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黎明開きしウィッチクラフト  作者: ラキューム
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首都会談

 少し時を遡り、グレースとクリスタが聖都に転移した直後。場面を馬車に乗って首都オルギュア向かっているリリスとルナの二人に移す。

「あー。死ぬほど暇ね馬車の中」

 と馬車に揺られながら教皇クリスタの姿に化けたリリスは気だるげそうに言っていた。窓際にぐでんと寄り掛かり完全にだらけてしまっている。クリスタを知るものが見たら百人中百人がこれは偽物だといい速攻で牢にぶち込むレベルでクリスタ本人とはかけ離れてしまっている。

「おい、あまりクリスタの奴が言わぬであろう事はあまり迂闊に言うでないぞ。一応遮音はしてあるが万一があるとマズいからの」

 それを見たルナは流石に教皇らしく振舞ってくれとリリスを咎めた。ちなみにルナは教皇の護衛らしく豪華な装飾剣こ、多少は豪華ながらも動きやすく軽い鎧をいつでも装備できるようにしている。装備できるようにしているだけで身に纏っているのは普通の礼服なのだが。

「それを言うならルナだって口調を変えたほうがいいんじゃないかしら?」

 そののじゃとか儂とかババ臭い口調は流石に合わないと返すリリスに対してルナは余裕の笑みで

「残念ながら儂は会談では喋れぬからのう。別に口調なぞ変えぬでも一切問題など無いのじゃよ」

 などと言ってのけた。だが、その余裕の笑みは一瞬で剥がれ落ちることになる。リリスでは無く、教皇クリスタその人に手によって。

『あー、テステス。聞こえますか? ルナは護衛という立場ではありますがリリスがボロを出しそうになった際には逐次フォローを入れて貰いますのでそれなりに喋ってはいただくつもりです。なのでその・・・。口調は私やリリスと同じような感じにしなさい。命令です』

 最初はお願いしますと言いかけたクリスタだったが、私は一応上司だしルナも素直にいう事を聞くタマじゃありませんよねと思い直ししっかりと命令することにした。

「う、うむ・・・。命令とあらば仕方ないのう。善処しよう」

 流石に命令されてしまったならば仕方が無いとルナは渋々ながらも返答したが、口調はそのままであり、目の前ではリリスが声を上げない様に口を手で押さえながらもクスクスと笑っている。一発どついてやりたいところだが、流石に馬車の中で派手に暴れてしまうと最悪馬車が消し飛ぶのでどうすることもできないのであった。

「あらあら、全く口調が変わっていませんよ? もう少しおしとやかになされてはいかがですか?」

 口に手を当ててたおやかな口調でここぞとばかりにからかってくるリリス。手で口元は隠しているが明らかにその下はにんまりとにやけているに違いない。

「嫌味ですか」

 心底嫌そうな声と嫌そうな表情全開でルナはリリスに向かってそう聞くが、これまたリリスはにんまりとして

「ええ嫌味よ♡」

と返した。ご丁寧に色っぽくハートまでつけている。流石に本気で怒る事はなかったがそれでもイラっとは来るので若干魔力が昂ってしまうルナ。空間に紫電がバチバチと迸っている。

「相分かった。しばし待っておれ結界を展開する。まだ到着まで時間があるでの、いっぺん絞めたほうがいいようじゃ」

 そう言ったルナはさらに魔力を高めて魔術を発動しようと強いていた。さらに迸っていく魔力はついに実態を持ってルナの体から立ち昇っており、馬車の内部もその圧力でミシミシと悲鳴を上げていた。

『ストップ! ストップですルナ! あなたが行おうとしている規模の魔術行使は流石に怪しまれます!』

思考共有中のクリスタにもルナが行おうとしている魔術が何かは分かっているらしく、流石に止めるべくそう呼びかけるが血の気の多いのはクリスタだけでは無かった。

「そっちがその気なら私だってやってやるわよ? いくらデミゴッドでも一撃でやられるほど私も鈍っちゃいないわ」

 変装を解きこれまた魔力を高めていくリリス。流石に勝てるとは思っていない様だがそれでも簡単には負けてやらないと中々に本気を出すつもりのようだ。

「奥義、『冥府降・・・」

 そして空間が一気に塗りつぶされようとしたまさにその時・・・。

「そろそろエレナ宮殿に着きます。教皇様、そしておつきの方」

 車窓を開けた御者がそう言った瞬間魔力を大急ぎで霧散させて装備を着なおすルナに、クリスタの姿に変装しなおすリリス。流石にバレるのはヤバすぎるのでこの場は一時休戦することにしたようだ。それを感じ取ったクリスタは爆薬を聖堂内にしかけつつも胸をほっと撫でおろしていた。

