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黎明開きしウィッチクラフト  作者: ラキューム
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聖都炎上マッチポンプ作戦

「と、いう訳で聖都に戻ってきたわけだけど早速行動に移すのかい?」

 転移術式を利用し聖都に戻って来たグレースとクリスタ。流石に人前に堂々と現れる訳には行かないので聖堂の裏路地に出現している。ちなみにクリスタ曰く転移する時の感覚は水中を泳ぐときのような感覚らしい。

「そうですね。まずは聖堂内の人員の強制転移。それが済み次第聖堂の爆破に移りましょう」

 了解、と首肯してグレースは聖堂内の人物の転移に移る。まずは空間把握を行い大聖堂及び騎士寮の人員の把握、そして時間停止により空間転移を把握させない様に細工。その二つを同時に行い、そしてクリスタもまた聖堂内火薬庫へと転送する。

「よし、準備完了。行くよ、クリスタ!」


「ええ、それでは手筈通りにお願いします!」

 転移術式が多重起動し、クリスタと聖堂内の人物をそれぞれ目的地へと転送する。そして彼女は聖都郊外に進軍しているエレノア軍駐屯地へと向かって行った。

 一方聖堂から数百メートル離れた広場。そこに聖堂内の人物が一気に転移されてそのまま放置されていた。突然の出来事に当然彼らは混乱の声を上げていたが、さらにそこに追い打ちとばかりに穏やかだた協会が爆音で渦巻き炎が上がり始めた。それに怯え惑う人々の中で、唯一クリスタからある程度の顛末をついさっき聞かされたディアスが一人声を上げた。

「皆さん! 落ち着いてください! ただいま作動したのは聖堂内に備え付けられた強制転移術式! 聖堂内に何者かが侵入し致命的な打撃を与えた時のみ作動する物です! そして狙われたものは間違いなく火薬庫、このままでは間違いなく市街地へと燃え広がります。そして我々の為すべきことは一つ、市街地の住人の速やかなる避難誘導です!」

 まったく、無茶な事をおっしゃると心の中で呟きつつ彼女はさらに指示を飛ばしていく。そうこうしている間にも炎は広がりつつあるためなるだけ素早く行動させる必要があった。クリスタから言われたことは単純に『今から火薬庫爆発させます1ので避難誘導お願いしますね」という物。あまりにも唐突かつぶっ飛んだことであるが、あの教皇様がそういう事をするのは割といつもの事であり何かしらの訳があって行動している事には間違いないのだ。それでも今回は少々ぶっ飛び過ぎだが、深く考えてもあの人の考えは理解でき・・・、いや、下の者がトップの考えを理解する必要はないのだと思いなおして自らも民や貴族の避難を進める為に駆け回る事にするのであった。まあ、それはそれとして後でひっ捕えて尋問するつもりではあるのだが。


「さてと、この辺りにいるかな?」

 一方、グレースは聖都郊外にて戦闘準備中だった。彼女のやる事はただ一つ。聖都に対して包囲攻撃を仕掛けてくるエレノア軍を単身で殲滅する事。ちなみにこの間見た未来では東門からのみの侵入だった上に一万人規模だったはずだが、今回は四方をそれぞれ一万人で囲んだ四万人の軍勢。やはり未来視はそこまであてになるものでは無いようだ。敵の将がいる場所はある程度掴めるが、無理に突撃して敵軍を混乱させると打撃を受ける前に作戦遂行などと言われて聖都に信仰されては困る。だがしかし、このままもたもたしていると侵攻されてしまうのは時間の問題。

「うーん、重労働になりそうだけど時間止めて一人ずつ殺って行くのがベスト。しかし、それはかなりめんどくさい。高火力の魔術使えば一瞬だけどそれもただでさえ大聖堂炎上で混乱してそうな民衆をさらに混乱に陥れそうでよくない。さてさて、どうしたものか」

 権能使えば話は早いのだが、この力は一気に敵を殲滅するようなものでは無い。それに手持ちの武器も受け取った筒しかないのだが・・・。とグレースが考え込んでいたが、ピン!と閃いた。

「確かこれってこの筒を媒介に魔力を粒子状にして固定するとかできたっけ。それなら・・・」

 筒を手に取ったグレースはそれに魔力を込めて起動し、おもむろに一本の短剣を作った。これを作るのに使った魔力はグレースの総魔力量の五万分の一程度。上手く魔力を分散してやれば域に全滅すら狙えるのだが、それには恐らく時間停止が必須である。時間を止めずにそれを行って誤魔化しを利かせるとするば教皇の起こした奇跡であるが、それもまた後で厄介になりそうな案件だ。

