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行動派愚王の理想論  作者: 河栗 凱浬
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語り屋はただ可能性を信じている

 言ってしまえば巡り合わせだよね。

 運に恵まれたかそうでないか、だ。

 彼に関して言えば、やはり運がなかったのだろうね。

 良い出会いに恵まれなかった。いや、恵まれてはいたんだ。……遅過ぎただけでね。

 僕は嘆かわしいよ。

 素晴らしい可能性があったのだ、彼には。

 逆に言えばそれがいけなかったのかな?

 良くも悪くも彼には強い心と天才的な頭脳があったのさ。

 虐められても尚、やり返せる程度の度量は余裕であったんだよ。

 それともあれかな?

 情けなく泣き喚いて助けを求めれば良かったのかもしれない。

 それもまた間違いなく1つの力の使い方なのだから。

 だけど違う力に頼った。

 仮に彼の側に大事な者が、或いは彼を支えられるような者がいたのならば結果はまた違ったのかもしれない。

 それとも環境なのかな?

 周りに嫉妬深い人がいたのかな、それか知らずに恐怖を与えていたのかもしれないね。

 未知を恐れる人は思っているよりもかなり多いから。

 ただまぁ、そんな事はいいんだ。

 たらればにいくら時間を掛けたところで意味はない。反省と対策ぐらいか。

 僕は違う事が知りたいのさ。

 果たして、彼はなんだったのだろう、てね?

 彼は悪人だったのかな?

 本当に?

 違うよね。

 でも、善人でもない。

 彼は身を守ろうとしたんだ。自身の心を守ろうとしたんだ。被害者としてね。

 じゃあ、周りの人が悪人だったのかな?

 加害者が悪人?

 しっくりくるけどやっぱり違うよ。自然の摂理なんだよ。褒められたことではないけど止まるようなことではないんだ。

 力関係を知らなかったから後に取り返しのつかない手痛いしっぺ返しがあったわけだけどね。これは因果応報かもね。

 んー、傍観者かな?

 傍観者が悪人だったのかな?

 見て見ぬ振りをしたから彼は変わらざるを得なかった。頼れる人はいないのだと思ったのかもしれない。

 いやー、でも責める事は出来ないね。

 彼等も自分を守りたかったのだろうさ。

 そこにはきっと善悪はなかったんだろうね。難しいなぁ。

 でもあれだね。吹っ切れた彼は自分を悪と語ったんだよ。いや、騙ったのかな。

 身を守っただけなのに取り返しのつかない事になってたんだ。

 己を騙せなきゃ立ち直れなかったのかもしれない。

 なまじ、記憶力が良いだけに名前も顔も覚えていたんだ。

 罪悪感もあったろうさ。

 それはある見方をすれば、彼の良心であり、優しさかもね。

 だから、きっと。

 彼は、偽悪者だ。

 無いはずの己の欲望を実現するために周りをとことん利用した。

 彼は、偽善者だ。

 死を受け入れ、善人を装い相手に赦されない事で自分を肯定した。

 まったくもってわからないんだよ。

 彼を知らない人からすれば悪人も良いところなのに、彼を知れば善人にも思える。

 時代が違ったのなら、タイミングや場所が違ったのなら彼は英雄や救世主などと持ち上げられたのかもしれないのに。

 だから、僕は思うんだ。

 この世に善悪も正義も罪もないのだ。

 いや、そんな概念は無い方が良いのだ。はっきり決めずに曖昧にしといた方が幸せなものだ。

 人は生まれた瞬間に善人だ、悪人だと言う人がいる。

 そんな訳がない。

 最初は無垢なんだよ。

 もっと言えば無邪気なんだ。

 人の決めたルールに則って違う事をすれば悪人と決めるのは余りにも勝手じゃあないか。

 ルールを絶対の正義としてるのは余りにも滑稽じゃあないか。

 それが間違っていないと、不備がないとなぜ思えるのかな。

 人は間違えるものだと言いながら人が作った規則に間違いがないと盲信しているのはどういう事なのだろうか。

 完璧な存在なんていないのに。

 ……言っても仕方のない事だね。

 時代は良くも悪くも過ぎ去るものだ。

 この世は弱肉強食だ。強者の法に従うしかない世界だ。

 故に神々は、世界は求めているんだ。

 全てを覆す物語を!

 力ある英雄を!

 暴力も、知力も、財力も、心力も。

 あらゆる手段が力だからこそ!

 この世の弱肉強食は複雑怪奇なのだ。

 神々は全知全能なんかじゃあない。好奇心旺盛な人達なんだ。

 だから神は知りたいのだ。己の疑問の答えを。

 彼等は、何時如何なる時も人に問うのだ。

 何故、てね。

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