「やむを得ぬな。この場は儂がお主に合わせよう。いや、合わせましょう」

 

「ええ、そうしましょうか。私もここからは教皇様モードです」

 先程までのいさかいはどこへやら。一瞬でモードを切り替えた二人は輝かんばかりの作り笑顔で互いにそう言っている。クリスタは若干引いていたが、リリスもルナも人間とは違う思考回路しているからまあいいかと思っておくことにした。まあクリスタ本人もまた純粋な人間だとは到底言えるような体はしていないのだが、種族は一応人間なので人間枠で良いだろう。

「窓の外を見なさいルナ。そろそろ着きそうよ」

 そうリリスに言われるがままに馬車の外を覗いて視るルナ。窓の外には聖都とはまた違う様式の建物がずらりと立ち並んでいた。街は聖都ほどでは無いにせよかなり発展しており、人で賑わっている。政治は特に悪政を敷かれているというようなものでは無く、国民もそれなりに過ごしやすいとのことだ。ただし税は年々重くなっており、不満自体はちらほら出始めているようだ。

「兵士・・・。いや、警吏の数が随分多いな。流石に厳戒態勢なのじゃろうか」

 ルナが言うには街にいる人物の多くが警吏なのだそうだが、リリスの目にはそうは映らない。普通に見る分には警吏は殆ど見当たらず、普通に人々が日常生活や商売のやり取りを行っているようにしか見えていないようだった。

「ああ、儂とお主とじゃあ視座が違うからのう。今だけ口調を戻して解説するのじゃが、お主が普通に視界で見ておるじゃろ? それに対して儂はここら一帯におる奴らの魂を軽く視て情報を読み取った。それだけの事じゃよ」


「なるほど、確かに私にはよくわからない話ね。魂なんて私には見えないもの」

 そう説明はされたがリリスにはいまいち理解できなかったようだ。ルナにしかできない芸当なのでそれもまた仕方ない事ではあるが。

「うーむ。簡単に言うと儂がやっておるのは思考解析の上位版のような物。言わば相手を魔術で一から解析して紐解いていく・・・まあ問題を解いて答えを導き出すことが思考解析ならば魂を見るのは直接回答を見るような物じゃな」

 とリリスが困惑していたのですかさずかみ砕いた説明をするルナ。これならばわかりやすいとリリスも満足げな表情だ。

「なるほど。そこに思考拡張で一気に複数の人物の情報を脳内で処理してるってことなのね。ありがとう、なんとなくだけどわかった」

 

「何となくというのがほんの少し引っかかるがまあよい。もうじき城に着きそうじゃぞ」

 ガラガラと車輪が回る音がする中、着実に宮殿に馬車は近づいている。そろそろ城門が目に入って来た。門を守る衛兵などもちらほら見え始めている。

「そう。じゃあいい加減にしゃんとしないとね。思考共有はまだ生きてるかしら?」

 リリスはやや真剣な顔をしつつ、一応の確認のためにクリスタに通信を飛ばしてみることにした。

『はい。もちろん思考共有は生きていますよ。セリフの方は私が指示を出しますのでそちらは心配なされなくても問題ありませんよ。立ち振る舞いだけしっかりとしていただければそれで十二分です』

 とのことだった。聞こえてくる声は比較的朗らかな声だったためクリスタの方もまた順調に進んでいるのだろう。

「リリ・・・教皇様、馬車が止まったようです」

 そうしているうちに馬車はすっかり城内に入って止まったようだ。そして御者が馬車を止める為にドアを開いてしまう前にそれぞれの口調を外行きモードに変えたようだ。

「はい、では向かいましょうか」

 