「でもそんな感じで殲滅してしまうのは絶対につまらないんだよなぁ」

 だが、それでもたついてしまったら元も子もないか。そう思いグレースはおもむろに空間に穴を開けると

「とりあえず北門はこれで良いか」

 と、一言だけ言って穴に向かって手をかざし、雑に魔力砲をぶっ放した。と、同時に北方向に陣取っているエレノア軍の頭上にその軍勢を丸ごと飲み込むほどの大穴が開き・・・。


――――魔力で編まれた極大の光の奔流が彼らを飲む込み一瞬で灰燼も残さず消し去った。


 後に残ったのはクレーターのみ。聖都の周囲は平地なので木々をなぎ倒したりなどと言った被害は出ていないが、流石に大穴を開けた尾はそれなりにまずかったのかもしれない。


 一方こちらは聖都攻略戦に訪れているエレノア軍。それの南門に陣取っている一部隊。突如として北方部隊との通信が途絶え、大絶賛混乱の渦中に彼らはあった。まぁ、それに関してはどの部隊もさほど変わらないのだが。

「将軍! 通信が途絶えていた北方部隊の消滅が確認されました!」


「何だと!? そんなバカな話が合ってたまるか!」

 伝来からの報告を聞いて信じられないと声を荒らげるのはエレノア軍の将軍フュリウス。彼は齢25にして将軍の地位を手に入れた優秀な軍人であったが、今まで順調な戦をやってきたせいか、このような想定外かつ意味不明な事態に対して即座に対応するにはまだまだ未熟なようであった。フォローするのであれば、今回ばかりは相手が理不尽の権化だったから仕方がなかったというところだろう。

「いえ! 私自身も事実とは信じがたいのですが、事実で間違いありません!」


「・・・っ! 破城槌と爆破魔術を使用可能な物に壁門の破壊を急がせろ! そして櫓を早急に用意し聖都内への侵入も速く行わせろ! 流石に聖都内に北部隊を消し飛ばした謎の攻撃は行えないはずだ!」

 と、彼は北部隊の壊滅に関しては未だに理解不能ながらもそう指揮を執り始めた。確かにこの状況ではそれはある意味最善手かもしれない。グレースがぶっ放した魔力砲はあくまでエレノア軍が城壁外に陣取っていたから放てた物であり、中に入ってさえしまえばそれはできなくなる。その認識は間違いないだろう。だが、それを許すようなグレースではない。単純に戦いの年季が違うのだ。


「確かにその指示で間違いは無いさ。堅実だし、そうしてしまえば私は派手な攻撃はできないからね」


 凛──と、涼やかな声が鳴った。戦場の喧騒には似合わない美しい音色。だが、彼にはぞわりととてもおぞましい雰囲気を纏って聞こえていた。

「な、何者だ! いいや、そんなものはどうでもいい! 敵襲だ! 囲んで討ち取れ!!」

 しかし彼は慌てふためく事も無く兵を周りに集め、女を討ち取れと指示を飛ばす。普通にヤバいだけの相手なら多少は狼狽したかもしれないが、今回ばかりは狼狽していることすらも許されないような情況。一瞬一手でも間違えたら即死に繋がりかねない非常事態であることくらいは理解できている。

「すごいすごい。その指揮能力は中々光るものがある。きっと君は良い将になったんだろうけど、残念ながらここまでだ。仕事だから、サクッと殺されてもらうね」

 武装した軍勢が彼女を取り囲み、剣を振り抜き矢を番え、槍を構えて魔術を四方から放つ中で彼女はそう笑顔で言い放った。それは彼が見た中で最も美しく、そして残酷な笑みだった。

「そうそう、何人か侵入できてた兵士はすでに捕えてあるから安心して死んでほし」


「そこだ!」

 と、最初に彼女に槍を突き立てた兵士が叫ぶ。彼の槍は見事に女の腹に風穴を開けた。

「やったか!?」

 とその兵士は言ったが、それを遮って将軍は叫ぶ。

「いいや、一撃で死ぬわけがない! 原型を残さぬほどに引き裂いてやれ!!」

 その発言を受けて兵士が次々と群がり、我先にと女を挽肉に変えるべく刃を突き立てていく。彼自身はそれをしり目に距離を取り、他の部隊に対して連絡を飛ばすべく用意をしようとしている。

