神の御業なんだから」 

 思考を巡らせているうちにも接近する目標に刻々と流れていく時間。そして幻惑がキレた時にかかる負担も恐らく馬鹿にならないだろう。だから私はいっそどうにでもなれという少々やけっぱちな思いと何とでもなるという謎の確信をもって空を思いっきりぶん殴った!!

「はあああああ!! こうなったら空間、砕けろっ!!」

 少々気合を入れる為にシャウトしながら放った拳は空間そのものに亀裂を走らせて行く。その亀裂は少なくとも私が見えている範囲全てに及び、それだけでもとてつもない広範囲にわたっていると理解できた。

「これで完全じゃないなんて、馬鹿げてるよ・・・。そりゃあデミゴッドじゃ神には敵わないわけだ」

 そしてパリンと破砕音がして目の前の景色全てが音を立てて崩れ落ちる。瞬間、ほんの一瞬だけだが、何もない漆黒が風景を埋め尽くしたかと思ったが、そう思った時にはその穴を埋めるかのように元の風景が再構築されて行っていた。当然アグネアはその場に影も形も存在しておらず、そこには青空が広がっているだけだ。

「ははは・・・。凄まじいけど、全身に亀裂が入りそうだ。これ結構強めの回復魔術かけて貰わないと中々に体に負担かかってそう」

 ちょうど幻惑も解けたらしい。今までの万能感が一気に薄れ元通りの感覚に戻って行く。だがしかし、それに呼応するかのように私の身体にはかなりの激痛が走り始めていた。筋肉は勿論だが、全身の神経までまとめて悲鳴を上げているかのようだ。ぎゃああああって叫ぶ余裕すら出ないレベルの激痛。それに加えて一気に魔力も持っていかれたようで虚脱感も凄まじい。そしてもうじき自分のいた時空に引き戻されるらしく、身体も透け始めていた。

「さて・・・。一体なんて説明しようかな・・・」

 私は同じベッドで寝ているであろうリリスに対して一体どんな言い訳をしようかと思いを巡らせながら光に包まれながらこの世界を後にした。


「うっぷ・・・。ヤバい、吐きそうだ」

 私はグレース。分かりやすく表記するとグレースⅮ。よりによって風呂上がりで酒に酔い耽った後のタイミングで呼ばれたものだからそりゃあ大変だ。かなり飲んでいたため二日酔いの症状が思いっきり私に降りかかって来ている。・・・仕方ない、少々魔力は食うが体の時を加速しよう。

「あ、でもその前にちょっと見せられないかもっ、お、おぇ」

 ギリギリ吐き出す前に空間の穴を開くことが間に合ったのでその中に吐くものを吐いてしまった。実際この先がそこに繋がっているのかは分からないが、きっと水中とか下水道の中だろう。そう信じることにした私であった。


「・・・ふぅ、スッキリしたぁ」

 色々とデトックスしてスッキリした私。だがそんな風にすっきりしている間にも事態は粛々と進んでいっているようだ。やばいやばいと天を仰げばもうそこまでアグネアは迫ってきているじゃあないか。早速時を止めて少し一息つく。さっきも休んだばかりかと言われるかもしれないが、やはり落ち着いて少し作戦は練るべきだ。とはいっても何とかする算段というか簡単なプラン自体はあるのだが、本当に実行して良いのかが微妙なラインなのだ。主に倫理面での問題である。

「まあ、私が飛ばされるであろう時間軸を想定しておけば何とかなる・・・かも?」

 正直ぶっつけ本番なのでやってみなければ分からない。だから私は取り敢えずは試してみることにした。ほんの少しだけ不安は残るが次善の策はあるので問題はない。

「正直作った装備で解決できるほどの魔力は持ち合わせちゃいない。だから空間を弄ってどうにかすることにしたよ。まあ、他の私とやってること自体は変わらなさそうだけど」

 それに関しては今のところ止める、未来を視る、高速移動するの三つしかできない時の権能が悪いのだ。空間に関しては大分融通が利くというのに。空間はワープに物の格納。それに加えて周囲を削り取ったりと応用も効くのだ。

「よし、胃袋も空っぽになってる・・・のとは対して関係ないけどちゃちゃっとアグネアも腹の中にしまっちゃおう!」

 腹の中に閉まっちゃおうというのは比喩でも何でも無く、そのまんまの意味だ。方法も至極単純明快。手に持ったハンカチをポケットの中にしまうかのように簡単な事。

「まあ、腹のあたりに空間の穴を開けてアグネア周辺の空間を圧縮。それを穴にぶち込んで私の体内で格納するだけなんだけどね」

 とはいっても流石に一本内蔵するのが今の私の限界なのだが、そこに関しては今回は良いとしておこう。どのみちこの世界の私にこれ以上力添えはできないわけだし。

「ぐ、ぐおおおおおおお!!中々にこれ身体に堪えるっ!  まあ自分を思いっきり媒体にしてるから仕方ないよね!」

 胎のあたりをつつーと指で一なぞり、空間を開ける前段階として境界線をまずは引く。そしてそこに手を突っ込んでがばっと開ける。当然そこに内臓が見えて一気にグロ画像になる・・・という訳では無く、その境界の中には黒いようでぼんやりと薄く光っている穴が作られている。中から何かがのぞき込んでいるという訳でもなくただ暗澹たる光景が広がっている。

「そして、アグネア事その周囲の空間を圧縮! そして即席で空間の檻を創り出してそれを閉じ込めさらに圧縮。超密度のエネルギー体へと変換!」

 胎に手を当てて境界を片手で維持しつつアグネアを封じた空間をさらに片手サイズの球形にしたものをこちらに転移させて、境界の内部である異空間に放り込んだ。

「あっ・・・。ふう、ちょっとこれ変な感覚がするけどあんまり体にきつくない範囲で自分に入ったね。どころかちょっと気持ちいいまである」

 そして自分の身体もまた他の時空から来たグレース達と同様に光に包まれ、徐々に浮遊感が感じられるようになってきた。どうやら私もまたこの世界には用済みの存在らしく、修正力が全開で働いているようだ。

「よし、じゃあこっちの私は頑張ってくれよ!」

 ちなみに回収したアグネアは後日撃たれる前にエルノアにお見舞いしてやる予定だ。少し先に呼ばれておこることを知っちゃているのならば世界線の一つや二つくらいは分岐させてやらないと無粋ってものだろう?

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