「それではお二方。宮殿内へとご案内いたしますのでわたくしに着いて来てください」

 馬車の扉が開き二人が下りた後、甲冑を身に着けた騎士が二人を案内すると言って道を先導し始めた。リリスは聞こえてきた男性の声からして彼がイケメンであると悟ったためいつか取って食ってやろうと品定めしており、ルナは国のトップを招くにしては迎えがあまりにも簡素だと考えていた。本来ならばもっと多くの付き人はいてもおかしくないはずだが、どうも全く歓迎されていない様だ。または暗殺する気満々なのだろうか。

「教皇様、これってあからさまに怪しいですよ」


「ええ。明らかに人の気配が無いですしあちらこちらに魔術トラップが仕込まれていますね。会談こそ行えど決裂した場合は容赦なく我々を仕留めるつもりでしょうね」

 ルナが軽く周辺を探って見たところ城内には兵士と一部の使用人や貴族以外はおらず、兵士の数が九割ほどを占めている。宮殿外にいた兵士の数も含めるなら完全に罠だろう。もしかしたら会談の悔過を問わずとりあえず殺しておこうとこちらの命を狙っているに違いない。

「どうしますか教皇様。いっそこの場で国、落としますか?」

 あくどく口をにやりと歪めたルナ。彼女もまた荒事を好む性質であるため、殺っていいのならとっとと殺ってしまいたいと考えているようだ。幸いまだ周囲に漏れてしまうほどの殺気は出していないが臨戦態勢ではあるようだ。

『駄目です駄目です! まだそれは我慢しておいてください!』

 その思考を察知してすかさずクリスタは静止に入った。クリスタ本人としても自分の国を宣戦布告も無しに攻めてくるような国なので亡ぼすことに躊躇はないがタイミングを考えろということだろう。

「わかっておるわかっておる。ちと冗談で言うてみただけじゃよ」

 そう言ってカラカラと笑うと彼女は臨戦態勢を解いた。よく考えずとも彼女たちはこの国にいる兵士に殺られるようなタマではないため、今は大して心配をする必要は無さそうだ。

「クリスタ曰く、一通り終えたら殺してしまってもいいみたいですね。まあ流石に王族を郎党皆殺しはマズいでしょうけど」


「あとは民間人も巻き込まない様にすべきですね」

 兵士はいいけど民間人は殺さない。クリスタは別に多少巻き込む分には問題ないと言っていたが流石に明らかに戦闘力の無い者を殺めるのはルナの気が引ける。リリスにとってはとって食える餌が増えた程度の感覚なのだがあえてそのことは言わないことにしておいた。中々に美味しそうな人間が多いためその内ペロッと頂いてしまってもばれなければ別に構わないだろう。

「ええ。『民間人は』襲って来ない限りは殺さない様にですね」

 あくまでそこのラインだけは超えない様にしつつ、その他は抹殺してしまってもいいかなと考えながら二人は謁見の間へと入って行くのであった。


「こちらです」

 という案内人の言葉に従い間に入ると玉座には盟主デオラルが鎮座しており、側近が周囲を固めていた。さて、会談をするのであれば普通は会議室で行うものなのだが何故跪くことを求められる雰囲気になっているのかとは思うが一応の礼は払うべきであろう。

『では、いまから貴女の体は私が一部掌握いたしますのでしばしごゆっくりされてくださいね?』

 と思っていたらリリスの脳内にクリスタの声が鳴ったかと思うとリリスは体から自分の魂がぶっこ抜かれるような感覚に襲われたかと思いきや本当に幽体離脱していた。どうやらクリスタがルナにこっそり合図を送ってリリスの魂を一時的に肉体から追い出したようだ。

「ちょっとどういうつもり!?」

 とリリスは講義するが、クリスタは何食わぬ顔。

『申し訳ありませんが恐らくこれが一番手っ取り早いと判断しました』

 とてへっと下を出してわざとらしく笑った…ような気がした。まあそれも当然か、クリスタ(リリス)は今現在リリスに代わって会議室に移動し、会談を進めている。この体だと相手が何をしゃべっているのかは分からないのだが一応穏便に進んでいるのだろう。一応リリスも素性的には会談自体はできるが流石に今回はクリスタが向いているのであろう。王様の性格もいかにも堅物と言った感じであり、見た目もトランプのキングに書いてある王のようなthe物語の王様と言った感じである。

 リリスはしばらくその辺りをふよふよと漂いつつ、ある事を思いついた。

「そういえば霊体なら色々機密とか除き放題よね」

 


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