「そうそう、私がたかだか人間の一撃で死ぬわけないさ。そしてそんな一撃貰ったところで一秒いらずに治るんだよね」


「なにっ!?」

 鈴が鳴ったかと思うと目の前にふよふよと槍で穿たれたはずの女が浮いており、それでいて微笑んでフレンドリーに話しかけてきた。

「おいおい、そんなに驚くことじゃあないだろう? まさか万人単位を一瞬で消せるヤツが人間だとでも思ったのかな?」

 そうして女はおもむろに空中に手を突っ込んだかと思うとそこから鎖を取り出した。そして、将軍はなにが起こったのかも分からないままその鎖に巻かれて空中に吊り上げられていた。ご丁寧に口にも噛ませられているので声を上げることもできない。

「とはいっても、もうこれ以上悠長に話していると他の部隊が動いちゃうからね。君だけ捕虜にして後は雑に処理させてもらうよッと」

 彼女が指をパチンと鳴らすと突如として地面に空いた空間の大穴に地に足をつけていた兵士たちはもれなく全員飲み込まれていく。そして、既に壁に張り付いていたものや逃げ出そうとした者も容赦なく飲み込んでいった。

「そしてほいっとね」

 そして飲み込まれた兵士たちが解放されたのは上空約三万メートル地点。グレースさんの特別ボーナスで身動きできない様に彼ら全員の時間は停止してある。落下死する恐怖を感じずに一瞬で止めを刺してあげるという彼女なりの優しさである。

「はいこれで一丁上がりッと。・・・一箇所に落とすつもりだったけど割と散らばっちゃってるのは反省しなきゃだけど」

 彼女は散らばっている死体と肉塊のある場所を空間ごと綺麗さっぱり消し去って鎖で縛った将軍をどこぞの空間に放り投げて次の場所に向かうのであった。ここまで大体2分である。

「さて北、南と行ったから次はどっちに行こうか・・・。うーん、軽く見る感じだと東の行軍がやや遅めだから西から片付けよう」

 しかし、そうは言っても侵攻状況は次第に大きくなっているので時間を止めて飛んでいくしか無さそうだ。

 そういう訳で飛んできた西門。軍勢はまだ配置についておらず、侵攻のための準備にあたっている段階だった。この機に派手に登場して暴れ回るのはそれはそれは楽しそうだが流石に敵の連絡手段が生きている状況でそれはよした方が良いだろう。しかし、先程のように一撃で消し飛ばしたり落下死させるのも芸が無い。だが、わざわざ名乗って戦闘している時間も無いのだ。

「よし、じゃあせめて武器は使って倒そうかな」

 そうして彼女はロックから送られた筒に魔力を込めて粒子上に変換。自分の背丈を五倍してもなお足りぬほどの大弓を編み出した。そして彼女自身の権能を織り交ぜた一本の大矢を番える。それを天に掲げて構えた彼女は大きく引き絞り膨大な魔力を込めて矢を放つ。 その矢は時間と空間の概念を無視して空を埋め尽くすかのように無数に増え、落ちることなくその場に固定される。

「ターゲット、ロックオン。全敵を補足。さて、殲滅開始!!」

 歯を剥いてにやりと笑ったグレースがびっと親指を下にぐっと向けると矢は一斉に拘束から解き放たれて軍勢へと降り注ぎ始めた。それはゆっくりと軍勢一人一人へと狙いを定めて軌道を捻じ曲げ、とても矢とは思えない挙動で飛んでいる。しかし、いくらかは防御されるか回避されるものもあった。が、そこで終わるようなものでは無い。回避した矢がまたその場で軌道を捻じ曲げ後ろからその兵士の体を貫く。そして貫かれた兵士は体中にガラスに入る日々のような亀裂が全身に走りパリンと砕け散って砂になって消えてゆく。

「名づけるなら空転弓(くうてんきゅう)・破粒(・はりゅう)ってところかな。当たった対象の時空を砕き粒子状へと破砕する。中技だけど中々悪くない攻撃だね」

 本気で大技をぶっ放すと聖都を含めた周囲一帯を全部纏めて時空崩壊に巻き込んでしまう恐れが大なのでおいそれと行えないがこの程度なら問題なさそうだ。そう、この矢は時間の概念を無視して急加速や停止を行って確実に命中し、それが命中した生物は生物の細胞間の空間を無制限に拡張され、砂になるまで分解されるという物である。これならば周囲の環境にもやさしく敵だけを殲滅することができるのだ。その結果に満足してグレースは最後の部隊を殲滅するべく飛び立つのであった。

 


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